毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はホンダ アヴァンシア(1999-2003)をご紹介します。
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文:伊達軍曹/写真:HONDA
■「乗る人すべてに快適な室内」を目指した、新世代のステーションワゴン
21世紀を目前に控えた1999年、ホンダが「次世代高級サルーンの新たな形」として提案したステーションワゴン(ホンダいわく「4ドアクラブデッキ」)だったが、そのコンセプトが今ひとつ世間に伝わらず、2003年には早くも生産終了となった悲運の意欲作。それがホンダ アヴァンシアです。
プラットフォームはUSアコードと共用で、ボディサイズは全長4700mm×全幅1790mm×全高1500mm。ホイールベースはUSアコードがベースだけあって2765mmと、なかなかのロングなものでした。
搭載エンジンは2.3L直4と3.0L V6の2種類で、後者はUSアコードに搭載されたものと同型。
そしてトランスミッションは2.3Lに組み合わされた電子制御4速ATのほか、V6には新開発の電子制御5速ATが採用されました。
しかしそれよりも、アヴァンシアの特徴は「室内空間の作り」にあったと言えるでしょう。
この車の室内空間のテーマは「4席平等」。
社長さん専用車みたいな車種は別として、通常の車の室内空間はどちらかと言えば前席が優先され、後席は「前席と比べればやや窮屈で、快適性も劣る」となるのが一般的です。
しかしアヴァンシアは「4席平等」ですから、前席が広々としているだけでなく後席にも前席並みの、いわゆるリムジンのような広さと快適性が与えられました。
具体的には、アヴァンシアの後席は長身の成人でも余裕で足が組めるほどの広さがあり、前後席間のウォークスルーも可能。
そしてエアコン吹き出し口やリクライニング&スライド機構なども、前席だけでなく後席にもしっかり用意されました。
また上質なファブリックとレザー、そしてウッドパーツの組み合わせ方もハイセンスで、まさに「これぞ従来型“おやじセダン”を超えた、次世代の上級サルーンか!」と感じさせるものは確かにありました。
しかしホンダ アヴァンシアは今ひとつ売れませんでした。
月販目標台数を超えた月は1回もなく、2001年9月のマイナーチェンジ時には、苦肉の策としてスポーティ路線に移行するべく「ヌーベルバーグ」という謎のローダウングレードを追加したのですが、これもスベりました。
そして2003年7月には生産終了となり、在庫車を処理した段階で販売終了となったのです。約4年間の「生涯」における累計販売台数は、2万4000台にも届かなかったそうです。
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