スバルの新型BEV「トレイルシーカー」が登場しました。トヨタとの共同開発によるクロスオーバーで、トヨタ版は「bZ4Xツーリング」として展開されるモデルです。最大の見どころは、国産BEVとして最長不倒レベルとされる「航続距離734km(FWD車)」というスペックです。ただ、スバルファンとして気になるのは、その数字以上に「BEVになってもスバルらしい走りが生きているのか」という点ではないでしょうか。トレイルシーカーの中に息づく「スバルらしさ」を整理します。
文:吉川賢一/写真:SUBARU
「アウトバック」の流れが色濃く感じられるトレイルシーカー
スバル「トレイルシーカー」は、同社の電気自動車ラインナップの中核を担うステーションワゴンに近いタイプのBEVです。トヨタとの共同開発車であり、トヨタブランドからは「bZ4Xツーリング」の名称で展開されています。
開発コンセプトに掲げられているのは、「日常でも非日常でも使えるスバルらしいBEV」です。ボディはワゴンとSUVを掛け合わせたようなシルエットで、デザインからは「アウトバック」の流れが色濃く感じられます。実際、欧州市場では「E-OUTBACK」という名称での展開も予定されており、その立ち位置は従来のアウトバックに近い存在といえます。
パワートレーンは、総電力量74.7kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。前輪駆動モデルと前後モーターによるAWDモデルが設定されており、航続距離はWLTCモードでFWDが734km、AWDが690kmと発表されています。2025年10月に発表となったソルテラの改良モデル(FWD車:746km、AWD車:687km、いずれもET-SS)と同程度であり、日産の「アリア」(640km、B9・19インチ)や新型「リーフ」(702km、B7 X)といったライバル陣と比較しても、国産BEVとして最長不倒レベルの航続距離です。
実航続距離は、この8割程度(FWD約590km、AWD約550km)になるとは思われますが、それでも、長距離のグランドツーリングをさほど問題なくこなすことができるでしょう。
クルマとドライバーの一体感を目指した電動AWD
ただ、走りにこだわるスバル車である以上、BEVでもスバルらしい走りは守られているのかは気になるところ。bZ4Xツーリングと基本を共有し、スペック差も決定的ではない中で、それでもあえてスバルを選ぶ理由はどこにあるのか。
スバルはこれまで、ドライバーが意図したとおりに扱える安心感を、どのクルマでも重視してきました。今回の開発陣も、BEVの加速性能や静粛性に可能性を感じつつ、「いかにスバル独自の味を与えるか」を最大のテーマに据えたといいます。
その中核となるのが、電動化によって進化したAWD制御です。モーターによる緻密なトルク管理により、前後輪のトルク配分を瞬時に最適化。挙動が出てから補正するのではなく、ドライバーの操作から次の動きを先読みして制御することで、雪道や悪路でも修正舵に頼らず、スバルらしい自然な操作で狙い通りに走らせる一体感を目指したとしています。
BEV特有のパッケージングも味方に付けています。重量物であるバッテリーを床下に配置する構造は、必然的に「低重心」をもたらします。これはスバルが長年、水平対向エンジン(SUBARU BOXER)で追求し続けてきた「低重心による走行安定性」の思想と合致するものです。
開発側は「スバルらしい走り」をBEVでも成立させた手応えを得ているようで、トレイルシーカーの開発責任者であるスバルの井上正彦氏は、「初めてトレイルシーカーの試作車に乗った際、地面に吸いつくような安定感に驚き、「これはすごい!」と感じました」と語っています。
実際の市販車で、どこまで再現されているかは乗ってみたいところですが、少なくとも思想と技術の方向性は従来のスバル車と一貫しており、スバルが大切にしてきた価値を最新の技術でどう再現するか、その課題に真正面から向き合った一台であることは間違いなさそうです。









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