■このままラリーが終わってほしくない!
その晩、チームで決起集会が行なわれたが、応援に来ていたTMCA(トヨタオーストラリア)が「我々も何かお手伝いしたい」と申し出て、手作りのカレーライスを振舞ってくれた。これは大竹選手の「お米が食べたい」と言うリクエストによるものだったが、最大の試練をクリアしたメカニックにとっても、ホッと一息つける “日本の味”だったはずだ。
土曜日のラリー初日、「絶対に完走」を目標にスタート。序盤は様子を見ながら慎重な走りだったが、SSを走るごとにペースアップ。ただ、車内ではRallySafe(計測機器)が台座ごと外れて、竹藪選手はそれを右手で支えながら左手でペースノートを保持しながらコールすると言う状況だったそうだ。
とはいえ、SSを重ねる毎にドライバー/コドライバーのコンビネーションは深まったようで、「とても良いペースで『ラリーが終わって欲しくない』と思えるほど、楽しく走れた(大竹選手)」、「楽しすぎて、どれだけでも走っていられる(竹藪選手)」と振り返ってくれた。
このように初日を走り切り、総合9位/プロダクションカップ3位と予想を超えるリザルト。実は2人は速報を見れるサイトを知らず、自分達のポジションを確認できていなかったが、途中で他のドライバー/コドライバーに「君たち、凄いよ」と言われたそうだ。
日曜日のラリー最終日、コンスタントにプロダクションカップ2位のタイムをマーク。竹藪選手は「これでもセーブして走ってもらっている」と聞き、更にビックリ。今回、いくつかのSSで走りを見たのだが、とにかく無駄な無くスムーズなのに速い!!
「SS中、竹藪さんが凄く楽しそうなのが伝わってくる(大竹選手)」、「ナオが楽しそうに運転しているのが、下を向いていてもたくさん伝わってきた(竹藪選手)」と、まさに人車一体の走りだった。
ただ、リモートサービスの車両チェックでトランスファーのオイルクーラーにダメージがあったようで、その後はいたわりの走行を強いられたが、抑えながらもステディな走りで速さは全く変わらず。そして、最後まで確実に走り切り、総合7位、プロダクションカップ3位と、“結果”も伴った。
■この経験が今後の業務に活きる
大竹選手は、「まずはチームの皆さん、そして協力して頂いたオーストラリアの皆さんに、心から感謝したいです。とにかく今回はタフな道だったので、クルマの事を考えて走る、クルマを守りながら走る……と言う部分ではとても勉強になりました。NBMのメンバーも“兄弟”のように接してくれました。ニール・ベイツさんが『次はRally2かな』と言ってくれたので、それを真に受け、またオーストラリアに戻って来たいです」。
竹藪選手は「とにかくチームにクルマを直していただき、感謝しかないです。選手ができる事は“成績”でしか返せないので、3位表彰台をチームの皆さんが喜んでくれて本当に嬉しい。とにかく危なさよりも楽しさが勝ったラリーでした」と、二人ともやり切ったようだ。
今回のミッションの1つ「人を鍛える」に関してはどうだったのだろうか? 豊岡監督に聞いてみると、このよう語ってくれた。
「予期せぬ事が色々ありましたが、結果として『いい経験をさせてあげられた』と思いました。自分も久々に作業しましたが、『皆でクルマを弄る』、『同じ目的に向かってやる』はとても気持ちいいです。今回は本当にNBMのメンバーに助けられました。僕らを常に見ていて『マズイな』と思ったら手助けしてくれる……センサーが凄いなと。この経験が今後の業務に活きると信じています。本当に来てよかったと思います」と、部下の成長も感じられたようだ。
コメント
コメントの使い方ドライバー育成が目的ではなくチーム全体が第一とは言いつつ、フィジカルトレーニングや食生活、動体視力を落とさない方法などまで個別に対応してると聞きました。育成ドライバーにとって最高と言える環境。
こういったやり方が今はSNS等で共有化され、他環境でも負けていられない!と変革に繋がり、若手ラリースト全体の底上げにつながっていくと思います。