11月27日、トヨタのモータースポーツイベントでヤリスWRCがついに国内初公開された。イベント内では走行も行うなど、2017年1月のWRC復帰に向けて、ますます注目度も上がってきている。
さて、2017年のWRCは既報のとおり2016年王者のフォルクスワーゲン(VW)が撤退し、勢力図の激変が予想されている。チャンピオンチームの撤退によって、トヨタにはどんな影響がもたらされるのか?
WRC番組の解説も務める国沢光宏氏が、そのポイントを解説する。
文:国沢光宏、Webベストカー編集部
ベストカー2016年12月26日号
最強VWはモチベーション低下を嫌い撤退発表を引き延ばし
ヨーロッパのニュースを見ると、VWのWRC撤退はアウディのWEC撤退時よりはるかに大きな扱いである。WRCとWECでは観客動員数が圧倒的に違うので当然か。VWとしても大きな決断だったと思う。
とはいえ撤退は今年の早い段階で決めていたことだろう。春あたりから2017年型マシンの開発テストのニュースも流れてこなくなっていた。
発表を延ばした理由は簡単。その時点でチームもドライバーもやる気を失い、残るシーズンを棒に振るためである。VWとしちゃムダ遣いをしたくなかったのだろう。
撤退の要因は一昨年のディーゼル不正問題。巨額の損失を出し、今後もしばらく影響を残すだろう。アメリカ市場の売れ行き回復だって時間がかかること間違いない。新しい経営陣がモータースポーツの費用対効果を認めなかった、ということか。
トヨタWRCはホンダF1の復帰初年より期待できる
VWの撤退に関して、WRCの関係者の反応は案外冷めている感じ。引き留めようという動きも出なかった。「事情はわかりました。お疲れ様でした」って雰囲気。むしろ「VW抜けた穴をトヨタがカバーしてくれてよかった!」。
トヨタのWRC復帰、すばらしいタイミングだと思う。シトロエンやヒュンダイからすれば、シリーズタイトルの可能性も出てきた。
そんなこんなで2017年の勢力図は、シトロエンとヒュンダイのガチ勝負。それにフォード(M-スポーツ)が絡む展開になりそう。
トヨタといえば、修行の年です。開発に時間をかけられなかったこともあり、ポディウム争いより磨き込みでしょう。ただ参戦1年目のホンダF1よりずっと期待していい。終盤に向かい面白い展開になっていく可能性だって大いにあります。
トヨタに好影響。VWの有力ドライバーがトヨタ加入か
もう1つ「どうなる?」と大きな話題になっているのはドライバー。VWに所属していた優勝を狙えるトップクラスドライバーが突如3人もシートを失った。こんなこと初めてである!
ただヒュンダイは3人のドライバーを決めてしまっており万事休す。フォードも予算なく、高額なギャランティなど払えない。シトロエンといえば、やはり空きシートは1つ。そして、トヨタはシートを2つ決めていない。
何と! トヨタにトップクラスのドライバー2人を獲得できるチャンスが巡ってきたのである。セバスチャン・オジェ(2013-2016年WRCチャンピオン)のようなドライバーを引っ張ってくるとなれば、相当の移籍金を覚悟しなければならない。
ヤリ=マティ・ラトバラやアンドレアス・ミケルセンだって高額です。今なら移籍金なし! すでにシトロエンはフランス人のオジェを何としても欲しいと動き始めている。となるとトヨタはラトバラとミケルセンか? 最高ですね!
(国沢光宏)
コメント
コメントの使い方