2016年4月〜2017年3月の車種別販売台数ランキングで1位を獲得したプリウス。
2017年4月は1位こそC-HRに譲ったもののしっかり2位をキープ。2015年12月のデビューから1年半が経過しても高い人気を持ち続け、いまは世界におけるハイブリッドカーの代名詞として君臨中。
そんなプリウスはなぜ売れ続けているのか? 本当にいい車なのか? 渡辺陽一郎氏が分析してくれた。
文:渡辺陽一郎 写真:平野学
■先代(3代目)が売れまくったので……
プリウスの売れ行きは、見方によって好調とも不調ともいえる。国内販売全体で見れば売れ行きは好調だ。
2016年度(2016年4月から2017年3月)には約23万台を登録して、1か月平均で2万台近くに達した。月別の小型/普通車の販売ランキングを見ても1位か2位に位置する。
しかし先代型に比べると伸び悩んでいる。先代プリウスは2009年に発売され、2010年に約32万台、2011年には約25万台(この年には東日本大震災が発生した)、2012年には約32万台を登録している。
2012年の新車販売台数は2016年度の106%で今よりも多かったが、そこを補正しても先代型の販売は絶好調だった。2010年/2012年は今の139%に達する。逆にいえば現行型は先代型の72%にとどまる。
先代型が爆発的に売れた理由は、いろいろな観点から注目度が高かったためだ。エンジンを2世代前の1.5Lから1.8Lに拡大して動力性能を向上させ、燃費も改善した。
さらに性能/機能/装備と価格のバランスを考えると、2世代前に比べて実質的な値下げを行った。
取り扱いディーラーは、初代がトヨタ店、2代目ではトヨタ/トヨペット店になったが、3代目の先代型はカローラ店とネッツ店も加えて4系列のすべてが扱うようになった。
そのために先代プリウスは、最長で10か月の納期遅延に陥っている。顧客を待たせるのはメーカーとして恥ずかしいことだが、その報道は「行列のできるプリウス」と受け取られ、さらに人気を高めた。
この先代プリウスに比べると、現行型はニュース性が弱い。エンジンは1.8Lで基本的に変わらず、外観は大幅に変更されたが、個性というかアクが強いために賛否両論だ。価格は先代型よりも少し高い。装備の違いなどを補正して、グレードに応じて9〜20万円ほど値上げされた。
そして今では2011年12月に発売されたアクアがコンパクトハイブリッドの定番として認知され、2016年11月に追加されたノートe-POWERも好調に売れている。
先代型の時は「ハイブリッドといえばプリウス」の神通力が通用したが、今は選択肢が増えて注目度が相対的に下がった。
それでも冒頭で述べた通り、プリウスが人気車であることに変わりはない。先代型のような爆発的な売れ行きではないが、販売ランキングの上位に喰い込む。
■低燃費と安全という、ユーザーの嗜好にストライク
この理由として、まず優れた燃費性能が挙げられる。JC08モード燃費は売れ筋のSやAが37.2km/Lだから、後席も相応に快適な3ナンバー車でありながら、コンパクトなアクアの37km/Lを上まわる。
インプレッサなど同サイズのノーマルエンジン車に比べると、数値上は燃料代を半額以下に抑えることが可能だ。
安全装備ではトヨタセーフティセンスPが採用され、ミリ波レーダーと単眼カメラを使うことで、歩行者に対しても緊急自動ブレーキを作動する。作動速度の上限は、車両に対しては時速100km、歩行者についても時速80kmと高い。
さらにプラットフォームが刷新され、先代型の欠点とされた走行安定性と乗り心地の不満を解消した。プリウスの走りが特に優れているわけではないが、違和感なく運転できる。
特に低燃費と安全は今のユーザーが重視する機能なので、プリウスは好調に売れている。
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