物流の「2024年問題」と総称される、トラックドライバーの働き方改革関連法の適用開始から1年以上が経過しました。果して物流の現場の状況はどうなっているのでしょう?
長距離ドライバーのひろしさんに、長距離輸送の現場が「どう変わった!? どう変わらなかった!?」を聞いてみました。
文/長距離ドライバーひろしさん、写真/フルロード編集部
*2025年6月発行トラックマガジン「フルロード」第57号
改革なのに改悪? 本末転倒の事態も……
去年の4月に施行され世の中を騒がせた「働き方改革」。あれから約1年以上経ちましたが、運送業界に変化はあったのでしょうか? 現役長距離ランナーであり、はたまた日本の大多数を占める中小企業に勤務する僕の視点から、リアルな現場の意見を述べたいと思います。
そもそも「運転手の負担を軽減し日本の物流を安定させましょう」というのが働き方改革の発端だと思いますが、「残業時間削減」や「拘束時間の短縮」によって仕事量が減り、当然その分給料も減る。身体の負担は減り、プライベートの時間が増えたとしても給料が減ったのでは本末転倒ではないでしょうか。
荷主との運賃交渉とか仕事の効率化とかいうのは簡単ですが、現実に運賃を上げればすべて価格に跳ね返ってくるわけです。それを最終的に担うのは消費者で、物価の上昇に繋がってくるわけです。
で、「物流コストの増大」を大義名分にして物の値段が上がりましたが、本当に運賃に還元されているならば運転手の給料が上がってなければ変でしょう。実際のところ給料は去年から下がっていますからね。
下請けシステムが横行する業界ですから、そもそもこのシステムを改革しない限り、運送業界は良くなることはないですよね。
長距離ドライバーのペースを乱す拘束時間の規制
長距離運転手の立場からは、やはり1日の拘束時間の規制が最大の問題かと思います。地場と長距離で基準が違うし、とにかく細かくてわかりにくい。
長距離だと24時間以内に9時間の休息を取らないといけないのですが、例えば朝6時スタートして9時間の休息を取るとすれば、最大に走れても15時間しか運行できない計算になります。
これに4時間につき30分の休暇、通称「430」と呼ばれるものもあり、積み込みや荷降ろしの作業時間も入ってくると1日に運行できる時間がさらに減ってきます。
長距離運転手っていうのは自分のペースや道路状況を見ながら運行するんですが、430のおかげで運行ペースは乱れるし、下手すると渋滞に巻き込まれたり、お客さんのとこまで後10分なのに30分止まらないといけないなど、無茶苦茶な決まりです。
マラソン選手に「10km走ったら10分休憩して下さい」ってルールを設けてるようなもんなんですよ。変でしょう。ペース配分を自分の体調や調子、レース展開によって調整しているわけですからね、運送の仕事もそれと同じなんですよ。
9時間の休息についてもどこに停められますか? トラック駐車場に停めてホテルかなんかに泊まれるんですか。その料金も運賃に含んでもらえるんですか。
長距離トラック運転手はトラックで過ごすのも仕事の一部と思っているので苦にならない人が大半だと思うのですが、最低9時間停まらないといけない、となれば高速のSAやPAが同じような時間に激混みするのは少し考えればわかりそうなもんです。
ニュースなどでは東京インターの渋滞はETC深夜割引待ちのトラックのせいだと報道していますが、本当にそれだけが原因なのでしょうか。全国各地のSAやPAも取材して来て下さいよ。新東名、東名、名神、山陽道、九州道、夕方過ぎたら朝まで停める場所なんかありませんから……。
9時間の休息のために仕方なくSAやPAに停まっているんです。なのにですよ、某高速道路の垂幕には「長時間駐車しなくてよい運行計画を立てましょう」だって!? どこで休息取ればよいのか、八方塞がりじゃないですか。

