「6人以上乗れるクルマ」といえば、大抵の場合3列シートのミニバンをまずは思い浮かべる。
ヴォクシー/ノア/エスクァイア、セレナ、ステップワゴンの「5ナンバーサイズミニバン」に始まり、ヴェルファイア/アルファード、エルグランドといったフルサイズミニバンまで、ニーズに合わせて多様に選択肢が揃う。日本はミニバン大国だ。
でも、「正直ミニバンじゃ物足りないかな…」という人だっているはず。そこで着目したのが3列シートのSUV。現行で8車存在する「国産3列シートSUV」のうち、ミニバンには叶わないまでも日常的に3列シートを使わ“ない”ならアリなモデルはどれか?
自動車評論家の渡辺陽一郎氏にジャッジを仰ぐ。
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※本稿は2020年1月のものです
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年2月26日号
■3列シートのSUVに魅力を感じるユーザーは少なくない!
最近はSUVの人気が高い。悪路走破力を高める大径タイヤなどを備えて外観がカッコよく、ボディの基本形状はワゴンだから、居住性や積載性も優れている。デザイン性と実用性を両立させて高い人気を得た。そのためにミドルサイズ以上のSUVには、3列のシートを装着した車種も多く、乗車定員は6~8名だ。
3列シート車ではミニバンが一般的だが、SUVとはシャシーと床面構造が異なる。
スライドドアを備えた背の高いミニバンは、燃料タンクをカバーできる位置まで床を持ち上げ、平らに仕上げた。したがって3列目に座っても、膝が大きく持ち上がる窮屈な姿勢になりにくい。
しかしSUVは、この床面構造を採用していない。3列目の床は、燃料タンクのために1/2列目よりも高く設定される。ミニバンの3列目に比べると、床と座面の間隔が乏しく、膝の持ち上がった窮屈な姿勢になりやすい。
この室内設計は、全高の数値にもあらわれている。スライドドアを備えたミニバンは、大半の全高が1800mmを超える。床を持ち上げてフラットに仕上げたから、天井も高くなった。
その点でSUVでは、全高が1800mmを超える車種は珍しい。SUVの3列目シートは、ミニバンと異なり、基本的には緊急用の位置付けだ。
それでも3列シートのSUVに魅力を感じるユーザーは少なくない。例えば1年に数回だけ、短い距離を多人数で移動するために、3列目まで快適なミニバンを買うのはもったいない。
特にミニバンがユーザーの好みに合わない場合、外観がカッコよくて走りも楽しいSUVの3列シート車は、ちょうどいい選択肢になる。
■3列シートSUVのランキングは!?
そこでSUVに装着された「3列目シートの使える度」をランキングすると、1位に挙げられるのはCX-8だ。
●1位 マツダ CX-8
身長170cmの大人6名が乗車した場合、2列目に座る乗員の膝先空間を握りコブシ2つ分に調節すると、3列目には握りコブシ1つ半の余裕が生じる。
SUVだから、床と座面の間隔が不足して膝が持ち上がるが、極端に窮屈な姿勢にはならない。シートの座り心地も柔軟で、SUVの3列目としては快適だ。
片道1時間程度の距離なら、大人が多人数で移動できる。ミニバンの3列目に当てはめると、フリードやシエンタなどのコンパクトミニバンと同水準になる。
CX-8は、マツダがプレマシーなどミニバンの販売を終えた代わりに投入されたから、3列目の居住性にも配慮した。
2位はCR-Vだ。
●2位 ホンダ CR-V
CX-8と同じ測り方で2列目の膝先空間を握りコブシ2つ分に調節すると、3列目に大人が座るのは難しい。
そこで2列目の膝先空間を握りコブシ1つ分まで詰める。見栄えは窮屈だが、2列目に座る乗員の足が1列目の下側にスッポリと収まり、意外に狭く感じない。
この状態で3列目の膝先空間は、握りコブシの半分程度だ。最小限度だが、CR-Vの3列目は、足元の床を少し深く掘り込んだ。
この効果で乗員の足が2列目の下側に収まりやすい。大人6名が乗車して、片道45分程度であれば不満なく移動できる。
ミニバンの3列目に当てはめると、フリードやシエンタよりは少し狭いが、フラットな床面構造を採用しないジェイドやプリウスαに比べると快適だ。
3位はランドクルーザーとレクサスLX570になる。
●3位 トヨタ ランドクルーザー&レクサスLX570
ボディが大柄なわりに、車内はあまり広くない。2列目でも床と座面の間隔が不足して、膝が持ち上がる。
3列目はこの傾向がさらに強く、足元空間はCR-Vよりも少し広いが、着座姿勢が窮屈だ。多人数で乗車するなら片道30分程度までだろう。
ミニバンに当てはめると、プリウスαやジェイドよりは快適に座れる。
4位はランドクルーザープラド。
●4位 トヨタ ランドクルーザープラド
着座姿勢はランドクルーザーと同様、膝が大きく持ち上がる。
足元空間はランドクルーザーよりも少し狭いが、2列目の膝先を握りコブシ1つ分まで詰めると、3列目にも同程度の余裕ができる。
ミニバンでいえば、プリウスαと同程度でジェイドよりは広い(ジェイドの3列目は頭上が極端に狭い)。
5位はレクサスRX450hLだ。
●5位 レクサスRX450hL
全長はCX-8よりも100mm長いが、床と座面の間隔が乏しく、膝の大きく持ち上がる座り方になる。足元空間も狭い。多人数で乗車するなら、片道20分程度までだ。
6位はアウトランダー。
●6位 三菱 アウトランダー
2列目の膝先を握りコブシ1つ分に調節すると、3列目には若干の隙間ができる。床と座面の間隔も不足している。
7位はエクストレイル。
●7位 日産 エクストレイル
2列目の膝先が握りコブシ1つ分でも、3列目に座ると膝が2列目の背面に触れてしまう。アウトランダーとエクストレイルに大人6名が乗車するなら、片道15分程度の移動になる。
■ちなみに……日本で買える輸入車3列シートのSUVと価格
・プジョー5008(7人乗)…421万7000〜481万8000円
・BMW X5(7人乗)…938万〜1354万円
・ベンツGLS(7人乗り)…1261万〜2014万円
・アウディ Q7(7人乗り)…827万〜955万円
・ランドローバー レンジローバースポーツ(7人乗り)…1272万〜1723万円
・ランドローバー ディスカバリー(7人乗り)…877万〜1023万円
・ランドローバー ディスカバリースポーツ(7人乗り)…450万〜660万円
・ボルボ XC90(7人乗り)…894万〜1359万円
・キャデラック エスカレード(7人・8人乗り)…1397万円
・テスラ モデルX(7人乗り)…1110万〜1348万円
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