日本を代表する貨物車・商用車といえば、トヨタ ハイエースだろう。その用途は多彩で宅配業から旅客輸送、寝台車や現金輸送車、福祉車両として使われている。昨今では個人で乗用利用する人も増え、趣味の機材を運ぶためのトランポや、キャンピングカーなどとしても愛されるクルマだ。
現行型ハイエースは2004年にフルモデルチェンジを受けてから、3度のマイナーチェンジを受けてきた。それでも最新のマイナーチェンジを受けたのは2013年のこと、すでに7年が経過し、フルモデルチェンジからは17年もの歳月が経過する。
フルモデルチェンジが待たれるなか、このほどハイエースが8月におこなう一部改良の情報が判明した。改良の内容を紹介しながら、今回の一部改良から読み取れる、ハイエース次期型のスケジュールを予想していく。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA
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■商用だけではないハイエースの魅力
ワゴンタイプの貨物車両で、ハイエースの人気は不動のものとなっている。2021年4月の月間販売台数は776台(ハイエースワゴン)だ。ライバルの日産・NV350キャラバンの4月の販売台数は59台という数字を見れば、ハイエースの販売台数は申し分ない。
トヨペット店専売だったハイエースは、現在、トヨタ全チャネルでの取り扱いに変わり、販売力が大幅に伸びた。法人や個人事業主が中心の販売が、一般個人層へ広がっていき、購買層にも変化が出ている。
もはやハイエースは、商用バンとしての顔だけでなく、乗用車としてクルマ文化を支える存在となっているだろう。トヨタも商用車として割り切った簡素化ではなく、乗用ユーザーを考えた商品強化を進めていくようだ。
■正式発表はなし? 一部改良の内容とは
今回予定されるハイエースの一部改良は、法規対応がメインとなる。同時に、型式整理や標準装備の追加を行い、売りやすさを高める狙いだ。改良されたハイエースの生産開始は8月2日を予定している。なお、一部改良に関する記者発表はおこなわれない。
法規制に関する商品強化は2点だ。
まずは、ディーゼル車がWLTP燃費基準に対応、そしてワゴン・コミューターに対して、プリクラッシュセーフティシステムとレーンディパーチャーアラートを標準装備し、予防安全装備の装着義務化に対応する。これに伴い、トヨタセーフティセンスのレスオプションは廃止される予定だ。
ここからは、同時におこなわれる仕様変更に関してお伝えする。
まず、ハイエース全車を対象にMT車を廃止、またラジオレスが標準化され、CD+AM/FMラジオのメーカーオプションは廃止(AM/FMラジオのメーカーオプションは継続)となる。さらに、寒冷地仕様とヒーター付きアウターミラーはセットオプション化される模様だ。
バン・スーパーGLを対象に、ボディカラー2色が廃止される。(ボルドーマイカメタリックとグレーメタリック)また、乗用ユーザーを考え、スマートエントリー・アクセサリーコンセント(100V)・オーディオスイッチ付ステアリングホイールを標準化した。
バン・3人乗りではリアワイパー・リアデフォッガー・リアアンダーミラーを標準化し、キャンパーベース車ではバックドアイージークローザーを追加する。より使いやすく、より快適にハイエースを使えるよう、工夫が施された。
車いす仕様車ではディーゼルと2WDの組み合わせを廃止する。また、モデリスタでは標準ボディのガソリン車を廃止、ワイドボディではガソリンと2WDの組み合わせを廃止する。また、モデリスタでは全車でDXグレードを取り扱わなくなる。
多種多様な仕様のハイエースを整理し、売れ筋の商品に限定していく動きが読み取れるガソリン・ディーゼル、2WDと4WD、乗用グレードが4種類あり、ボディサイズもワイドやロングなどさまざまだ。
加えて福祉車両に冷凍バンや荷役省力車など特装車の数も多い。できるだけ仕様を限定していくことは、生産効率の上昇と、販売店の売りやすさにつながっていくだろう。
大規模な変更はないが、商用車から乗用車へ、印象を変えつつあるハイエース。次期型はどのような形になるのだろうか。
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