大なり小なり発生する交通事故。人身事故ばかりでなく、道路脇に突っ込み、道路設備を破壊するような単独事故も発生する。
たいていのドライバーは任意保険に加入しており、対物賠償で支払うのであまり問題になることは少ないかもしれないが、 その任意保険に入っていない場合、目も当てられない高額請求が来ることがある。
今回は、そんな破壊すると高額請求が来る道路設備を紹介していきたいと思う。事故が増える年末年始に向けて、ドライバーとしての心構えの問題も提起する。
文/高根英幸
写真/JNCAP、Adobe Stock、編集部
【画像ギャラリー】交通事故で破損した場合の設備修理費をおさらいしよう!
■交通事故件数自体は意外と減少していない!
交通事故の悲惨さは言うまでもないことだが、日本国内での交通事故による死亡者は昨年3532人と昭和23年の記録以来最小となり、3年連続で年間4000人を切った。これをまだ多いと感じるのは、平成生まれの若年ドライバーではないだろうか。何しろ昭和45年には交通事故死者は1万6000人、負傷者は98万人を超えていたのだ。
シートベルトの装着も義務付けられておらず、エアバッグもなかった時代である。クルマのボディも華奢で、衝突事故となるとキャビンまで激しく変形し、居住スペースは潰れてしまったからである。
だが昨今の保安基準強化により、クルマの安全性は各段に高まった。衝撃吸収ボディは、万が一の衝突時にもクラッシャブルゾーンが潰れて衝撃を吸収することで、強固なキャビンが乗員を保護する。
加えて、前方や両サイドに敷き詰められるように装備されたエアバッグが、シートベルトで拘束された乗員を衝撃からも守ってくれる。それほどまでに安全性が高まったからこその、交通事故死者の激減ぶりなのだ。
何故なら、交通事故そのものは残念なことにそれほど減ってはいない。衝突被害軽減ブレーキの導入により、年間およそ43万件にまでは減ってきたが、これはやはりピーク時の95万件から比べれば、ようやく半分を切ったあたり。ちなみに事故件数自体は昭和45年は72万件程度、ピークはなんと平成16年なのだ。交通事故自体は昭和50年代に一度減少しているものの、そこからジワジワと上昇を続け平成の後半でようやく減少に転じているのである。
つまり、クルマの安全性が高まったことで悲惨な交通事故は減っているが、交通事故自体はまだまだ多い。物損事故だけでも、年間の損害額は1兆7958億円に上る(平成24年、損害保険協会調べ)のだ。
ところが、最近はクルマのオーナーのなかでも、任意で加入する自動車保険に加入していないオーナーも存在するらしい。「自分に責任のない交通事故なら、賠償は発生しない。だから、自分さえ気をつけていれば大丈夫」なんて、決めてかかっているのかも知れないが、もしそうだとすればクルマを運転する者としては、まったく危険で浅はか過ぎる。
自動車保険料を惜しんで加入しないのであれば、クルマを運転する権利はないと思った方がいい。それくらい、道路を走るクルマを運転するドライバーの責任は重いのである。
■自分の運転に非はなくても、責任を問われるケースも
実際の交通事故では、片方のドライバーだけが一方的に責任を問われることは少ない。例えば出会い頭の衝突事故などの場合、自分が一時停止を求められる道路側ではなかったとしても、クルマを運転している以上、責任は求められる。
自分は「もらい事故」だと思っていても、自分の過失割合分は自分と相手のクルマの修理代を負担することになる(実際には過失相殺で自分の過失分を賠償額から差し引かれる)のだ。そうなったら、車両保険に加入していなければ、相殺された不足分の修理代は自分で用意しなければならなくなる。
それに単独での交通事故、自損事故はわかっているだけで年間1万2000件(平成29年)を超えている。ガードレールなどの防護柵を損傷しているのは約1600件、電柱は約900件、標識は200件強も損傷を受けているのだ。
降雪時や路面凍結時などは、慎重に運転していても、スリップしてガードレールに衝突、なんて軽い事故は珍しくない。しかもスピードが出ていなくても、ほぼノーブレーキ状態で衝突することになるから、衝突時の衝撃は意外と大きく、クルマのバンパーやフェンダー、ガードレールが損傷することも多いのだ。
「自損事故はわかっているだけで」、と書いているのは、そうした自損事故でも自走可能な状態でケガもない場合、そのまま走り去ってしまうケースもあるからだ。
ところが自損事故にも報告義務があり、もし道路設備を損傷させて、そのまま去ってしまうと道交法違反となり3カ月以下の懲役、または5万円以下の罰金が科せられる可能性が出てくる。誰も見ていないから、とガードレールを傷つけたのに立ち去ってしまうと、どこかの防犯カメラで特定されて、あとで警察官が尋ねてくる可能性もある。
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