快適なツーリングを楽しむのに最適なバイクといえば、やっぱりツアラー系モデル。とくに、最近のモデルでは、さまざまな電子制御システムなどで「電脳化」も進んでおり、長距離ツーリングでも疲れにくく、より便利で安全な走りを堪能できるモデルが目白押しです。
ここでは、そんな今どきのツアラーモデルの中から、最新&注目の国産車5機種をピックアップし、主な特徴や魅力などを紹介しましょう。
ヤマハ・トレーサー9GT+ Y-AMT
ヤマハ製大型スポーツツアラーのフラッグシップが「トレーサー9GT+」。その2025年モデルでは、電子制御シフト機構「Y-AMT」を採用したことで、車名を「トレーサー9GT+ Y-AMT」に変更。ほかにも、さまざまな先進機能が盛り込まれている注目モデルです。
従来型のトレーサー9GT+は、888cc・3気筒エンジンを搭載する「トレーサー9GT」に、先行車を追従走行する「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」など、先進の運転支援システムを追加した上級バージョンです。
ヤマハ車で初のミリ波レーダーを搭載したモデルで、ACCのほかにも、前方の車などと衝突する危険がある場合にブレーキ力をアシストする「レーダー連携UBS(ユニファイドブレーキシステム)」も採用。さらに、シーンに応じ減衰力を自動で最適化する電子制御サスペンション、スマホと繋ぐことでアプリを画面に表示できる7インチ高輝度TFTメーターなど、数々の高機能な装備を搭載しています。
そして、さらなる進化を遂げた2025年モデルでは、障害物や他車両などを検知する車体前方の「ミリ波レーダー」に加え、新たに車体後方にもレーダーを追加。後方から接近してくる車両を検知しミラー内に表示する「BSD(ブラインド・スポット・ディテクション)」などを新採用しています。
加えて、前述の通り、Y-AMTを新搭載。これは、クラッチレバーやシフトペダルを廃し、ハンドルに装備したシフトレバーでの変速操作を可能とする新開発の自動変速トランスミッションです。クラッチやシフトペダルの操作が不要になることで、ライダーは体重移動やスロットル開閉、ブレーキングなど、ほかの操作に集中できるメリットを生みます。
Y-AMTの主な機能は、パドルシフトで手動変速できるMTモードと、フルオートで変速するATモードの両方を備えること。MTモードでは、左ハンドルにあるシーソー式のシフトレバーで変速操作を行い、いわば4輪車のセミオートマ(セミオートマチック)的な操作で走りを堪能できます。また、ATモードでは、穏やかな走りとなる「D」と、スポーティで俊敏な走行が可能な「D+」といった2モードを用意。シーンなどに応じ、好みの特性を選択できるようになっていることも特徴です。
なお、トレーサー9GT+ Y-AMTでは、ATモードでACCを作動させている時に、定速走行中のギア選択のほか、車速の増減によってもY-AMTが自動的な変速を実施。これにより、一般的な四輪のオートマチック車と同様に、追従走行中にシフトアップとダウン、もしくはその維持をシステムに託すことができる二輪車世界初の制御も採用しています。
価格(税込み)は198万円。スタンダード車のトレーサー9GTが税込み159万5000円ですから、上級バージョンは38万5000円のアップとなっています。

トレーサー9GT+ Y-AMTには、マトリクスLEDヘッドランプも採用。複数のLo/Hiビーム用LEDとカメラが連携し、照射エリアを自動調整。対向車や先行車を眩惑することを抑制しつつ、そのほかのエリアを明るく照らすことでライダーの夜間走行の負担軽減/安全運転支援に貢献する(写真は欧州仕様車)
カワサキ・ニンジャH2 SX SE
独自のスーパーチャージドエンジンを搭載するカワサキの高性能スポーツツアラー「ニンジャH2 SX SE」も、先進機能が満載です。
航空宇宙などで培った技術を投入した独自のスーパーチャージャーを装備する998cc・水冷並列4気筒エンジンを搭載。NA(自然吸気)エンジンでは味わうことのできない圧倒的な加速力を堪能できるのがこのモデルの魅力です。
しかも、最大出力200PS(ラムエア加圧時210PS)もの大パワーを発揮しながらも、WMTCモード値18.4km/Lという高い燃費性能も両立。大容量19Lの燃料タンクと相まって、ロングツーリングなどに最適な長い航続距離を実現します。
また、充実した先進運転支援システムを採用していることも大きな特徴です。ボッシュ社製「ARAS(アドバンスト・ライダー・アシスタンス・システム)」を搭載し、車体の前後に搭載されたレーダーセンサーが周囲を検知することで、様々な先進安全装備を使うことができます。
たとえば、高速道路などで適切な車間距離を自動で保持しながら前車を設定速度で追従する「ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)」や、先行車と衝突する危険性がある場合にインストゥルメントパネル上部の赤色LEDランプが点滅してライダーに警告する「FCW(フォワードコリジョンワーニング/前方衝突警告)」などを採用。
加えて、ライダーの死角に接近する車両の存在を検知し警告する「BSD(ブラインドスポットディティクション/死角検知)」や、停止時にライダーのブレーキ入力無しでもブレーキ効力を維持する「VHA(ビークルホールドアシスト)」なども装備。幅広いシーンでの運転支援や利便性、快適性などを実現しています。
足まわりでは、独自のセミアクティブ電子制御サスペンション「KECS(カワサキ・エレクトロニック・コントロール・サスペンション)」を装備。路面および走行状況に0.001秒という非常に速い反応速度で適応し、減衰力を最適化することで、幅広いシーンで高い走行安定性を誇ります。
また、ショーワが開発した「スカイフック式EERA(電子制御ライドアジャスト)」テクノロジーも搭載(ロードモードおよびライダーモードのKECSノーマルモード時に作動)。路面の凹凸に応じてショックアブソーバー内の減衰力を自動調整する機能も持つことで、路面からの衝撃などを最小限にし、タイヤの接地感を高め、コーナリング時に優れた安定性を実現します。
ほかにも、バイクが前方車両のライトや街灯などの明るさを判断し、自動でハイビームとロービームを切り替える「AHB(オートハイビーム)」、車体の傾きに合わせて、自動的に点灯するライトが切り替わる「LEDコーナリングライト」なども採用。夜間走行時の視界確保にも考慮した装備も誇っています。
ボディカラーは「エメラルドブレイズドグリーン×メタリックディアブロブラック」の1色展開。価格(税込み)は312万4000円です。
スズキ・GSX-S1000GX
2024年に登場した「GSX-S1000GX」は、スズキの「GSX-S1000」シリーズに属するクロスオーバーバイクと呼ばれるタイプの大型モデルです。
クロスオーバーバイクとは、スポーツツアラーとアドベンチャーを融合させたモデルのこと。オンロードはもちろん、オフロードでも高い走行性能を持つことで、幅広いフィールドで快適なロングツーリングを楽しめるバイクとして開発されました。
フロントカウルは、走行時に発生する負圧の発生を抑制するレイヤードデザインを採用することで、不快な風の巻き込みを防止。3段階の高さ調整が可能なウインドスクリーンや標準装備のナックルカバーなどと相まって、高い防風効果を発揮します。
搭載する998cc・水冷4サイクル直列4気筒エンジンは、最高出力110kW(150PS)、最大トルク105N・m(10.7kgf・m)を発揮。スポーツライディングに必要な動力性能を持ちつつも、ツーリング性能を向上させる独自の新技術や装備を採用していることが特徴です。
電子制御システムで注目なのは、まず、足まわり。スズキの2輪車としては初採用となった電子制御サスペンション「SAES(スズキ・アドバンスド・エレクトロニック・サスペンション)」を搭載します。これは、ショーワ製EERAをベースに、GSX-S1000GX専用にセッティングを施したもので、速度や路面状況、ブレーキによる車両の姿勢変化に応じて、サスペンションの減衰量やプリロードを自動調整することを可能としています。
また、3つの走行モードから任意のモードを選択し、エンジン制御マップの切替えが可能な「SDMS-α」も採用。天候や、路面状況における様々な状況や、ライダーの好みに応じたモードを選択することでライディングをサポートします。
加えて、電子制御サスのSAESには、このSDMS-αと連携する「SRAS(スズキ・ロード・アダプティブ・スタビライゼーション・システム)」も採用。通常路面を走行する際の応答性を重視した設定と、石畳や凹凸のある路面を走行する際に乗り心地をより滑らかにする設定をシームレスに切り替えることを可能としています。






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