1989年1月、初代レガシィに初めて搭載されたEJ20エンジン。スバルは2019年秋、EJ20エンジンの生産を終了すると発表するとともに、EJ20エンジンを積んだフィナーレを飾る特別仕様車「WRX STI EJ20 ファイナルエディション」を、2019年10月24日から11月10日まで予約を受け付け、限定555台を販売すると発表したが、即完売した。
そして、2019年12月23日18時をもって、EJ20エンジンを搭載したカタログモデルのWRX STIの注文受け付けを終了したのはご存じのとおり。
さて、約30年にわたってスバルの主力エンジンだったEJ20エンジン。今回、EJ20エンジンを組み立てている、桐生工業(スバルより受託生産を受けた関連企業)の本社工場を潜入し、名機EJ20エンジンはどのようにして組み立てられているのか、徹底取材した!
文/ベストカー編集部
写真/西尾タクト
初出/ベストカー2020年2月26日号
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約30年にわたって生産されたスバルの名機EJ20が終了
すでに在庫販売のみとなっているWRX STIだが、今回そのEJ20ターボエンジンを組み立てている桐生工業(スバルより受託生産を受けた関連企業)を訪れた。
桐生工業では1日に90〜100台のエンジンを生産している。今回見学できたのはEJ20ターボのほか、北米向けWRX STIのEJ25ターボを生産するライン。
組み立て工程には直接作業を行う26名、機動や検査、生産技術、生産管理に11名の管理者を除いた計37名であたっている。
メインラインの流れは、まずエンジン内部の重要部品となるシリンダーブロックの洗浄から始まり、クランクシャフトとコンロッドの組みつけ、ピストンやシリンダーヘッド、フライホイール、カバークラッチの組みつけ作業が行われる。
■シリンダーブロック洗浄
さらに、ウォーターポンプにカムシャフト、バルブクリアランス、スパークプラグなどでエンジン組み立ての半分くらいが終了。ここからは個別の手作業に移る。
特にEJ系で作業が難しい点は、ピストンとロッドの連結がほかのエンジンと異なるため、ピストンピンを挿入するためにシリンダーブロックにサービスホール穴加工を施し、その穴でピストンピン穴〜ロッド小端穴を位置合わせしてピストンピンを挿入しなければならない点だそうだ。
■クランクシャフトとブロックの合わせ作業
この組み立て工程のなかで作業が難しい点は、ズバリ補機類組みつけでインテークマニホールドから燃料系、水系、油系の配管引き回しまでの一環作業をひとりでこなさなければならないことだそう。
ひとり1台のエンジンにつき、40分でこなし、6人の作業者であたっているという。さらにエンジン性能チェックを行うファイアリングテストも難題で、すべてのエンジンは組みつけ後にテストベンチ2基により実施される。
■ピストンの組み込み作業
ちなみにエンジン1基を組み立てるのに26人で作業して約3時間かかるそうだ。そのエンジン2台を載せる専用パレットで陸送される。
取材時はたまたまEJ20ファイナルエディション用のエンジンもラインに流れていて、貴重な限定車用エンジンの組みつけを見学することができた。
■フライホイール、カバークラッチの組みつけ作業
工場内には女性の作業員も確認でき、みなキビキビと自分の作業を次々とこなしていたのが印象的だった。EJ20ターボの品質は彼らの真摯な仕事ぶりが支えているのだと改めて実感した次第だ。
間もなくEJ20エンジンが生産終了となるが、2019年10月末時点での生産台数は約245万台にもおよぶという。最後に組み立て工場を見学できたのは感慨もひとしおだった。
■個別による作業工程
■エンジンオイル注入と性能チェック工程
■EJエンジンの組み立て完成!
■EJ20とEJエンジンはどう違う?
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