今年の元旦〜1月14日に中東のサウジアラビアで開催されたダカールラリーの2022年大会。
同トラック部門では、アリソン社製の「トルクコンバータ式AT」を搭載するクルマが大半を占め、我らが日野チームスガワラの「HINO600」も20年大会に続き、同社ATを搭載し参戦している。
それだけAT化することにメリットを見出すチームが多いわけだが、あらためてATがもたらす優位性とはナニか? 解説してみよう。
文/フルロード編集部 写真/フルロード編集部・日野自動車・ASO
【画像ギャラリー】ダカール2022でアリソントランスミッションを搭載したトラックが上位を独占!(7枚)画像ギャラリーダカールラリーのアリソン事情
アメリカに本社を置くアリソン・トランスミッションは、商用車用オートマチック・トランスミッションの分野では世界シェアトップを誇るメーカー。
同社ATは大型建設車両、ごみ収集車、消防車、レスキュー車、および防衛車両などに世界中で使用され、ここ日本でも走行性能の高さから大型路線バスや特装系トラック(ダンプやミキサー)などに採用されている。
いっぽう世界一過酷とされるダカールラリーのトラック部門(今大会から4輪部門に併合され同部門トラックグループに)では、近年アリソンのATを搭載するのが大流行。
今大会では、総合トップ10入りを果たした車両すべてと、トップ20中17台の車両がアリソンATを採用するという、ちょっと異様にも思える搭載率となっている。
また今回初のHV車で参戦し、総合22位で完走を果たした、日野チームスガワラのHINO600もアリソン3000シリーズのトルコンATを搭載。さまざまなトラブルを克服し連続完走記録31回を達成している。
オートマって実はすごい!? ATがもたらすさまざまなメリット
ATが多くの競技車両に採用された背景には、遊星歯車がもたらす途切れのない加速、トルクコンバーターによるトルク増幅・滑らかな走り出し、アリソンATの耐久性の高さがある。
トルコンATの構造は流体継手の一種のトルクコンバーターと、1つのギアで複数のギア比と回転方向を得られる遊星歯車で構成(アリソンのATの場合は遊星歯車を3つ配置し、前6段/後1段を成立)される。
AMTやMTでは、変速時にクラッチを切ってギアを切り替えまた繋いで……を繰り返すため、どうしても変速の間、すなわち失速が生じるが、遊星歯車機構では絶えず変速することができるため、レースにおいてはタイムアップに貢献。
またトルクコンバーターは、エンジン側の入力を得るタービンと出力側のインペラの間に整流用のプレート「ステーター」を設け、オイルの流れに勢いをつけインペラのフィンにぶつけることでトルクの増幅効果をもたしてくれる。
だだ、ATのトルク増幅効果は回転速度が増すにつれ薄れ、流体継手ゆえのスリップロスと呼ばれる動力損失のデメリットのほうが増大する。
そこでインペラ側とタービン側を機械的に直結するロックアップクラッチを備え、アリソンATでは積極的にロックアップ制御を行なうことでトルク増幅効果と高効率な動力伝達を両立するものになっている。
また、ダカールのような砂漠地帯を中心に行なわれるラリーレイドでは、必要以上にトラクションをかけすぎるとスタックしてしまうが、流体継手がもたらす緩衝効果で、こういった不整地路にも優れた走行性能を発揮する。
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