1990年代。サーキットを駆け抜けるレーシングマシンのサウンドは凄まじく、耳を塞ぎたくなるほどだった。時代が進み、環境を意識するためにエンジンはダウンサイジング化。これに伴い、レーシングカーのサウンドも静かになった傾向にある。だが、市販車でも爆音を奏でレース専用仕様まで作られた1台に、活躍できる機会がようやく巡ってきたのだ!!
文:ベストカーWeb編集部 鈴村朋己/写真:ASTON MARTIN
【画像ギャラリー】ヴァルキリーの車高低すぎ!? このルックスでV12サウンドとか泣けちゃう!!(14枚)画像ギャラリー一度は宝の持ち腐れ状態
空力の鬼才と呼ばれる男。その名はエイドリアン・ニューウェイ。彼の正体は、世界最高峰のモータースポーツカテゴリー「F1」において、多くのチャンピオンマシンを手掛けた生みの親である。
そのニューウェイがF1マシン以外で初めてプロデュースした処女作が、2021年に限定販売されたアストンマーティン・ヴァルキリーである。
はじまりは2016年。当時レッドブル・レーシングをスポンサードしていたアストンマーティンと、レッドブル・レーシングの共同プロジェクトとしてスタートした。開発は長期間にわたって行われ、公道走行可能なハイパーカーとして登場した。
また公道仕様のヴァルキリーをベースに、一層パフォーマンスを強化したヴァルキリーAMR PROの開発も同時に進められていた。こちらはサーキット走行専用のモデルで、当初はル・マン24時間レースの総合優勝を目指したモデルだった。
だが、ル・マン24時間レースをシリーズにもしているFIA WECのハイパーカークラスのレギュレーションが、突如変更になったこと。
加えて、アストンマーティンの経営陣も変わったことで、ル・マン24時間レースではなくF1への参戦にソースを集中させる方針を採用。結果、ル・マン24時間レースの参戦計画は白紙となり、ヴァルキリーAMR PROは日の目を見る機会を失ってしまった。
【画像ギャラリー】ヴァルキリーの車高低すぎ!? このルックスでV12サウンドとか泣けちゃう!!(14枚)画像ギャラリー魅惑のV12サウンドで多くのファンを虜に
ところが、FIA WECの最高峰カテゴリーにあたるハイパーカークラスは、フェラーリやポルシェ、BMWにキャデラック、そしてトヨタと、世界中の自動車メーカーがしのぎを削るカテゴリーへと急成長を遂げた。
前述したように、FIA WECの年間スケジュールにはル・マン24時間レースも含まれている。世界中が注目するカテゴリーへの参戦は、ブランドをアピールできるフィールドとしても絶好の機会だ。
これらの状況を見据えて、2023年にヴァルキリーAMR PROをベースにしたマシンで、2025年からFIA WECと、北米のスポーツカーシリーズであるIMSAに参戦することを発表。一度は破談したプロジェクトが、再始動したのである。
ヴァルキリーの公式デビュー戦は2月28日に開催されるWECカタールラウンド。その後、伝統のル・マン24時間レースや富士スピードウェイで実施されるの日本ラウンドでも姿を現す予定。日本でも6.5L V12サウンドが雄たけびをあげるのだ。
ライバルたちが継続参戦していることから、初年度となる2025年シーズンは順調にいかない可能性が高いだろう。けれど、エンジンサウンドが年々静かになっている傾向にあるなか、大排気量エンジンで挑戦するアストンマーティンの姿勢にはグッとくるものがある。
サーキットに響き渡る甲高いサウンド。その心地よい音色が聞けるなんて、嬉し涙が溢れてしまう。鼓膜にツンとくるわずかな痛み、その瞬間にゾワっと立つ鳥肌。身体に感覚を残すテクニック。ヴァルキリーよ、ついにポテンシャルを発揮するときがやってきたぞ。
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