二階建てバスのような運転席
今回の試乗車は「2635L 6×2/4 ENA」というモデル。「26」は車両総重量(GVW)が26t級であることを意味し、「35」は350HP級エンジン搭載車であることを示す。また「6×2/4 ENA」は6×2駆動の3軸車(前1軸、後2軸)で後後軸に電動ステア機構を備える4WS車であることを意味する。
乗降ステップは1段で、地面からステップまでの高さは45cm、ステップから運転席フロアまでの高さは35cm。ステップ面積自体はバスほど広くないが、大型はもちろん中型のトラックよりも乗り降りは楽だ。
運転席は前方に大きく突き出したフロントオーバーハングの真上にあり、真横からのシルエットは路線バスのよう。下端が低く直立したフロントウインドウからの眺めも路線バスに似ているが、室内高は129.5〜147cmとそこまで高くなく、雰囲気は路線バスというよりも二階建てバスの運転席に近い感じ。
飾りっ気のないインパネやドアトリムのデザインはいかにも作業車といった感じで、高級化を進める欧州の長距離輸送用トラックとは明らかに異なるが、ベルトインタイプのエアサスシートが標準装備されるなど基本装備は充実。アクトロスやスーパーグレートと同じデザインのステアリグホイールのスイッチからは、走行中のエアサス車高調整も可能だ。
4WSで圧倒的な小回りを実現!!
試乗車のパワートレーンは、ダイムラー製のOM936LA型7.7Lエンジン(最高出力354HP/2200rpm、最大トルク1400Nm/1200〜1600rpm)に、アリソン製6段トルコンATという組み合わせ。インパネ上のプッシュボタン式シフトセレクターでD、N、Rというレンジを選択して走行を開始する。
試乗車は未架装のキャブ付シャシーで、構内道路のわずかな凸凹すらも敏感に伝えてくるため、乗り心地について報告することはできない。また、キャブ内の快適性についても実際の路上では未確認なので報告はできないが、スクエアなキャブ形状と大きなフロントウインドウによる開放感の高さは圧倒的だ。
装飾の少ないインテリア、センターの樹脂パネルにさまざまなスイッチを配置できるデザインは実用性第一という感じだが、頻繁な乗り降りを伴う特装車には、エモーショナルなデザインよりも、現場で使いやすいエコニックのようなデザインが似合うと思う。
走りに関しては4WSによる小回りの良さが印象的で、幅員16mの道路を切り返しなしでUターンできることからも、その旋回性能の高さがわかるはず。試乗車は全長8.42m、ホイールベース4.5m+1.35mで正確な最小回転半径は不明だが、日本で普及しているGVW25t級の長尺カーゴ車と比べても明らかに小さく旋回できる印象だ。
4WSは前軸の舵角に応じて逆ハンドルを切る単純な制御だが、微速時のハンドリングでも違和感なく素直に回っていく印象で、バックでの車庫入れもコントロールしやすい。作動条件は車速30km/h以下の前後進で、それ以上の車速では直進固定となる。
今回は試乗車が未登録だったため敷地内での試乗となったが、エコニックは地場での用途を対象とする機能主義的なトラックだが、乗降しやすく、視界が広く、小回りも効く大型トラックには国内にも一定のニーズがありそう。最新モデルではADAS機能が充実し、欧州ではバッテリー式EVモデルも登場しており、日本市場での今後の展開に注目だ。
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