日本最高峰のツーリングカーレースのスーパーGT。トヨタ、日産、ホンダの3メーカーがしのぎを削るGT500クラスと、主にプライベーターが参戦するGT300クラスの混走というのも大きな特徴だ。
そしてもうひとつの大きな特徴はタイヤメーカーによる開発競争があること。現在横浜タイヤ、ブリヂストン、ダンロップ、ミシュランが参戦し、それぞれの開発競争は熾烈を極めている。
2020年11月8日(日)に栃木県のツインリンクもてぎで開催されたラウンド7にて、ちょっと意外ともいえる現象が起こったので紹介しよう。
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文/写真:ベストカーWeb編集部
■世界一過酷なタイヤ戦争はスーパーGTで起こっている!?
GT300クラスは前述のとおりプライベーターがメインのクラス。FIA GT3規格のマシンがメインストリームだが、それ以外にもJAF-GTやマザーシャシーと呼ばれる日本独自規定のマシンが走っているのも面白い。
そんなGT300クラスを「単なる下位クラスでしょ」と括るのは非常に早計だ。今年からミシュランがタイヤサプライヤーとしてGT300に加わり、タイヤメーカー4社がそれぞれの契約チームへ向けてタイヤを供給しており、その隠れた戦いも非常に面白い。
スーパーGTは富士スピードウェイ(静岡県)、鈴鹿サーキット(三重県)、ツインリンクもてぎ(栃木県)、岡山国際サーキット、スポーツランドSUGO(宮城県)、オートポリス(大分県)で開催される。
ご覧の通り標高も気候もまちまちのサーキットで、開催時期も例年だと4月~11月までとシーズンを通しての寒暖差も激しい。
真夏の40℃近い灼熱から11月の10℃前後の気温までカバーできるスペックのタイヤを各社が用意しており、世界的に見てもあまり類を見ないタイヤ開発競争が行われているシリーズと言っても過言ではないだろう。
もちろんドライバーのスキル、マシンの特性、エンジニアやメカニックの技能など多くの要素がレースには絡むが、今回はタイヤをメインに見ていこう。
GT300のタイヤ情勢は(モースポファンには叱られるかもしれないが)ものすごくザックリまとめると、ブリヂストンがその性能をいかんなく発揮。実際に昨年のGT300チャンピオンである55号車のARTA NSX GT3はブリヂストンを装着している。
ブリヂストンの大きな特徴は目立った弱みがないこと。オールラウンドな性能を持ち天候や路面を選ばないのが強さの秘訣だ。今年も序盤はブリヂストン勢が表彰台を独占しており、その勢力図は変わらないように思えた。
■後半戦になってADVANパワーが炸裂!?
いっぽうでちょっぴり元気がないのがかつてADVANブランドでサーキットの栄華を極めた横浜タイヤ。現在ももちろんスーパーGTにタイヤ供給をしているが、スイートスポットをバッチリと当てるのが難しいようだ。
しかーし、そんな横浜タイヤがコロナ禍のなかでも開発を続けていた成果がついに、ついに、ラウンド7で花咲いた。
なんとGT300クラスの表彰台を横浜タイヤ装着チームが独占したのだ。1位はKONDOレーシングの56号車リアライズ日産自動車大学校GT-R、2位は4号車 初音ミクグッドスマイルAMG、3位は360号車RUNUP GT-Rだ。
もちろん今季のGT-Rの速さは目を見張るものがあり、セーフティーカーのラッキーもあったのだが、タイヤの戦闘力は確実に増している。
あるドライバーは「タイヤ摩耗のマネジメントがやりやすくなった」と語り、ロングスティントでも安心感のあるタイヤに成長しているとのこと。56号車はラウンド7の優勝でポイントランキングトップに躍り出ており、シリーズチャンピオン候補の最右翼だ。
コロナ禍でシーズン全体が大きく影響を受けた2020年はファンやチームだけでなく、タイヤメーカーも大きな影響を受けたシーズン。そんな混乱を生き抜き栄光を掴むのはどのチームになるのか。
スーパーGT最終戦は11月29日(日)に富士スピードウェイで開催される。GT300シリーズチャンピオンを横浜タイヤは獲得できるのか!? すぐ後ろにはブリヂストンが迫っており熾烈なタイヤ戦争にも注目だ。