日本車なのに、日本市場を大事していないクルマが増えてきた。アメリカ市場をメインに開発された日本車をなぜ日本で乗らなければいけないのか? とお怒りの人も多いはずだ。
自動車メーカーの言い分としては、世界のマーケットからしたら今や数倍、いや数十倍売れるアメリカ市場や欧州市場をメインターゲットに開発するのが至極当然だ、と言うかもしれない。
たしかにグローバルでクルマを開発しているところも多く、その言い分もわからなくはない。でもやっぱり、日本車メーカーが日本市場をメインに考えて作った、日本を大事にするクルマに乗りたいと思いませんか?
目下バカ売れ中のアメリカ市場メインで開発されたRAV4を見ていると、そんな風に思わないという人もいるかもしれないが……。
ということで、日本市場を大事にするクルマと大事にしないクルマを挙げ、そのクルマが作られた背景を含めてそのクルマの魅力をモータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説する。
文/岩尾信哉
写真/ベストカーWEB編集部
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海外市場と日本市場の規模の違い
国内専売の軽自動車は置いておくとして、数ある日本車において、日本市場で大事に扱われているか否かをチェックする今回の企画。まず確認しておきたいのは、日本市場と海外市場それぞれの規模の違いだ。
たとえば、トヨタ(含むレクサス)について、2019年4~9月期における世界市場での販売台数を例に挙げると、世界累計495万808台のうち、北米では143万5725台(米国は123万5586台と単独で約25%を占める)、欧州では53万8697台となり、アジア地域は149万8607台(中国は83万3331台)を記録した。
では本拠地である日本はといえば82万510台と国別では3位といっても、世界のマーケットでの割合は約17%にすぎないのが現実なのだ。
スバルに至っては2019年3月期の世界販売台数100万台のうち、アメリカは66万台、日本は13万5000台。実に悲しいことだが、これを見ればアメリカ市場メインのクルマになってしまうのは仕方がない。
「大事にする」「大事にしない」の判断のヒントのひとつは、新型車として世界初披露となるワールドプレミアを実施した場所(地域)を見てみることだ。たとえば、新型RAV4は昨年3月末のニューヨークモーターショーがその舞台になったことから、販売のメインターゲットとなる地域が北米市場であることが想像できる。
次に見ておきたいのは、ラインナップのなかで、世界的な販売戦略を俯瞰した上でどのような役割を果たしているかだ。いうまでもなく「日本国内専売車」は大事にしていると捉えるべきで、トヨタの大御所モデルであるクラウンが最もわかりやすい例だろう。
これに加わるのが、各メーカーが力を入れている5ナンバーミニバンとLクラスミニバンたち。トヨタではヴォクシー/ノア/エスクァイア、アルファード/ヴェルファイア。日産ではセレナとエルグランド、ホンダではステップワゴンなど、善くも悪くも世界市場から独立して販売されている。
直近では2019年11月5日に発表・発売されたダイハツロッキー(トヨタライズ)は、国内専用車種として販売される。ちなみに、トヨタ/ダイハツ系のモデルの中には、東アジア/オセアニア地域で販売されている例もある。
世界各国の市場で広く販売されている「世界戦略車」といえば、プリウスとカローラ、シビック、フィット(欧州名:ジャズ)などが頭に浮かぶ。
最近フルモデルチェンジが発表されたヴィッツ改めヤリス(米国市場ではマツダ2、旧デミオのOE供給車が販売されている)は日本市場では2020年2月発売予定とされ、世界中で販売しているからといって日本市場を軽視しているわけではない。
いっぽう、トヨタや日産とは違って販売車種が限られているスバルやマツダ、スズキなどは、市場ごとにモデルを仕立てて役割分担させるような物理的・資金的な余裕はないので、日本市場で大事にしている一部モデルを除いて、ラインナップのほとんどが世界戦略車になる。
最後に忘れてはいけない大事にする要素として、日本という世界的に見ればかなり特殊な地域で販売するにあたって、現在でもいわゆる「5ナンバーサイズ」を維持しているモデルであることもいまだも意味を失っていないことを指摘しておきたい。
基本的なインフラはそう簡単に大きくは変わらないのだから、使い勝手などへの配慮した“決めごと”として見逃せないことは言うまでもない。
こうした要素を考慮して、以下、筆者および編集部の独断と偏見により、日本市場を大事にしているクルマと日本市場をそれほど大事にしていないクルマを挙げてみた。
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