2017年9月発売のホンダ N-BOXは絶好調だ。先代型も人気車だったが、フルモデルチェンジで売れ行きを一気に伸ばし、9月から直近の11月までは軽だけでなく、プリウスをも凌ぎ国内販売のNo.1になった。
いっぽう、2014年度販売でN-BOXを上回り、販売No.1となったダイハツ タントは、ここ最近N-BOXの牙城を崩せず、この2台に大きく水を空けられているスズキ スペーシアは新型を投入。
ダイハツ、スズキはホンダが築いた軽NO.1の牙城を崩せるのか?
文:渡辺陽一郎/写真:編集部、SUZUKI、DAIHATSU
新型スペーシアでスズキは打倒ホンダなるか!?
「N-BOXの牙城にライバルメーカーのダイハツやスズキが喰い込めるのか」という話には、2つの見方が成り立つ。
まずは、ダイハツ タント、スズキ スペーシアというライバル車が、N-BOXを相手にどのように勝負できるのか。
2つ目はホンダ、ダイハツ、スズキの軽自動車販売合戦。この3メーカー対決で見ると、依然としてダイハツとスズキの届け出台数が多く、ホンダは3位にとどまる。
ひとつめのN-BOXとライバル車の対決では、2017年12月14日にフルモデルチェンジを受けたスペーシアが注目される。
過去を振り返ると、スズキは2011年に発売された先代N-BOXがヒットしたのを受けて、2013年に従来のスズキパレットを、初代(先代)スペーシアにフルモデルチェンジ。
ピラー(柱)の角度を立てるなど、軽快感と広さの両立をめざしたが、期待されたほど売れ行きを伸ばせなかった。そこで新型スペーシアは、ボディサイズをN-BOXと同等にしている。
つまり、新型スペーシアはN-BOXに近づいたが、外観デザインのモチーフをスーツケースにすることで、標準ボディの見栄えはかなり異なる。
ほぼ同じサイズでN-BOXとの違いを表現するという意味では、きわめて高度かつ優秀なデザインだ。
機能は勝ててもN-BOXのブランド力は絶大
しかし、スペーシアカスタムは、フロントマスクがN-BOXに似てしまった。これがタントを含めてN-BOXのライバル車をデザインする時の難しさだ。違いを表現するとカスタムは成り立たない。
このスペーシアのデザインから導き出される結論は「N-BOXのライバル車は、標準ボディでは対抗できるが、エアロパーツを装着したカスタムでは負ける」ということだ。
そして、売れ行きではカスタムの比率も高いので、総じて販売面では太刀打ちできない。これはデザインの優劣だが、車の売れ行きは、おおむねその市場評価で決まるのだ。
とはいえ機能面では、N-BOXの牙城はさほど強靱ではない。現行N-BOXは助手席スーパースライドシートをセールスポイントにするが、販売店によると「ホンダが考えるほどお客様のニーズは高くない」という。
装着比率は初期受注で30%程度だから、今後はさらに下がる。助手席スーパースライドシートは、牙城の守りにはならない。
そうなると残りの差を付ける機能は、前輪駆動の軽乗用車で最大級の室内空間、緊急自動ブレーキ関連の先進安全装備、3ナンバー車に匹敵する車間距離を自動制御可能なクルーズコントロールなどの運転支援機能になる。
このうち、室内空間は外観とセットになって、先代N-BOXと同じく牙城の守りを構成する。緊急自動ブレーキの機能は、ライバルメーカーの努力次第だ。
スペーシアも後退時の誤発進機能に加え、さらに性能を高めた後退時ブレーキサポートを用意する。車間距離を自動制御できるクルーズコントロールも、スイフトなどには採用されるから軽自動車の装着も可能だ。
このように考えると機能で上まわることは可能だろう。問題はN-BOXが先代型と現行型で定着させたデザインと、「広くて便利な軽自動車ならN-BOX」という一種のブランド力だ。
この浸透度は強く、今の状態が続くとスペーシアは「スズキのN-BOX」、タントは「ダイハツのN-BOX」と呼ばれかねない。
機能ではN-BOXの牙城を崩せても、認知度に基づくブランド力と売れ行きでは難しい(※タントは2018年10月に新型登場予定)。
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