海外のデザイナーを起用した日本車のなかで、燦然と輝く一台の名車がある。1991年9月に発売され、1997年12月に販売終了となった、稀代のスペシャルティクーペ、スバルアルシオーネSVXである。
アルシオーネSVXの特徴はなんといってもイタルデザインを主宰していたジョルジェット・ジウジアーロによるデザインだろう。
航空機のキャノピーを思わせるキャビンやルーフ部分まで回り込む複雑な三次元曲面ガラスが採用されたサイドウインドウなど、アルシオーネSVXのデザインは今もなお世界的に高く評価されている。
そこで、アルシオーネSVXは今どのくらいで販売されているのか? 昨今の旧車ブームの影響を受けて高騰しているのだろうか? モータージャーナリストの萩原文博氏が解説する。
文/萩原文博
写真/スバル
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ジウジアーロデザインの美しいデザインが特徴
巨匠ジョルジェット・ジウジアーロがデザインした国産車を挙げなさい! と言われたら、自分は初代トヨタアリスト、初代いすゞピアッツァ、初代いすゞ117クーペ、旧型ダイハツハイゼットカーゴ(アトレーワゴン)、そしてスバルアルシオーネSVXの5台が思い浮かぶ。
今回はそのなかから、個人的にはジウジアーロが手がけた国産車最高の傑作と思っているスバルアルシオーネSVXを取り上げたいと思う。
アルシオーネSVXは1991年9月より販売開始された本格的グランドツアラーだ。1989年1月に発売し、スバルの新時代の扉を開いた初代レガシィの2Lセダンとしての基本的な性能、機能、品質を、国際的な水準まで高めつつ、スバルらしさの原点である「走り」に主眼をおいた“ドライバーズカー”として開発された。
その走りの質においては、走る歓びを最大限に味わえるポテンシャルを持ち、ロングドライブをより安全・快適に走ることができる資質を備えた”グランドツアラー”を具現化した。
アルシオーネSVXは、レガシィで表現された”ドライバーズカー”、そして”グランドツアラー”というスバルのアイデンティティである4WDを核とした安全技術を受け継ぎつつ、その思想と技術をさらに熟成・発展させたスポーティクーペとして表現したモデルなのだ。
車名のアルシオーネはスバルのエンブレムにもなっている六連星のうちの一番大きな星である“アルキオネ”にちなんでいることから、当時このアルシオーネSVXがスバルのフラッグシップモデルという位置付けだった。
「大人の豊かなパーソナルライフを演出する、本格グランドツアラー」というコンセプトで開発されたアルシオーネSVXは十分なゆとりを確保できる3ナンバー専用ボディとして開発された。
巨匠ジウジアーロが手がけた外観デザインは、当初のオリジナルデザインではハーフリトラクタブルヘッドライトだったが、市販型では固定式ヘッドライトに改められた。
やはりなんといってもジェット戦闘機のキャノピーを彷彿させる、個性的かつスポーティなミッドフレームウィンドウ付きラウンドキャノピールックが特徴。広いガラスエリアを採用し、サイドウィンドウはその一部のみが開閉可能という個性なデザインだ。
ロー&ワイドを貴重としたスポーティなフォルムはCd値0.29という優れた空力性能を実現し、静かで快適な高速クルージングが味わえる。
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