クルマ好きのあいだでよく聞く「好みのクルマ」のカテゴリーに「じゃじゃ馬」がある。自動車界では、性能を完全に制御することが難しく、ともすればコントロールを外れてしまうほどのパワーを持つクルマを指す。
安全性能、具体的には車両制御技術とタイヤの性能が向上し、なにより操縦安定性が最優先される現代のクルマではほとんど見なくなったが、かつて日本車には多くの「じゃじゃ馬」としか言いようがないクルマが存在した。
本稿ではそんなクルマの生まれた理由と詳しい特徴、それに「そうした危うさを持ちながらも魅力的だった6車種」をピックアップしてもらった。
自動車メーカー自体も試行錯誤していた時代に生み出された、ある種の「奇跡」であるこれらのクルマ、今ならまだ中古車市場で探すことも可能。ご興味ある方はぜひ探してみよう。
※在庫状況もあり、「特選中古車情報」は必ずしも原稿に登場した車種・グレードとは限りません。ご了承くださ
文:片岡英明
■「じゃじゃ馬」の誕生と変遷と消滅
1960年代半ば、日本に高速道路が開通し、サーキットを舞台に日本グランプリも開催された。モータリゼーションの波が押し寄せ、高性能で速いクルマが夢を与えるようになる。
レースで優秀な成績を収めれば、売れることも分かるようになった。そこでファミリーカーに高性能エンジンを積む「羊の皮を被った狼」が誕生した。
その最初の作品がスカイライン1500の鼻先(フロントノーズ)を延ばし、2Lの直列4気筒エンジンを積んだスカイラインGT、後のGT-Bを用意した。直線番長で、コーナーでは暴れるが、それをねじ伏せて走るのが楽しかった。
排ガス対策が一段落した1980年代になると、ターボやDOHCエンジンが主役になる。足はよくなったが、当時はパワーステアリングを採用しているクルマは少なかったし、ノンスリップデフも一部のクルマに限定されていた。
とくにコンパクトカーと軽自動車はFF方式を好んだから、パワフルなエンジンを積んでいるホットハッチにはじゃじゃ馬が多くなる。
1980年代半ばにはミッドシップのスポーツカーも登場する。
重量バランスがいいため冴えたコーナリングを見せるが、限界域の挙動はデリケートだ。ある程度のテクニックがないと破綻し、スピンした。
だが90年代になるとシャシーもサスペンションも、そしてブレーキも劇的によくなってくる。安全性能を高めるためにボディなどの剛性を高め、ABSやトラコンといった安全装備、フルタイム4WDなども増えた。
こうして、危険だがスリリングな挙動を持ち、危うさを楽しめる「じゃじゃ馬グルマ」は消滅していった。
しかし今ならギリギリ中古車でそういうクルマたちを買うことができる。今でももちろん危険度は変わらない。買って乗るなら充分気をつけていただきたい。
そのうえで、日本自動車界がまだまだ未成熟だった頃の、未成熟ゆえの熱さ、楽しさをぜひ体験してほしい。
■マツダ オートザムAZ-1
軽自動車軽自動車のなかで史上最強のじゃじゃ馬だったのが、ガルウイングドアを採用したマツダのミッドシップスポーツクーペ、AZ-1だ。
スズキ製のF6A型直列3気筒DOHCインタークーラーターボは64ps/8.7kgmを発生、これに5速MTを組み合わせた。サスペンションは4輪ともストラットだ。
「未体験ハンドリングマシン」のキャッチフレーズから分かるように、安定性より気持ちよく向きが変わることを重視している。
自動車なんだから安定性って何より大事だと思うのだが、そういう価値観ばかりではないところが当時の魅力だった。実際、めちゃくちゃ楽しいクルマだった。
クイックなステアリングレシオと相まって軽快感は群を抜く。が、タイヤは4輪とも155/65R13だから、レーシングカーのようにスイートスポットは狭く、攻めすぎるとリスクも大きい。ビギナーには危険と隣り合わせのクルマだった。
◆オートザムAZ-1の特選中古車情報はこちら。
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