2023年シーズン締めくくる最終戦もてぎ。チャンピオンが決まるこのレースだが、日産自動車大学校がサポートするGT300 56号車「リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R」も有終の美を飾りたいところ。しかしそこに待ち受けたのはあまりにも過酷な世界だった……。
文:ベストカーWeb編集部/写真:塩川雅人
■どうにもならない「性能調整」
スーパーGTには勝てば勝つほど錘を積むハンディウエイトシステムがあり、簡単に言えば「圧倒的勝者」が生まれにくい。開幕から5連勝みたいなレースが続くとどうしても興ざめしてしまう人もいるだろう。そこでより接近戦を生み出すためのシステムだったりする。
しかしスーパーGTにはこのハンディウエイトに加えて「BoP」というマシンそのものに掛かる性能調整がある。これは車重を増減したり、吸気口の径を制限したりなどの対策をとり、マシンの総合性能を抑え込む措置だ。
今回「速すぎる」とされたリアライズ日産メカニックチャレンジGT-RにかけられたBoPは「+85kg」。単純比較するものでもないが2022年は+35kgだった。これには「重すぎる!!」という声も多く聞こえてくる。
とはいえ56号車がウエイトを積んでも速かったのは事実だし、これだけ遅くされてもまた速いのが56号車だったりする。そしてチームもとにかく決勝を速く走ることだけを意識している雰囲気だった。
■急な雨天にも狼狽えない最強チーム
決勝スタートからほんの10分程度でポツポツと雨が降り始める。当初の天気予報では小雨で短期的な降雨というものだったが、徐々にその雨量は増え始め、雨天の時間がだんだんと長くなってきた。
そして56号車は24番手からスタートする。予選でのBoP効果はてきめん。Q2にも進めずに苦戦を強いられてしまったが、いつも決勝はなぜかグイグイ速いのが56号車。スタートドライバーの名取鉄平選手が攻めに攻める。
63周のレースで全体の周回が40周になるまで名取選手のスティントを引っ張った。名取選手の武器でもあるシュアで安定したドライビングを経てオリベイラ選手にタスキを渡す。
よきライバルでもある52号車スープラの前に出た56号車だが、ここには近藤真彦監督の伝家の宝刀「タイヤ無交換」が効いている。さすがの近藤監督もここぞとばかりに無交換作戦を発動するタイミングだったようだ。しかしその後は時折雨が強まりオイル旗が出るほどの雨量になり、スピンをするマシンも出てきた。
ただでさえタイヤ無交換でグリップが落ちていくなか、そこに雨という強敵がのしかかる。タイヤを持たせつつ、ライバルを封じ込め、かつ確実にフィニッシュまでマシンを進める。こんな厳しい戦いではオリベイラ選手の圧倒的なテクニックが生きる。
時折強まる雨にライバル勢を尻目に、グイグイとグリップする路面を探りながら走る。結局最後まで56号車ランデブーとなった52号車は7位で王者を決め、56号車はひとつ前の6位フィニッシュとなった。
レースは勝つ、勝てないということに大きな意義はあるものの、やはり厳しい状況下でどうやって戦い抜くかというチームの底力が垣間見える。状況を受け入れ、最大限のパフォーマンスを発揮する。
日産自動車大学校の学生たちにとっても、ここまでピリピリした緊張感のある現場に身を置けたことは大きな財産になるだろう。
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