■かけひきとアグレッシブさの両方を堪能
ともあれ、松下にペナルティが下されたわけだが、この裁定、『降格→審議→降格再決定』とウロウロした挙げ句、予選終了から5時間以上経った後に発表されている。
過去はさておき、いまはルールに厳格に対処することが審査及び競技委員会のモットーであるならば、こんな単純な事例の裁定とその発表に5時間以上かかった理由がわからない。
翌日の決勝では、スタートでトップに立ったサッシャ・フェネストラズ(22、KONDO)がSF初優勝を飾った。
2位には予選から山本尚貴(33)と2台揃って復調ぶりをみせたナカジマ・レーシングの大湯都史樹(23)、3位には驚異的なタイムで4戦連続ポールポジションを獲得しながら、決勝でのスピード不足の解消まであと一歩の現王者・野尻智紀(32、無限)が入った。
2度目のセーフティーカー中にタイヤ交換義務を終え、後はタイヤの状態と相談しながら集中力を切らすことなくゴールを目指した3台の走りは、観客の目には地味に映ったかもしれないが、それぞれ一瞬の気も抜けない攻防を展開していた。
その点、見た目にも派手で見事なオーバーテイクで観客にアピールしたのが、予選16番手から7位となった平川と、同じく14番手から10位でポイントをゲットした笹原右京(26、無限)だった。
スタートで4台を抜き、その後も機会を逃さず一発で仕留める平川の走りは『さすが!』のひと言だったし、予選を終えて「前回とはまったくの別人になっていた」と困惑ドップリだったマシンで果敢に攻め続け、貴重な1点を獲得した笹原の走りもまた、モータースポーツにおける良い意味のアグレッシブさを見やすい形で体現していたと思う。
そんな実は見どころ満載の一戦で残念だったのは、SCが2度入ったことで53周の予定周回数のほぼ3分の1がパレード走行となり、最大延長時間が70分に達すると見込まれたレースが49周に短縮されたことだ。
コースを飛び出したマシンの撤去、移動の作業が大変なことは筆者も重々承知している。だがそもそも今回のレース、各コーナーに配置されたオフィシャルの人数が必要最低限というか不足気味な印象で、それについてはコロナ禍が続いていることもあり致し方ない面もあったと思う。
だがアクシデントが頻発する1コーナーから2コーナーにかけての人員配置の少なさ、および撤去作業の段取りの悪さとなると話は別で、大クラッシュしたマシンの後片付けでもあるまいし、と突っ込まずにはいられない。
大勢で迅速に作業が進められSC走行がもっと早く終わっていたら、レース後半がもっと引き締まった展開になったと想像できるだけに、時間のかかり過ぎた作業が恨めしい。私がチケット代を払った観客なら「53周全開のレースを見せんかっ!」とブチ切れているところだ。
F1やWECを世界戦たらしめているのは、ドライバーやチームだけではなく、開催サーキットやレースを支える人々の仕事ぶりが質量ともに高いレベルで整っているからだ。
ドライバーのレベルがいかに高くマシンの性能がどれだけ優れていても、それだけでレースのレベルが上がるわけではない。SFをもっと面白いレースにしたいのなら、モータースポーツがどのようにして成り立っているのか、いま一度、その足下の見直しを図っても良いのではなかろうか。
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