WEC 第4戦 ル・マン24時間でクビサが魅せてくれた栄光 競技主義の先にある価値

レースが魅せるのはバトルや成績だけではない

人々が競技者に対し感動を覚えるのは決して成績だけではない。苦境にたちむかうその姿に移入するのだ
人々が競技者に対し感動を覚えるのは決して成績だけではない。苦境にたちむかうその姿に移入するのだ

 この時のル・マンには青木琢磨氏ら障害者選手が走らせるマシンが参戦しており、クビサはスタート進行の慌ただしい時間をおして車椅子の青木氏の元にやって来たという。

「スタート担当だったのにわざわざマシンを降りてきて『お互い頑張ろう!』って握手してくれて。彼も事故で右手に障害を負って、僕らに対する思いが何かあったんでしょうね」。

 青木氏の言うとおり、クビサの右手は完全に回復していない。レース中のステアリング操作もほとんど左手で行っていると聞くが、その走りから障害の影響は微塵も感じられない。今回のル・マンでもクビサは計10時間以上ドライブを担当した。

 スタートからダウンシフトに問題を抱えていたマシンをいたわりながらの走行は、挑戦の領域を越え心身の限界の寸前だったという。にも関わらず最後の3時間半、5スティントを完璧なドライブで走り切り、チームの仲間と共に栄光を掴んだのは、失意の日々を不屈の精神と決意で逆境を乗り越えてきたクビサの強い信念があったからこそと筆者には思えてならない。

 モータースポーツのファンが求めているのは、激しい競り合いや何連勝という記録だけではない。ままならない人生にくじけそうになりながら、それでも歯を食いしばって信じる道を進み、自分の才能を活かしきる努力を惜しまない人々の姿がそこにあるからだ。

 BoPをめぐるもろもろは、クビサが仲間と共に掴んだ勝利の価値を損なうものではない。

 彼らは歴史を刻んできたル・マンの大トロフィーに相応しい奇跡を成し遂げたのだから。

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