2023年7月28日、1999年からSUPER GT(旧JGTC)にレギュラーで参戦を続けている立川祐路選手が、GT500クラスから2023シーズンを持って引退することを発表した。その発表後、初のレースとなった第4戦富士。この場で引退会見が行われた。会見で語られた立川選手の心情に迫る。
文/西川昇吾 写真/ベストカー編集部
■トヨタ/レクサス一筋で25年
1999年からJGTCにレギュラー参戦を開始した立川選手(1996年にスポット参戦)は今年48歳になった。レギュラー参戦開始当初から、一貫してTEAM CERUMOと共にGTを戦ってきた。SUPER GTへのレギュラー参戦歴は、前身となるJGTCを含めると今シーズンで25年にも及ぶ。
しかも常に上位カテゴリーのGT500にエントリーしてきた。これだけ長きに渡り、トップカテゴリーに参戦し続けるレーシングドライバーは近年では珍しい。
GTを200戦以上戦い、優勝回数は19回、シリーズチャンピオンは3回獲得している。24回のポールポジション獲得記録は現在歴代最多記録だ。
そして、改修以前から富士スピードウェイを得意とし、富士で9勝とポールポジション11回を記録していることから「富士マイスター」言われている。そんな富士マイスターにとって今回の第4戦は最後の富士でのレースとなったのだ。
■「自身の力では何とかできなくなった」
40歳を超えてもなお、衰えぬ走りを見せる立川選手だが引退を意識したのは昨シーズンからだそうだ。そこから「自身の進退をかけてレースに挑む」という心づもりで過ごしてきたそうだが、具体的な決断をしたのは第3戦の鈴鹿だったと立川選手は語った。
■引退理由について聞かれると立川選手は
「成績が残せていないから、プロドライバーとして走っている以上成績には責任を持たないといけません。以前ならばクルマがまとまっていないといった不利な状況でも自身の力で何とか出来たこともあったと思う、けど今はそれが出来ていない。それが出来ないならば引退するしかないと考えた」と語った。
これに対して会見後、花束を贈呈するタイミングで盟友であるTGR TEAM SARD監督、脇坂寿一氏はこう述べた。
「引退も含め彼が衰えたわけではありません。不利な状況でもドライバーが何とかしていい成績を残すなんて、他のドライバーではできないことです。彼はそういった特別な能力があったんです。それが出来なくなっただけで、ドライバーとしてはまだまだ一流です」
■レース人生の中で「今が一番嬉しい」
シーズン途中での引退発表に関しては、「引退するという決断をしたならば早めに皆に伝えて、ファンと一緒にレースを戦いたいから。周りの意見は抜きに自身だけで出した結論だが、来年も乗ってほしいという声が嬉しかった」と語った。
引退発表直後、そして富士マイスター最後の富士というだけあって、当日の会場では立川選手引退に関する様々な展示が行われていたし、ピットウォークなどではいつも以上にTEAM CERUMOは人気であった。
そんな現状を見て立川選手は「レースをやってきて引退するのは初めてだけれども、みんなが自身の引退を寂しいと言ってくれている、残念がってくれている。ドライバーとしてこれ以上の幸せはないと思います。今が一番うれしいです」そんな言葉をどこか晴れやかな表情で語っていた。
■最後にもう一勝
富士マイスター最後の富士はQ2アタックを担当し予選7位。決勝はスタートドライバーを担当し、途中中盤でバトルを演じながら最終的に5位フィニッシュとなった。
レース後立川選手に話を聞くと「もっと上まで行きたかったのは正直なところだが、最後まで良い戦いができたと思う。正直これが最後の富士と考えると寂しい。でも今シーズンはまだ半分。クルマの雰囲気も良くなってきているし、最後にもう一勝できるように全力で戦いたい」と語っていた。
引退を決めたことで、この週末の立川選手は終始リラックスした様子であったように見えた。このリラックス感がいい方向に働き「最後にもう一勝」に繋がることを期待したい。SUPER GTファンは立川選手の残り4戦に注目だ。
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