ホンダが好きだからこそ言わせて!! 企業としての軸はどこへ……ホンダ5度目のF1参戦発表がモヤモヤする理由

■復帰の理由はアメリカで流行中だから!?

NetflixのF1ドキュメンタリーが大ヒットし、F1が流行中のアメリカ(写真は2021年のアメリカGP)
NetflixのF1ドキュメンタリーが大ヒットし、F1が流行中のアメリカ(写真は2021年のアメリカGP)

 でも今回のホンダの再々再々再復帰って、これが個人の主張なら「コイツの言うこと真に受けたらこっちが馬鹿をみるなぁ」ってレベルの話だと思いません?

 電動化と合成燃料が新ネタとして入ってはいますが、基本的に『前に聞いた話』とあまり変わっていないし、その結果が二度の「F1に戻らない宣言」になったことは説明するまでもないでしょう。

 ひとり、私と似た考えらしい記者が、

「いまアメリカでF1がバズっていることが5度目のF1復帰決定に影響しましたか?」

 と質問しましたが、三部社長の回答はハッキリ『した』というものではありませんでした。

 いやいや、関係ないハズないでしょう。

 なにせ従来の一国1GP開催の原則はどこへやら。USAでは今季3GPも開催されるのです。すべてはNetflixで放映されたF1ドキュメンタリー(というには作り込みがスゴい)番組の影響です。

 ともあれ、ホンダの『儲け』を生み出しているUSAでF1がバズったおかげで業界全体が潤ってるは、撤退したといっても実際はまだレッドブルにパワーユニット供給をしていてしかも勝ち続けてるは、となればそりゃ経営陣の間で「やめるの、やめません?」って話になっても全然おかしくないです、はい。

 ただですね、USAでのホンダバッジのイメージはドイツ車でいえばワーゲン、つまり大衆車であって、高級スポーティのイメージは代々ACURAブランドの受け持ち。シビックやアコードはドイツ車でいうと、間違ってもポルシェじゃないんですよね、実際のところ。

■「走る実験室」という言葉の役割

ポルシェは2023シーズンより、LMDh車両「963」でWECに参戦
ポルシェは2023シーズンより、LMDh車両「963」でWECに参戦

 そのポルシェが今季からWEC世界耐久選手権の最上位クラスにハイブリッド機能搭載のLMDhマシンでモータースポーツ界の重鎮チーム・ペンスキーとタッグを組んで復帰するのにあたりこう発表しました。

「フル電動はフォーミュラe、効果的かつエモーショナルな内燃エンジンはGTカテゴリーで参戦している。このたびその間を埋め、かつウチが多くの市販車で採用しているパワフルなハイブリッドドライブで総合優勝を争えるLMH参戦プロジェクトは、ウチの市販ラインナップにもバッチリ合ってるし、100%再生可能燃料もすでに使っていてサスティナビリティの観点からもからみてもとても魅力的なんです」。

 うん、これなら明快、シャープにしてスマートで、復帰理由として大納得です。

 ずいぶん前にホンダOBの技術者から「走る実験室って、株主に説明するのに藤沢武生さんが使った言葉なんだ」って聞いたことがあります。この話の真偽はさておき、少なくともここんとこのホンダF1での『走る実験室』の役割をみると、技術面の効果よりも対株主&世間様へのキーワードとしての役割のほうが大きかったように私には思えます。

 まったくのところ、いろは坂や中央道でハイブリッド車の立ち往生(※編註)が頻発してるのに、「走る実験室であるレースの現場で得た技術が量産車にフィードバック」だの「ホンダらしい高性能な商品」だのって、自社製ハイブリッドシステムでWECに挑み続ける王者トヨタの前で言えますのん?って感じです。

※編註:乾式クラッチのi-DCDで発生したトラブル

■モータースポーツへの愛情はどこへ?

インディカーやWEC、WRCなど、最高峰のレースはF1だけではないはず。F1以外のカテゴリーにもリスペクトをし、共にモータースポーツを盛り上げる姿勢が欲しい
インディカーやWEC、WRCなど、最高峰のレースはF1だけではないはず。F1以外のカテゴリーにもリスペクトをし、共にモータースポーツを盛り上げる姿勢が欲しい

 キッツいことを書いてきましたが、ホンダのモータースポーツ愛を否定するつもりはございません。北米でのF1開催数が増えればACURAブランドのイメージアップも期待できるし、トヨタのナスカーでの大衆狙いとの差別化もできて、営業的メリットも大きいと思います。

 それでもやはり、「ホンダ、そこにモータースポーツへの愛はあるんか?」と問いたい。

 ないとは言いません。が、ホンダのモータースポーツ愛って、とどのつまりF1限定なんですよね。今回の会見でも「四輪レースの最高峰F1」って文言を何度も使ってらっしゃいましたが、それって他の世界的カテゴリー、WECや世界ラリー選手権の参戦メーカーやそのファンに失礼じゃありません?

 じゃあ米インディカーは最高峰じゃないの? と訊いたら何とお答えになるのでしょう。

 ホンダが「世界最高峰のF1」と口にするとき、そこにはF1以外のカテゴリーで地に足着けて、ライバルとも協力しながらレースを盛り上げていこうと努力している人々へのリスペクトが感じられない、というのは私の杞憂でしょうか。

 口の悪い私の類友の一人が、今回のホンダの復帰について『F1界の大仁田厚』と評していました。いくらなんでも7回引退なんてことは起きないと思いますが、言い得て妙だなぁと吹き出してしまいました。

 そんなおチャメな事態が起きないことを祈りつつ、2026年のホンダ5度目のF1(正式)復帰を暖かい眼で見守っていきたいと思います。

【画像ギャラリー】次の参戦は2026年……ホンダF1参戦時の2021年シーズンを写真でチェック(24枚)画像ギャラリー

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