多発する左折事故を少しでも減らしたい! 悲惨な事故を知るベテラントラック運転手からの提言

プロドライバーとしての当然のスキル 

 万が一、接触事故が起こると大概はドライバーが悪くなります。本来、強い・弱いとか「立場の違い」ではなく、お互いに「気遣う気持ち」があれば、それだけでも事故は抑制できることでしょう。

 ただ、そうも行かないのが事実で、急いでいる場合は、おのずと周りに注意を払うことができなくなります。いくらクルマの性能が良くなっても、ドライバーはしっかり「自分の目」で確認しないといけないでしょう。それがプロドライバーに求められる「当然のスキル」だと思います。

 交差点に入る前からミニバイクや自転車を注視し、先に行かせる場合は交差点の手前から徐行します。ミニバイクや自転車を追い抜いた場合は、隙間を作らないように、左側にトラックを寄せて交差点へ侵入するのも大切でしょう。

 それでも、隙間を縫って前に行こうとするミニバイクは必ずいます。その場合は、ムリせず先に行かせます。

 あと、最近は見かけなくなりましたが、運送会社によっては交差点への進入時、一時停止を義務付けしていますね。あれは事故が発生した場合、歩行者や自転車の「怪我のリスク」の軽減など、一定の効果は見られるのでしょうが、私は、交差点へ進入する場合、しっかり徐行すれば問題ないと思います。

 何故かというと、トラックが交差点で左折時に一旦停止をすると、自転車や歩行者は「先に行かしてくれるもの」と考えて動き出し、ドライバーは、歩行者や自転車が止まっている時間が長くなると、歩行者側が待ってくれるものと思い、お互いに動き出しヒヤッとする「サンキュー事故」が起こる可能性があります。

 ドライバーは交差点への進入の流れを止めると、改めて「再確認」が必要となります。人通りの多い繁華街ではいいのかも知れませんが(それでもサンキュー事故が心配です)、明らかに「安全確認ができる交差点」は、しっかり徐行していれば、「運転業務の一連の流れ」として捉えることができ、安全かつスムーズに行くと思います。

ある路線運輸会社で起きた左折巻き込み事故の記憶

 左折事故は、巻き込まれた側が死亡事故になる可能性が高い事故です。ここからは、以前、私が出入りしていた路線運輸会社で起こったことを伝えようと思います。

 真冬の暗くなった夕方、大型トラックが歩道を跨ぎ、左折で路線会社の構内へと入場するときに、自転車に乗った女子児童を巻き込む事故が起きました。大型トラックのタイヤに巻き込まれた女の子が死亡する痛ましい事故です。被害者は、路線会社に併設された社宅に住んでいる社員の娘さんでした。

 事故が発生したのは真冬の夕方で、暗くなるのも早く、ドライバーからは「左折入場時に歩行者が見えにくい」との指摘が以前からありました。

 人の通りは少なく、社宅に住む子供たちには「充分に気をつけ、できれば通行しないように」と会社がアナウンスしていました。社宅に住んでいる方々も、危ないから気をつけていたはずです。

 しかし、死亡事故が起きてしまいました。年末の繁忙期で、誰しも疲れていたのは間違いありませんが、ことの重大さを考えれば、なんの言い訳にもなりません。加害者のドライバーは、「疲れが溜まっていて、ついつい寝過ごしてしまい、積み込み先の路線会社の点呼に遅れそうなので、確認不足で左折してしまった」と涙を流しながら供述していたようです。

時間に追われ、急いでるときこそ事故は起きやすい
時間に追われ、急いでるときこそ事故は起きやすい

 積み込み先の点呼なんて電話一本入れれば済む話なのですが、それをするのが煩わしかったのでしょう。私も寝過ごしたことがあり、「接車時間に遅れる」と連絡を入れると、担当者から無愛想な声で「早く来て、番線(トラックをバックで着けて積み込みする場所のこと)の荷物積んでよ!」なんて、言われたものです。

 気持ちはわかります。しかし、何度も言いますが、死亡事故を起こしていい理由にはなりません。

 事故を起こしたのは他社のドライバーでしたが、いつも隣りの番線で冗談を言いながら荷台に積み込みをしていました。彼が口ぐせのように言っていたのは「子供にお金がかかるから、しんどいけど長距離運行やめられない!」でした。

 事情はいろいろあれど、死亡事故を起こしたその瞬間から「交通事故の加害者」になってしまいました。

 被害者の女の子は私もよく知っている若手集配ドライバーの娘さんでした。今、考えても悲惨過ぎます。その後、路線会社の入口には常時ガードマンが立ち、誘導するようになりました。

 しかし亡くなった女の子は戻ってきません。私にとっても、この出来事はショック過ぎて、「トラック運転手辞めようかなぁ」って、考えた時期でもありました。

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