世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルス。すでに自動車メーカー各社も工場の操業休止などに追い込まれ、大きな打撃が出てきている。しかし、自動車という大きな括りで見れば大打撃を被っているのはメーカーだけではない。
自動車の花形でもあるモータースポーツの現場も大きな影響を受けている。ファンの観戦ができないだけでしょ、と侮るなかれ。モータースポーツが停止されることは非常に大きな経済的損失に繋がるのだ。
コロナウイルスの影響に巻き込まれた日本のモータースポーツの現状と、今後の見通しについてみていこう。
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文:ベストカーWeb編集部/写真:GAZOO、HONDA、
■全カテゴリーで開幕ができない緊急事態に陥る
世界選手権でも多くのモータースポーツが延期および中止というニュースが世界を巡っている。F1は開幕戦のオーストラリアグランプリの中止を皮切りに、バーレーン(延期)、ベトナム(延期)、中国(延期)、オランダ(延期)、スペイン(延期)、モナコ(中止)、アゼルバイジャン(延期)となっている。
世界耐久選手権(WEC)のメインイベントとなるル・マン24時間は6月から9月に延期、 WRCもチリが中止、アルゼンチン、ポルトガル、イタリアが延期となっている。世界的なモータースポーツの危機だが、ここ日本も同様だ。
日本のモータースポーツカテゴリーは多くあるが、レースのメジャーカテゴリーとしては3つの存在がある。
国内最大級の集客を誇るSUPER GT、国内最高峰のフォーミュラレースであるスーパーフォーミュラ、そしてアマチュア主体ながら長い歴史を持つスーパー耐久がそれにあたる。
現状として上記の3つのカテゴリーで「中止」となっているレースはなく、あくまでも「延期」というのが主催者の判断となる。
例年スーパー耐久の開幕が3月下旬、そして4月上旬のスーパーファーミュラ、4月中旬のSUPER GTと開幕していくのだが、2020年は上記のとおりすべての開幕戦が延期となっている状況だ(2020年4月4日現在)。
またシーズン前テストについても一部で中止があったものの、スーパー耐久富士テスト(2月29日)、SUPER GT岡山テスト(3月14~15日)、スーパーフォーミュラ富士テスト(3月24~25日)については無観客、もしくはパドック内観客入場禁止で実施されている。
屋外での観戦が基本のモータースポーツではあるが、スーパーフォーミュラ富士テストではチーム関係者からコロナウイルスの陽性反応が出るなど、モータースポーツ現場へのウイルスの脅威は訪れており主催者は非常に厳しい判断を強いられている。
そんなコロナウイルス禍の一連の影響は、実は想像以上に多くの経済的影響を与えている。
■モータースポーツの延期による経済的影響は非常に広い
モータースポーツといえばドライバー、マシン、メカニックという要素にばかり目が行くのだが、実際にはマシンを走らせるための予算が必要である。
レースに直結するマシンのランニングコストを除いても、ドライバーのギャランティ、メカニックの日当、移動費用、宿泊費、お弁当代、広報費用など細かく挙げていけば1レースごとに少なくとも数百万円の経費がかかる。
そうは言っても世間一般からすれば「モータースポーツは自動車メーカーの支援があるでしょ」と思いがちだが、実際はそうではない。
例えばSUPER GTのGT500陣営はマシンの供給体制に関してはトヨタ、日産、ホンダの支援を受けている。しかしながら前述したようなチーム運営に関わる費用については各チームがコツコツと営業活動を行い、参戦予算を確保しているケースがほとんどなのだ。
その運営資金の源であるスポンサーフィーは、レースが中止ともなれば当初全戦での予算で確保していた金額は減額になる可能性もある。 マシンに貼られたロゴが宣伝効果になるわけで、その露出機会が減ればスポンサー金額も減らさざるを得ないのだ。
だからこそレースの開催延期というのが最善の解決策であり、 マシンはあるけれど走らせられないという状況を回避するためにはそれしかないという見方もある。
もちろん影響はチームだけにとどまらず、モータースポーツを開催するサーキットへの影響も同様で、入場者のチケット収入だけでなく、グッズ販売ブースの売り上げ、飲食店の売り上げなど多くの収入が絶たれる事態が発生している。
もっと範囲を広げるとサーキット周辺のホテルなど宿泊施設にも打撃が響いており、レース延期に際して満室の予約がすべて空室になってしまったホテルもあったという。
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