1980年代、日本ではモータースポーツ人気とカスタム文化が花開いた。しかしながら、高価なスポーツカーは、若者にとって遠い存在。そこへ現れたホンダ「CR-X」は、軽量・コンパクトながら「走り」を本気で楽しめる一台として大ヒットした。小さなボディに大きな夢を詰め込み、時代を象徴する存在だったCR-Xについて振り返ろう。
文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:HONDA
【画像ギャラリー】小さなボディに大きな夢!1980年代を駆け抜けたホンダ「CR-X」を写真で振り返る(16枚)画像ギャラリー軽くてコンパクト、個性的なスタイリングで若者を釘付けにした初代CR-X
自動車の多様化が進み、モータースポーツ人気も高まっていた1980年代。日本国内ではグループAのツーリングカーレースやさまざまなワンメイクレースが盛んに行われ、それに憧れた若者たちは「自分の手で扱えるスポーツカー」を求めた。
同時に、クルマを好きにカスタムして、ファッションや音楽と同じように楽しみむ文化も広がってきていた。当時の若者にとって、クルマは単なる移動手段ではなく、レースに参戦したり、好みにカスタムしたりして楽しむ、いわば「自己表現の道具」だった。
しかし、高価なスポーツカーやGTカーは若者にとって手が届きにくい存在。また、当時は排ガス規制の強化や燃費への関心の高まりから、コンパクトで経済的なクルマも求められた。そんななか登場したのが、ホンダの初代「CR-X」だ。新素材による軽量化や個性的なスタイリングが当時の若者に大いに支持され、大ヒットモデルとなった。
VTECが搭載されたことでさらに魅力ある「ハンドリングマシン」に
1983年に登場した初代「CR-X」は、前席2人後席2人の2+2パッケージング。小さな後席は実用性こそ限定的だったが、そのぶん軽量・コンパクトであり、燃費性能も当時の水準としては優秀で、経済性とスポーツ性を高い次元で両立していた。カスタマイズの自由度も高く、サスペンションや吸排気系を交換することで、走行性能のさらなる強化が可能となっており、こうした「化ける素材感」も、若者に支持された要因だった。
ただ、CR-Xの真骨頂は、2代目CR-Xに1989年に追加されたVTECエンジンを搭載した上級グレード「SiR」だろう。CR-X「SiR」の車両本体価格は(1989年当時)衝撃の155万円。
ホンダがF1活動を通じて培った高性能エンジン技術をフィードバックして開発されたVTEC機構は、可変バルブタイミングによって、高回転でバルブのリフト量とタイミングを変化することで一気にパワーが増すフィーリングと、実用域となる低回転での扱いやすさや低燃費を両立した、理想的なエンジンだ。
CR-Xの「SiR」に搭載されたVTECも、排気量1.6リッター程のエンジンでありながら、高回転域で力強く吹け上がる特性で、まさにバイクのようなエンジンフィーリングだった。短いホイールベースゆえにピーキーなハンドリング傾向であったが、ジムカーナなどでは大きな威力を発揮し、「絶対的な速さ」という意味では難しさがあったものの、玄人好みのハンドリングマシンとして、大きな魅力を放っていた。



















コメント
コメントの使い方北海道でラリーにサイバーCR-Xで参戦。LSDとロールバーその他レギュレーション改造で、意外に走りました。何より車重の軽さがスポーツカーとして素質と認識してます。
あまりラリーやダートラに参戦って聞かないのも、納得はしてますけどネ。
強烈な個性を持ったデルソルやCR−Zを買った者、あるいはシビックやインテグラタイプRを買ったけどコレジャナイと感じた者が、ホンダに石を投げなさい。
安くて軽くて良い車だったホンダの、代表的な車種ですね。
今は良い車も作っているのですが、前二つが真逆になってしまって残念です。戻ってきてほしい、魂のホンダ車。
1980年代をリアルに経験した者にとってはV-TECよりもZCだと思いますよ。排ガス規制で途絶えたDOHCをトヨタが4AGで復活させ、それに真っ向から挑んだホンダ意地の結晶がZC。私もシビックSi買いました。エンジンの出来としてはV-TECは確かにスゴイですけど、クルマ暗黒の時代に興奮と感動をくれたZCには敵いませんよ。