■グランエース6人乗りは、最上級になれる実力ありだが、使い方次第
そしてグランエースが実際に発売されると、ディーラーオプションのモデリスタなどに、さらに派手なグリルやLED装飾が用意されるだろう。怖い感じに化粧することはいくらでも可能だから、Lサイズミニバンの外観を重視するユーザーにとって、グランエースはアルファード&ヴェルファイアの上級車種になり得る。
またグランエースの6人乗りは、2/3列目のシートがアルファード&ヴェルファイアのエグゼクティブパワーシートに準じた豪華な造りになる。前席も相応に快適だから、6名で乗車した時に全員が満足できる。
その点でアルファード&ヴェルファイアの3列目は、左右に折り畳める方式だから、1/2列目に比べて造りが簡素だ。床と座面の間隔が不足して足を前方へ投げ出す姿勢になり、座面のサポート性もよくない。
アームレストもサイズが小さく、内側だけに装着される。国産ミニバンの3列目では快適な部類に入るが、グランエースの6人乗りに比べると大幅に見劣りする。
従って5~6名で乗車して、長距離を移動する機会の多いユーザーにとって、グランエースはアルファード&ヴェルファイアよりも上級だ。
逆に4名で乗車して、自転車のような大きな荷物を積みたい場合は、グランエースは上級とはいえない。6人乗りの3列目は、エグゼクティブパワーシートと同様で、格納して荷室に変更できないためだ。グランエースの積載性は大幅に下がる。
同じグランエースでも、4列シートの8人乗りなら4列目の座面を持ち上げて前方へ寄せられるが、このタイプはマイクロバス的な仕様だから各シートの足元空間が狭い。ビジネス向けで一般ユーザーには不向きだ。従って4名以内で乗車する用途では、グランエースはムダが生じて荷室の使い勝手も悪い。
このほか自宅周辺の道路や車庫が狭い、ハイブリッドが欲しい(グランエースのエンジンはクリーンディーゼルターボのみ)といったニーズにも、グランエースは対応できない。
従ってグランエースの購買層は限られるが、そのために上級と受け取られる効果も生じるだろう。アルファード&ヴェルファイアは人気車だから、街中で頻繁に見かけるが、グランエースは大量に売られるクルマではなく一種の希少性も伴う。
グランエースがアルファード&ヴェルファイアの上級グレードと同等の価格、つまり600万円前後で販売されたら「とにかく大きくて目立つクルマに乗りたい」ユーザーには割安かも知れない。「大きくて派手なクルマはエライッ!」という考え方は、昭和から平成を通じて、令和の時代にも受け継がれているようだ。
ちなみにこの価値観の基礎を築いたのは、カローラ/コロナ/マークII/クラウンというヒエラルキーを確立させたトヨタであった。ミニバン時代の今は、シエンタ/ヴォクシー&ノア/アルファード&ヴェルファイア/グランエースとなるわけだ。
カテゴリーがセダンからミニバンに移っただけで、本質はほとんど変わっていない。トヨタは相変わらず、ユーザーの本音を突いた商売が巧みだ。
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