これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、ハイルーフ軽自動車の先駆、ミニカトッポを取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/三菱
■全高を1700mm超に設定した背の高い軽自動車の先駆け
昨今の軽自動車クラスではスーパーハイトワゴンが好調に売れている。軽自動車は日本独自の車両規格に則って作られているためボディサイズに制限があり、普通車に比べて全長が短く車内が窮屈に感じてしまう。そのため頭上にゆとりがあって解放感を得やすい全高の高いスーパーハイトワゴンに人気が集中するわけだ。
そんな背の高い軽自動車の先駆けとなったのが、今回クローズアップする三菱ミニカトッポと言われている。
ミニカトッポは、1990年3月に新しいスタイルの軽自動車として発売された。1990年といえば軽自動車の規格が改正された年だが、ミニカトッポはそれに則って設計・開発されている。
スタイリングはフロントまわりをベースとなったミニカのままとしているが、フロントガラスからその後部は軽自動車規格いっぱいの寸法を持つキャビンが組み合わされている。
ボディサイズは全長が3255mmで全幅1395mm、ホイールベース2265mmという寸法で、当時の主流だったセダンタイプのモデルと大差はない。しかし全高はミニカより280mmも高い1745mmに設定され、まさに車名の由来でもある「背高のっぽ」を体現していた。
一見するとアンバランスに感じるスタイルは、まだスーパーハイトワゴンが存在していなかった当時はじつにユニークなクルマに見えたはずだ。
【画像ギャラリー】アイディア次第で小さいクルマも使えるようになることを証明した、ミニカトッポの写真をもっと見る!(4枚)画像ギャラリー■「車内で小さな子どもが立てる」の元祖
全高が1745mmもあれば室内には広大なスペースが確保される。軽自動車なので全長と全幅には制限が設けられているので横方向の広さには限りがあるものの、上下方向の余裕は普通車を遥かに凌ぎ、室内高の寸法は1460mmとなっていた。
今どきのスーパーハイルーフタイプのなかには、広い室内空間のアピールポイントとして「車内で子どもが立って着替えられる」ことを挙げる車種は多いが、ミニカトッポは30年以上も前にそれを実現している。ゆえにスーパーハイトワゴンの元祖と言われるわけだ。
背高のっぽなフォルムのため左右のドアは自ずと大きくなる。こうした作りが乗降性のよさをもたらしているが、2ドアボディのミニカトッポは助手席側のドアを運転席側よりも大きくすることで、よりスムーズに乗り降りできるよう配慮されていた。
当然ながら背の高いボディは、個性をアピールするものではない。全高がもたらした広大な室内スペースには、優れた実用性を実現するためのアイテムがふんだんに盛り込まれている。
リアシートは左右分割可倒式でリクライニング機構が設けられ、用途に応じたアレンジに対応。天井部分には荷物を固定するフックなどが装着できるユーティリティレールや小物入れが備わり、後部荷室には12V電源のソケットまで用意されていた。
オプションパーツに関しても実用性向上が狙えるものが揃っており、自身の用途に応じてどんな仕様にカスタムしようかと考える楽しさもあった。
こうしたユーザーの趣向を考慮したことも売れた要因だが、小さいながらも実用性に長けたクルマとして好評を博しただけでなく、ユニークなスタイルにさらに個性をプラスした「Q坊」「カラボス」「ビッグトイ」「アミスタ」「グッピー」「ライラ」といった特別仕様車を発売したことも販売に拍車をかけた。
【画像ギャラリー】アイディア次第で小さいクルマも使えるようになることを証明した、ミニカトッポの写真をもっと見る!(4枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方トッポは生花店のイメージがあるなぁ。絶対的積載量では軽トラやワンボックスバンに敵わないけど、胡蝶蘭やゴールドクレストのような高さのある鉢植えは、軽セダンだと頭がつかえる。