2026年3月。ホンダが四輪電動化戦略を見直し、ゼロシリーズなど3台のBEVの発売&開発中止を発表。ここでは、数年前までホンダに在籍していた人物に、近年のホンダ内部や、今回のニュースをどう受け止めたのかなど、お話を伺った。
※本稿は2026年4月のものです
文:ベストカー編集部/写真:ホンダ ほか
初出:『ベストカー』2026年5月10日号
ホンダ創業者・本田宗一郎氏の思想は受け継がれているのか?
今のホンダの苦境は、なるべくしてなったという感想ですね。(社長の)三部さんが頼りにしている人たちに問題があると感じます。出世のことしか考えていないような人たちの意見ばかり聞いているからこうなった、ということでしょう。
本田宗一郎さんの思いから始まるホンダの原点は「技術で人と社会の役に立つこと」です。それでお金をいただいているのに、今の経営陣にはそんな意識がおそらくない。
三部さんは出世のことばかり考えているイエスマンに囲まれて、居心地がよかったんでしょうね。常に自分に辛辣なことを言う人を側に置いていた(元社長の)川本(信彦)さんとは正反対。私も現役時代に三部さんを見ていて「裸の王様にならなければいいけど」と心配していました。
上司の覚えのいい人が出世する
本田技術研究所から本社(本田技研工業)の役員が多く出るようになってから、おかしくなってきたように思います。
本来、研究所と本社は別の組織だったのに、本社の顔色をうかがう人たちが増え、その結果、人の役に立つ技術より短期的な利益を上げられる方法を重視するようになっていきます。
創業者が何を考えていたかに思いを馳せることもなく、上司の覚えのいい人たちがどんどん出世します。また、社員もみんな従順ないい子ちゃんばかりだから、そういう状況に物申すこともなく見て見ぬふりを決め込むわけです。
かつて、研究所には新しい管理職向けの手引き書のようなものがあり、その最初には「偉くなりたいと思う人は、この本を読む必要はない」というようなことが書いてありました。
出世よりも技術を磨くことを一番に考える。それが研究所の社風でしたが、今はどうなんでしょう。もうこの本は受け継がれていないのではないでしょうか。
第3期のF1で「俺たちならできる」と根拠もなく思い上がっていたけど、勝てませんでした。あの頃から今の低迷の兆候は出ていたのかもしれません。
F1は第4期も初めは勝てず、結局、勝つことの難しさを知っている第2期の技術者を呼び戻して勝てるようになったわけです。
商品の開発も、昔の人たちを呼び戻していったほうがいいのかもしれません。「技術って何のためのもの?」を骨の髄からわかっている人たちが今こそ必要なのではないでしょうか。
1990年代のはじめから、川本さんは「原点回帰」とよくおっしゃっていました。現在の危機の予兆を感じ取っておられたのかもしれません。
2026年4月に四輪開発機能を本田技研に統合する組織改変が行われました。それで原点に戻れるほど簡単な話ではないと思いますが、ひとつのきっかけになってくれればいいと、OBとして切に願っています。
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