「アスリートにスポーツをやらせてほしい」 モリゾウさんが言い放った“ド正論” ル・マンの舞台裏、もうひとつの戦い

「アスリートにスポーツをやらせてほしい」 モリゾウさんが言い放った“ド正論” ル・マンの舞台裏、もうひとつの戦い

 モリゾウさんは怒っていた。ル・マンに向かう飛行機の中でずっとイラついていた。突如決定されたトヨタのGR010ハイブリッドへの37㎏のBoP(性能調整)に不信感を募らせていたからだ。

 しかし、トヨタ自動車の豊田章男会長として100周年の記念式典に出席しなければならない。予定されていたスピーチを急きょ変更した。ル・マンで発表したGR H2レーシングコンセプトを紹介する際に「水素は軽いが、Less BoP(BoPもない)」と皮肉った。

 このコメントはたちまち報道され、欧州はもちろん、世界を駆け巡り多くの共感を呼んだ。100周年とはいえ世界に向け、おかしいことはおかしいと直言したモリゾウさん、その舞台裏での戦いをお伝えしよう。

TEXT/ベストカーWeb編集部 写真/ベストカーWeb編集部、トヨタ(GAZOO RACING)

■誰が得する「性能調整」かは明白だった

チームに激励の挨拶をするモリゾウさん。右は内山田竹志前会長
チームに激励の挨拶をするモリゾウさん。右は内山田竹志前会長

 ル・マンの記念すべき100回大会は終わった。フェラーリが58年ぶりに優勝し、6連覇を狙ったトヨタのGR010ハイブリッドは2位に終わった。50年ぶりにワークスに復帰したフェラーリの優勝は多くのファンを歓喜させた。そのことにケチをつけるつもりはない。24時間しっかりと走り切った51号車は賞賛に値する走りを見せた。

 しかし、今シーズン開幕から3連勝し、ル・マン大会も優勝の最右翼と思われていたトヨタチームの2台のマシンにいきなり37kgのBoPが課せられたのは、予選1週間前のことだ。

 優勝したフェラーリは24kg、3位のキャデラックは11kg、ポルシェは3kg、プジョーは0kgとなった。BoPはルール上問題ない。しかし、1週間前というタイミングはいかにも唐突だ。

接戦となったル・マンであったが、スポーツとして急なルール変更はトヨタにとってもル・マンにとってもハッピーなことはない
接戦となったル・マンであったが、スポーツとして急なルール変更はトヨタにとってもル・マンにとってもハッピーなことはない

 BoPはないと考えていたトヨタチームに不安が募った。そして決勝のグリッドを決めるハイパーポールではフェラーリの1、2となりトヨタの8号車が1秒469差の3位、7号車は1秒951秒差の5位となった。フェラーリは今季3戦を終えて3位、2位、3位とトヨタ以外に負けておらず、トヨタの6連覇を阻止する最有力と思われていたフェラーリは勢いづいた。

 一方、思ったよりも大きな差となり、トヨタチームには焦りに加え不満が噴出した。突然のBoPはなぜ実施されたのか? ル・マン大会を主催するAO(フランス西部自動車クラブ)の主張はGR010ハイブリッドが参戦するハイパークラスの性能差が開きすぎ、埋めるためにはBoPは仕方がなかったというものだ。

 フェラーリに目が行くが、ポルシェやプジョーに気を遣ったのかもしれない。ポルシェはたった3kg、プジョーはなんと0kgなのだ。それでもシミュレーションではトヨタが上に行くと予想されていたという。

フェラーリを追い上げ2位になった8号車のドライバー、右からブエミ、ハートレー、平川の各選手と小林可夢偉チーム代表(左)
フェラーリを追い上げ2位になった8号車のドライバー、右からブエミ、ハートレー、平川の各選手と小林可夢偉チーム代表(左)

次ページは : ■「アスリートたちにスポーツをやらせてほしい」……核心をとらえたモリゾウさんの一言

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