【なぜホンダF1は遅いのか?】 開幕3戦未入賞、津川哲夫が原因を斬る

苦戦の根本はF1復帰前からあった「リサーチ不足」の姿勢

 津川氏の言う“真剣度”とは、具体的に何を意味するのか? 実はこのキーワードにマクラーレン・ホンダ苦戦の核心があった。津川氏が考える苦戦の原因はこうだ。

 「そもそもいきなりF1に復帰しようとした所が最も大きな問題。そこには最新のF1に対するリサーチもディベロップメントも不足していた」

 「例えばメルセデスだって、まだF1がNAのV8エンジンだった時から、現在のV6ターボエンジンの研究をやっていた。5〜6年かけて将来勝つための準備をしていたんだ」

 「ホンダも第2期F1時代は、そういったリサーチをきっちりやっていた。だからこそ1988年に16戦15勝というすばらしい結果を残せたのだ」

 2015年から復帰したホンダの目の前には、当時最強だったメルセデスという最高の教材があった。にも関わらず、その教材をリサーチし、優れたパワーユニットを開発できなかった。

 現場レベルではなく、ホンダ上層部のこの姿勢にこそ、問題の核心があると津川氏は語る。

メルセデスは2010年にF1に復帰。当初は結果を残せなかったが、V6ターボのハイブリッドユニットとなった2014年から3年連続でチャンピオンに輝いた
メルセデスは2010年にF1に復帰。当初は結果を残せなかったが、V6ターボのハイブリッドユニットとなった2014年から3年連続でチャンピオンに輝いた

ペナルティ覚悟の開発が苦戦脱却への鍵

 苦戦が続くマクラーレン・ホンダだが、浮上するためには何が必要なのか? 津川氏が考える鍵はズバリ、開発方針にある。

 「現在F1で年間に使えるパワーユニットの数は4基まで。でも、そんなの気にせずにガンガン新しいエンジンを作って、怒濤の改良をすべき」

  「今のF1はテストが著しく制限されているからこそ、いくらペナルティを受けようが、そうやって実戦で開発をしていくことは、先々のアドバンテージを生むことにつながる」

 「ホンダが常々言っている“走る実験室”になりきれということ。それをマクラーレン側の机も叩いて言える指揮者がいれば、必ずホンダは蘇る」

 日本のファンはマクラーレン・ホンダがふたたび栄光を摑む日を心待ちにしている。

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