クロカン四駆も電動化は避けて通れない
三菱にとってパジェロが特別な存在であることはいうまでもない。日産と提携した今でも、三菱社内にパジェロ復活を切望する社員は多いと聞く。
もちろん開発現場でもそうだし、経営陣にもパジェロのネームバリューを三菱自動車復活の起爆剤にしたいという考えもある。
高い人気を誇るベンツGクラスはレンジローバーと並ぶ世界のクロカン4WDを代表するモデルだ。そのGクラスでさえも、今後の展開として、メルセデスベンツはEVを投入することを明らかにしているし、新たなEVブランドとして立ち上げ、日本でも販売を開始したEQCも第一弾はSUVである。
三菱は電動化には積極的に取り組んでおり、特にアウトランダーPHEVで磨き上げてきた前後2モーターを使った4輪制御技術は一日の長がある。
日産との資本提携によるメリットも大きく、日産がリードするEVリソースの共用化も電動化に大きな弾みをつけることとなる。
例えば前回、2017年の東京モーターショーで提案された「e-EVOLUTION」は次世代の電動化パジェロを起想させる技術的な内容だし、2019年のジュネーブショーでワールドプレミアされ、2019年10月の東京モーターショーにも出展された「エンゲルベルクツアラー」はPHEV技術を活用した現実的なメカとして次世代型パジェロへとつながっていくコンセプトだ。
有数のスキーリゾートであるスイス中央部にあるスキーリゾートからその名を取ったエンゲルベルクは、リゾート地が似合うオールラウンドクロスオーバーとしてデザインされている。
三菱のデザインコンセプト「ダイナミックシールド」がフロントの大部分を占め、給電時や充電時にメッキ部分が柔らかく点滅する。
エンゲルベルクは、アウトランダーPHEVで培った三菱独自のツインモーター方式PHEVシステムを進化させた、フロントとリアにモーターを搭載する高出力・高効率のツインモーター方式のフルタイム4WDを搭載。
ランサーエボリューションで磨いた技術を活用し、前輪左右の駆動力配分を制御するヨーコントロール(AYC) を採用。それに加え、四輪のブレーキ制動力、前後モーター出力の制御(ABS&ASC)を統合制御し、走る・曲がる・止まるといった運動性能を高める車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」を採用している。
2.4L、直4エンジンにPHEV専用ガソリンエンジンと、車体フロア下に大容量の駆動用バッテリーを搭載し、WLTP規格でのEV航続距離は70km以上。総航続距離は700km以上となっている。
本格派クロカン四駆としての伝統とランエボのDNAを受け継ぐ新型パジェロ
このエンゲルベルグは次期アウトアンダーPHEVとなる見込みだが、新型パジェロはフラッグシップとしてこのパワートレインをさらに極めていく。
新型パジェロには、リア側にデュアルモーターAYCを盛り込んだトリプルモーター方式を3L、V6スーパーチャージャーエンジンに組み合わせて搭載する。
このパワートレインは、低回転域で強大なトルクを生み出すモーターは細やかなトルク制御にも適しており、この制御技術でリードする三菱にしてみれば、泥濘路や積雪路など、パジェロが必要とされる場面であればあるほど積み上げてきたEV技術を発揮できることになる。
新型パジェロのデビューは早くても2021年。これまで培ってきた「4WDと電動化」のノウハウを盛り込んだ三菱のクルマ作りを盛り込んだPHEVへと大変身することになる。
さらに電動化が本格化する2025年頃に向けて、日産とのアライアンスでエクストレイルがアウトランダーPHEVとデビューした後、ピュアEVのパジェロがデビューするはずだ。しかし、市場規模を見ると茨の道になるのは間違いない。
もはや伝統あるパジェロといえども電動化が避けられない。とはいえ、三菱の財産でもあるランサーエボリューションの制御技術が生かされるはずだから、新型パジェロは、パジェロ+ランエボのDNAを受け継いだ、これまでとは明らかに次元が違う、「EVの本格派クロカンSUV」として帰ってくる。
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