2008年の初代クラリティからと、意外と長いホンダのFCEVの歴史だが、2024年7月に登場したホンダ CR-V e:FCEVはひと味違う。大容量バッテリーを備え、プラグインで充電も可能という、BEVとFCEVのいいトコ取り自動車なのだ!!
※本稿は2024年11月のものです
文:鈴木直也/写真:中里慎一郎、ホンダ
初出:『ベストカー』2024年12月26日号
■プラグインで充電もできる二刀流燃料電池車
ホンダの電動化戦略といえば、先日レポートした“ゼロ”が本命だが、「コッチも忘れてもらっちゃ困るぜ」と控えているのが水素で走る燃料電池車、FCEVだ。
もともとホンダはトヨタ以上にFCEVに熱心なメーカーで、2008年に世界初の専用ボディ量産FCEVとして初代クラリティをデビューさせている。初代ミライに先んじること6年。当時としてはかなり意欲的な取り組みだった。
で、その最新作がCR-V e:FCEVなのだが、最も重要なポイントは、今回から心臓部のFCスタックがGMとの共同開発となり、レイアウトから何からすべて新しくなったこと。
スタックの最高出力は92.2kWとクラリティよりやや落ちているが、最重要テーマのコストダウンでは従来比3分の1を達成とのこと。試乗会場に展示されていた内部部品(セパレータ)などを見ても、大きな技術進歩が見て取れた。
もうひとつ見逃せないのは、容量17kWhのリチウムイオン電池を搭載する“プラグイン”FCEVとなったこと。
大容量バッテリーを備えるメリットは航続距離延伸だけではなく、FCスタックを高効率ポイントに維持するためのパワーアシストや、水素タンクが空になっても次のステーションまでたどり着ける安心感をもたらしていること。
【画像ギャラリー】充電可能な「プラグインFCEV」登場!! 大容量バッテリー装備で水素補給問題を解決するホンダ CR-V e:FCEV(28枚)画像ギャラリー■高い完成度を実感する乗り心地と操縦性
走りっぷりについては、「バッテリーEVです」と言われたら100%信じちゃうくらい違和感のないドライバビリティで、静かさと乗り心地のよさはピカイチ。車重はほぼジャスト2トンだが、その重量を感じさせることなく心地よく操ることができた。
以前のクラリティでは、アクセルに反応するエアポンプ音など、内燃機関っぽい挙動が面白かったが、新型のFCスタックは完全に黒子に徹していてその存在を感じ取ることはできなかった。
唯一の欠点は、水素タンクで荷室容量が侵食されていることだが、そこに目をつぶれば同クラスのバッテリーEVと比較しても独自の魅力あり。バッテリーEVより補助金が手厚いところも魅力ですね。
●ホンダ CR-V e:FCEVここがポイント
・容量17kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載することで、プラグイン充電でEV走行約60kmが可能
・新開発燃料電池スタックは小型軽量化、さらに発電効率を高めた
・水素タンク2本を搭載するが、荷室スペースを効率よく使用可能
・外部給電機能を標準装備
●ホンダ CR-V e:FCEV 主要諸元
・全長×全幅×全高:4805×1865×1690mm
・ホイールベース:2700mm
・車両重量:2010kg
・最低地上高:170mm
・最小回転半径:5.5m
・燃料電池スタック最高出力:92.2kW(125ps)
・モーター最高出力:130kW(177ps)
・モーター最大トルク:310Nm(31.6kgm)
・燃料タンク容量:109L(前方53L、後方56L)
・公称使用圧力:70MPa
・燃料消費率:129km/kg
・一充填走行距離:約621km
・一充電走行距離:約61km
・サスペンション:F=ストラット、R=マルチリンク
・タイヤサイズ:235/60R18
・価格:809万4900円(リースのみ)
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