新型フィットは「ホンダのジンクス」を破れるのか?

新型フィットは「ホンダのジンクス」を破れるのか?

 革新的な初代、正常進化の2代目のヒットで、ホンダ車が直面する人気車ゆえのモデルチェンジの難しさ。通算4代目となる新型フィットは「ホンダのジンクス」打破なるか!?

 ホンダ車の変遷を振り返ると、販売台数や市場評価の浮き沈みが激しい。

 現在のラインナップを見ると、大半の車種で初代モデルは販売面で成功している。初代が失敗したら後は続かないから、ある程度売れているのは当然だが、ホンダの初代モデルには販売ランキングの上位に入った車種も多い。

 それゆえ、ホンダ車のモデルチェンジは難しい。過去を振り返ればオデッセイやステップワゴンも同様の課題に直面している。

 2月14日に発売された通算4代目となる新型フィットは、このジンクスを破れるのか!?

文:渡辺陽一郎
写真:ベストカー編集部、HONDA

【画像ギャラリー】新型は通算4代目!! フィット&オデッセイ/ステップワゴンの全歴代モデルをチェック!!!


オデッセイも3代目で失速!! 人気ホンダ車の転機は!?

3代目オデッセイ(2003-2008)/2代目以前と変わり、全高を低く抑えたスポーティミニバン路線に

 初代モデルを2000年以前に投入したホンダ車には、ワゴン風ミニバンの「オデッセイ」(1994年発売)、ハイルーフミニバンでは最初の前輪駆動車として優れた空間効率をアピールした「ステップワゴン」(1996年)、居住性や荷室が実用的なSUVとして高い人気を得た「CR-V」(1995年)などがある。

 こういった車種の後の発展を見ると、いずれも似通ったパターンのフルモデルチェンジを行っている。

 まず初代モデルが好調に売れると、2代目は初代のデザインや機能を洗練させる。キープコンセプトとか、正常進化と呼ばれるフルモデルチェンジだ。外観の変化は乏しいが、初代の成功体験を活用するため、初代モデルからの乗り替え需要にも恵まれて堅調に売れる。


 問題はこの後で、ホンダは3代目になってデザインを大幅に変えることが多い。「似通ったクルマが3世代も続くと飽きられる」という考え方に加えて、ホンダは一種の社風として大幅に変えるのだ。「変えねばならない」強い意思を感じる。

 この事情もあり、オデッセイの場合、3代目(2003年)は全高を立体駐車場が使いやすい1550mmに抑えた。低重心になってミニバンでは抜群の走行安定性を発揮したが、車内の広々感は乏しく売れ行きは伸び悩んだ。

 オデッセイの登録台数は、初代モデル発売直後の1995年に月平均で1万500台、2代目も2000年に1万台に達したが、3代目は2004年に8200台、2006年は3700台まで下がった。

 4代目オデッセイ(2008年)も3代目と同様の背の低いボディで登場したから、新型になったことも分かりにくく、2009年の登録台数は1か月平均で1500台前後だ。

 不人気が2世代(販売期間は約10年)続くと存在感も薄れる。

 現行型の5代目オデッセイ(2013年)は、エリシオンと統合されてスライドドアを備えるフラットフロア構造のハイルーフミニバンに発展したが、人気を回復できなかった。2014年の登録台数は1か月平均で2700台程度だ。

優れた実用性のステップワゴンも「鬼門」で躓く

3代目ステップワゴン(2005-2009年)/オデッセイ同様、背を低くして居住性と操安性を両立したが……

 ステップワゴンも同様だ。

 初代モデル(1996年)は、シンプルな外観と前輪駆動の採用による広い室内で人気を高め、1997年には月平均で約9200台を登録。

 2代目(2001)も、初代の機能を踏襲しながらシートアレンジや動力性能を向上させて、2002年には約6000台を登録している。

 それが3代目(2005年)は、2006年には月平均で約6500台を登録したものの、翌年は約4600台に下がった。乗り替え需要が豊富な車種なのに、次第に売れ行きを落としている。

 背景には外観のデザインがあった。

3代目ステップワゴンは、プラットフォームを刷新して床を2代目以上に低く抑え、室内高を維持しながら全高は75mm低い1770mmに抑えた。車内の広さは同等だが、乗り降りがしやすくなり、低重心化により走行安定性も向上した。

 そもそもクルマの全高は、必要な最低地上高と室内高が確保されれば、低いほどメリットが多いが、ミニバンになると話が変わる。

 外観を見た時に連想される車内の広々感、存在感が薄れ、機能が優れていても売れ行きを下げてしまう。3代目ステップワゴンはこのパターンで、実用性は高いのに販売は低迷した。

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