ドイツに本社を置く大手物流会社のDHLが、日本国内における輸送手段として、水素を燃料とした燃料電池トラックの試験導入を開始する。燃料電池に消極的な日本政府は世界情勢との板挟みで複雑なところだろうが、国沢光宏氏の見解は!?
※本稿は2025年9月のものです
文:国沢光宏/写真:DHLサプライチェーン、トヨタ ほか
初出:『ベストカー』2025年10月10日号
外資企業から日本に押し寄せる燃料電池の波
改めて書くまでもなく燃料電池は日本の得意分野である。ヒョンデに追いつかれてきたものの、トヨタとホンダの2社がリードしていると考えていいだろう。
一方、日本政府は燃料電池に対し消極的だったりする。電動キックボードの規制緩和ときたら、あっという間。なのに水素の取扱い規制は10年間“ほぼ”変わっていない。1本100万円する水素充填ホースの使用制限は1000回のまんま。
ホースの償却だけで充填1回1000円ということになる。韓国は2000回なので500円。アメリカは「亀裂が入るまで」としており、4万回程度使えるという。
さらに水素タンクの耐用年数だって15年と厳しい(交換コストは高額)。水素タンクの寿命って余裕で30年くらいあるのに。初代ミライの発売から10年。あと5年すればコンディションのいいミライも廃車にしなければならない。
水素の扱いだって厳しいまんま。先日富士スピードウェイにコマツが燃料電池エスカベータ(パワーショベル)を持ち込んだけれど展示のみ。水素関連の規制により動かすことはできないという。
いや、コマツの開発施設から富士スピードウェイまで運ぶことすら水素を完全に抜くなど、厳格な管理が要求されるそうな。日本の場合、石油と競合するエネルギーは強いブレーキが掛かる。
とはいえ2050年のカーボンニュートラルを考えると、燃料電池は重要なアイテムになる。特に大型トラックのパワーユニットとして有望だ。
電気と違い充填時間は軽油並み。高速道路に水素ステーションさえ作ってやれば、技術的にはすぐにもディーゼルと代替できてしまう。現在トヨタが開発中の『第4世代スタック』はコストも寿命もディーゼルエンジンを凌ぐ目標設定らしい。
さて。国際企業は業務で排出する二酸化炭素を減らさなければならない。ということから運送会社の『DHL』(本社はドイツ)も日本で業務を続けるために、二酸化炭素を排出しないトラックを導入する必要がある。
といっても電気トラックは実用段階にないため、必然的に燃料電池トラックということになる。ここまで読んで「なるほど!」と思ったことだろう。
原油で利益を上げている勢力から大きな支援を受けている政府自民党としちゃ燃料電池の普及にブレーキを掛けたいが、先進国の一員としてDHLの業務妨害はできない。ということでDHLに対し50台の燃料電池トラック導入を渋々認めたということになる。
したがって、今後国内輸送をメインにする運送会社に燃料電池トラックが入ってくるかとなれば微妙だと思う。









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