欧州が2035年にガソリンエンジン車の新車販売を禁止する方針を見直した。その一方、東京都は、2030年までに乗用車、2035年までにバイクのガソリンエンジンの新車販売をゼロにする方針としている。東京都に訊いてみると「現時点で方針を見直す予定はない」との回答! もし販売したらどうなるのか? バイクを電動化するとどれだけ環境への効果があるのか? 様々な疑問を直撃してみた!
文/沼尾宏明
乗用車2030年、バイク2035年以降のガソリン車販売禁止は「見直ししない」との回答
世界的に電動化政策の見直しが始まっている……にも関わらず、東京都はガソリン車の新車販売について「乗用車は2030年までに、バイクは2035年までにゼロにすることを目指す」方針を変えない。そんな驚きの事実が取材で判明した。
―――まず今までの流れをおさらいしておきたい。欧州では、2035年までに自動車が排出するCO2(二酸化炭素)をゼロにするため、ガソリンエンジンやハイブリッドの新車販売を禁止。フル電動のバッテリーEVのみ販売する方針だった。
しかし2025年12月に方針を見直し、CO2排出量を2021年比で9割減とすることでガソリン車、ハイブリッド、水素エンジン車などの販売が継続できるようになった。見直しの背景には、欧州市場でEVの新車販売シェアが16%程度に留まり、想定より普及が遅れている影響がある。
これを受け、東京都の動向に注目が集まった。東京都は、2030年までに乗用車、2035年までにバイクのガソリン車の新車販売をゼロにする方針。東京都で“禁止”するのは純ガソリン車で、電動車をはじめハイブリッド車、水素エンジン車は販売OKだ。
乗用車のゼロエミッション化の目標期限は欧州より厳しい。また、欧州ではバイクを規制しておらず、日本政府も「2030年代半ばまでにガソリンやディーゼルによる内燃機関車の販売禁止を目指す」としているが、バイクは除外している。しかしながら東京都はバイクを含めた完全電動化を独自に推進しようとしているのだ。
※欧州の電動化政策見直しと、東京都の動向の第一報はこちら。
欧州での完全電動化の撤回方針を受け、東京都も計画の見直しを考えているのか? 東京都でモビリティのゼロエミッション化を推進している東京都 環境局 気候変動対策部にコメントを求めたところ、上掲記事の公開時点で回答が得られなかったが、後に「現時点で目標の見直しを行う予定はございません」との回答を得た。欧州での方針見直しの件については「報道にて把握いたしました」 という。
欧州の動向は、今後の東京都ゼロエミッションの計画に関して検討材料にすべきと考えるが……? この意見に関しては「今後も社会情勢の変化を注視しつつ、ゼロエミッションの実現に向けた実効性ある取組を推進してまいります」 との回答だった。
バイクをEV化した場合の効果を都で把握していない……!
二輪は四輪のように大型のバッテリーを搭載できないため、航続距離が短い。また、現在の技術ではバッテリーが重いため、重量増による影響を受けやすいバイクは性能の悪化が顕著。四輪と同じような電動化は困難だし、クルマと同様に充電スタンドの問題もある。また、バイクをハイブリッド化した場合、効果は薄いわりに値段だけは高額化してしまう(詳細は前掲記事 に詳しい)。
こうした背景から、世界的にバイクの電動化はクルマより時期尚早という見方が大勢。欧州でも電動化政策に関してバイクを適用外としている。その一方、なぜ東京都ではバイクも対象としているのだろうか? 都の回答は次のとおり。
「東京都は2050年ゼロエミッション東京の実現に向け、CO2排出量の約2割を占める運輸部門の脱炭素化を進めるため、ZEV(筆者注:ゼロエミッションビークルの略)の導入や都の率先行動等を通じ、乗用車やバス、トラック、バイク等の様々なモビリティのゼロエミ化を推進しています。
都は、車両や専用充電器の購入費、バッテリーシェアリングサービスの基本料金の補助等の実施、機運醸成とともに、国やメーカー等とも連携し、バイクのゼロエミッション化をけん引しております」
“CO2排出量の約2割を占める運輸部門”をとにかく全て電動化することでゼロにしたい意向なのだろう。それにしてもバイクを電動化した場合の効果はどれほどあるのか。まず、都内を実際に走行しているガソリン四輪車、ガソリン二輪車の台数、比率といったデータを尋ねてみると「都内交通量に関するデータは、民間データを購入しているため、都からの提供はできかねます」 という。
では二輪車を全てEV化した場合、どれほどCO2が削減できるのだろうか? このデータに関しても「持ち合わせておりません」 との回答だった。
―――つまり“CO2排出量の約2割を占める運輸部門”というデータはあるものの、ガソリンエンジンのバイクがEVになったとしても、どれぐらい環境に対して効果があるのか都では把握していないのだ。
都内を走っているガソリンエンジンのバイクは、クルマに対して圧倒的少数派なのは間違いない。それを電動化したところで、環境に与える影響は非常に少ないと考えられる。にも関わらず、ガソリンエンジンバイクの新車販売を禁止し、メーカーは高いコストをかけて電動モデルの開発を行う。結果、現時点でガソリンバイクより実用性が低く、高額なEVを補助金でサポートしてユーザーに買わせる……。そんな事態が到来してしまうのではないか。
東京都としては例外なく乗り物をEV化したいのだろうが、実態を理解せず二輪も四輪も一緒くたにしてしまう姿勢に疑問を抱かざるをえない。

バイク向けに共通バッテリーのシェアリングサービスとして、使用済みバッテリーを充電済みと交換できる「Gachaco(ガチャコ)」。ただし現時点で都内に42か所しか普及していない。ちなみに都内のガソリンスタンドは数が減少したが、800か所程度と言われる。
ゼロエミビークル普及促進事業の予算は2026年で約182億円!
先の回答に戻るが、「国やメーカー等とも連携し、バイクのゼロエミッション化をけん引しております」とあった。これは具体的にどんな連携をしているのだろうか?
都は「国の補助事業と併用可能な購入補助の実施や国産EV白バイ初公開セレモニーの実施等機運醸成の取組などを行っています」 と回答。
東京都のEV購入補助は全国トップクラスの手厚さで有名。電動バイクには国の補助金に加え、上限48万円もの補助金が用意されている。その一方、予算も莫大で、令和7年(2025年)のZEV普及促進事業(二輪四輪を含む)では90億9000万円もの予算を計上。令和8年(2026年)では約2倍の181億7900万円を計上している。
なお“国産EV白バイ”とは、Webike+でも既報のとおりホンダWN7の白バイ仕様を指す。これも「2035年までにバイクを100%電動化する」目標の一環。小池都知事は以前から「国産メーカーのモーターサイクル型電動バイクを白バイにしたい」という意向があり、ホンダがその要望に応じた形だ。

2025年12月19日、都庁でホンダの電動スポーツバイク「WN7」の白バイ発表セレモニーを開催。小池都知事とつるの剛士氏が参加した。https://news.webike.net/bikenews/509360/
都の手厚い補助金が電動バイクの普及に一役買っているのは間違いない。しかし電動化によってどれだけCO2が削減できるか効果が不明にも関わらず、巨額の税金を投入しているのだ(国産EV白バイ初公開セレモニーなどEV関連イベントの開催費もその一環だろう)。
電動バイクの新車販売は12%、あと4年で35%、2030年までに「100%」は可能?
では、現時点における電動化の進捗具合はどうなのか。
東京都が2025年5月に発表した「ゼロエミッション東京戦略Beyondカーボンハーフ」によると、2023年度実績で都内の新車販売台数に占める非ガソリン車の割合は乗用車63%、二輪車はわずか12%だ(東京都によると2023年度実績が最新データとのこと)。
同資料によると、2030年度における二輪車の電動化目標は「35%」。2030年まで残り4年だが、2023年度実績の12%から3倍近い上昇が必要だ。何らかの施策はあるのだろうか?
「補助金等により、需要喚起と開発促進を両輪とした普及促進や充電器やバッテリーシェアリングサービスへの支援等でEVバイクの利便性を向上してまいります」との回答だった。つまり現状の施策を維持することで3倍にするということだろうが、これは非常に難しい数字だと思われる。
さらに電動化目標は2030年の35%に対し、2035年度は「100%」と急激に上昇している。この理由について訊ねると「車種ラインナップの多様化等により市場が拡大し、非ガソリン化が加速するものと想定しています」 という。
現在、国産4メーカーの電動バイクはスクーターが4車種(ビジネスバイクも入れると10車種)。モーターサイクルタイプは原付二種のNinja e-1/Z e-1しかない(今後は初の大型モデルとなるWN7が日本にも登場予定)。ハイブリッドはNinja 7 Hybrid/Z7 Hybridの2車種のみだ。あと9年でバイクのラインナップがほぼ電動やハイブリッドになり、新車販売の100%を占めることはほぼ無理ではないだろうか……。

現在、日本で買える国産4メーカーの電動バイクはほぼスクーターのみ。一般向けではヤマハのJOG E(写真)、E-Vino、ホンダのEM1 e:、CUV e:が販売中で、スズキからは現在発売されていない。
期限以降にガソリン車を販売した場合の罰則を訊いてみた
そして、最大の疑問が目標期限(乗用車2030年、バイク2035年)以降に、ガソリン車を新車販売した場合の罰則だ。また、EVのみ販売する店への支援金などが予定されているのだろうか?
都の回答は「具体的な施策については普及状況や技術開発動向等を見極めながら検討してまいります」 という。つまり現時点で罰則などのルールは未定。ただし回答からは、電動バイクが普及せず、技術開発が進まなければ方針が撤回される可能性も窺える。
前述したとおり、現時点で電動バイクは、ガソリン車より実用性と利便性が大きく低下してしまう。にも関わらず、東京都は莫大な税金を投じて、拙速にバイクの電動化を推進している……というのが筆者の印象。理想を掲げることは大事だが、使用実態やユーザーの利便性もぜひ行動計画に組み込んでくれるよう切に要望したい。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/bikenews/514061/
【独自】東京都はガソリンバイク販売禁止の見直し「ナシ」! 罰則は? 効果は? 都に直撃取材してみた【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/514061/514100/


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