ホンダ流贅沢ワゴン!! アヴァンシアが短命に終わった訳 【偉大な生産終了車】

■アヴァンシアが追求した「贅沢」さ

 なかなかの意欲作だったホンダ アヴァンシアが約4年という短命で終わってしまった事実。

 そこにはさまざまな理由があるのでしょうが、筆者が思うのは、「欧州型の贅沢」を日本で普及させるのはなかなか難しい……ということです。

「アーチフォルムキャビン」と呼ばれたデザインによって、ゆとりの居住空間と個性的な外観スタイルを両立。また狭い駐車スペースでも開口部を大きくとれる、特徴的なテールゲート形状の「トップライトウイングハッチ」を採用していた

 アヴァンシアはスーパートハイト軽ワゴンのようにギリギリまでスペース効率を求めた車ではなく、高額サルーンのような高級感を売りにした車でもありませんでした。

 アヴァンシアが定義した「贅沢」とは、「まずまず快適な空間のなかで、特に何をするでもなくのんびり過ごすこと」だったように思えます。

 そしてそれは「欧州人たちのヴァカンス」にどこか似ています。

 筆者を含めた日本人は、休暇というとどうしても「せっかくだからあの博物館も見に行かなくちゃ! あと、あのレストランにも行ってみたいし!」という感じで予定を詰め込んでしまい、結果として「休暇を取ったはずなのに、逆に疲れました」となりがちです。

温もりを感じさせる ファブリック素材をインストルメントパネルや各ピラーにも採用。ドア内側には大型の木目調ドアガーニッシュを採用するなど、くつろぎ感が演出された

 しかし欧州人の休暇は、それとは真逆である場合がほとんどです。

 日本人と同様、風光明媚な場所まで家族で出かけはするのですが、彼らはそこで特に何をするでもなく、本を読んだり家族で散歩したりしています。

 筆者は欧州人ではないので正味のところはわかりませんが、おそらく彼らは「せわしなくすべてを追い求めるのではなく、快適な空間のなかでゆったりとした時間を過ごすことこそが贅沢である」と考えているのでしょう。

 アヴァンシアの「贅沢」は、それに近い感じでした。

 3L版の新車時価格は約270万円とまあまあ高額だった割に高級車っぽさは無いのですが、その分、すべてのパッセンジャーが真にリラックスできる空間を、ホンダは確かに用意しました。

 しかしそのコンセプトはいまいち刺さりませんでした。

 当時の多くの日本人ユーザーは、「この金額を出すなら、もうちょっと豪華でデカいほうが……」と思い、「どうせお金出すなら7人乗れるほうがおトクよね?」と感じ、さらには「ところで、もうちょっと背が高くならないかしら?」みたいに思ったのです。

 アヴァンシアの挑戦は不発に終わりました。

 しかしまたいつかアヴァンシア的な車が現れ、そしてセールス的にも成功し、この国の「すべてを追い求める貧乏くささ」に終止符を打ってくれることを、筆者はひそかに期待しています。

■ホンダ アヴァンシア 主要諸元
・全長×全幅×全高:4700mm×1790mm×1500mm
・ホイールベース:2765mm
・車重:1600kg
・エンジン:V型6気筒SOHC、2997cc 
・最高出力:215ps/5800rpm
・最大トルク:27.7kg-m/5000rpm
・燃費:9.8km/L(10・15モード)
・価格:269万5000円(99年式V)

【画像ギャラリー】バブルの失意が続く中で生まれた次世代ワゴン!! ホンダ アヴァンシアをギャラリーでチェック!!!

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