独走からトップ転落!? F1で珍事を起こした“仮想”セーフティカーとは


 もともと3位を走っていたはずの車がピット作業を終えてコースに戻ると、なんと首位浮上! 3月25日決勝のF1開幕戦オーストラリアGPで起きたまさかの珍事だ。

 結果、3位スタートのセバスチャン・ベッテルが優勝、ルイス・ハミルトンが2位、キミ・ライコネンが3位という最終順位となった。

 トラブルが起きた際、一定以下の速度で全車を先導するのはご存じ「セーフティカー」なはず。

 ところが、現代F1では仮想のセーフティカー、バーチャルセーフティカー制度が導入されている。今回の逆転劇を演出したこの制度、いったいどんな仕組みで、なぜ導入されたのか?

 文:津川哲夫
Photo:Getty images/Red Bull Content Pool,Daimler,Ferarri


死亡事故を契機に導入された仮想セーフティカー

コース上にマシンが止まり、撤去作業等が必要な場合、通常セーフティカーが出動する。これはよく見る光景だったが……
コース上にマシンが止まり、撤去作業等が必要な場合、写真のようにセーフティカーが出動する光景はよく見るが……

 2018年シーズンの開幕戦、オーストラリアGPで余裕のリードを保っていたメルセデスのハミルトンが、3番手を走っていたフェラーリのベッテルに何とピットインで抜かれてしまった。ハミルトンは明らかなリード(最大約8秒)を取っていたにも関わらず。

 このトリックは、ハースのロマン・グロージャンのマシンが、ホイールトラブルでコース脇に停止してしまいリタイア。このマシン処理作業のために発動されたバーチャル・セーフティ・カー(VSC)が引金を引いている。

 VSCの導入は2014年鈴鹿で起きたジュール・ビアンキの死亡事故を機に、ダブルイエローフラッグ(コースマーシャルが2本の黄旗を振り続ける危険地帯表示)での減速義務を徹底するために導入された。

 VSCは、本物のセーフティカーを導入するほどの状況ではなく、かと言って黄旗(=掲示区間は追い越し禁止)だけでは減速不十分で危険があるとの判断時、つまり黄旗とセーフティカー導入の中間に位置するものだ。

制御装置やGPSを駆使してマシン速度を「監視」

レース序盤、メルセデスのハミルトンが首位、続いてフェラーリのライコネンが2位、ベッテルは3位という状況。最初にライコネンがピットインし、続いてハミルトンもピットへ。ベッテルがピットインすれば3位のままのはずだったが……
レース序盤、メルセデスのハミルトンが首位、続いてフェラーリのライコネンが2位、ベッテルは3位。この順位のまま、各車は1回のピット作業に向かった

 VSCが発動されると、全マシンはFIAの定めた速度まで減速しなければならず、この間、前の車に詰め寄ることも、後方の車を引き離すこともできず、VSC解除までこの状態を維持しなければ違反となる。

 これは、FIA-ECU(エンジンコントロールユニット、F1では全車統一の標準ECUを搭載)に、決められた速度が組み込まれることで監視され、かつGPSでコース上に数ある電光掲示板間の区間タイムが計測されている。

 実はこれが今回のトリックなのだ。初期にハミルトンを追いかけていたのはフェラーリのライコネン。キミはしぶとくハミルトンに追いすがり、プレッシャーを与えていた。

 そして、18周目にハミルトンに対して“アンダーカット”(先行車よりも先にピットインし、ニュータイヤでラップタイムを詰め、先行車が古いタイヤで走行している間に差を縮めることで、先行車のピットイン時に追い越す方法)を狙い、

 ライコネンに先を越されたくないハミルトンは、即座にこれに反応して次の周にピットイン。

 この時点でベッテル(実質3位)が先行するも、本来なら次のベッテルのピットイン時にハミルトンは悠々とベッテルの前にいるはずだった。

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