近年、修理できる事故でも全損と判断されるケースが増えています。その背景にあるのが、部品価格や修理工賃の高騰による「経済的全損」です。物価高騰は、車の修理や買い替えにも大きな影響を与えています。実際の事例を交えながら、その現状と車両保険の役割について一緒に考えてみましょう。
文:佐々木 亘/写真:ベストカーWeb編集部、AdobeStock
【画像ギャラリー】やっぱり先進安全装備は大事!! 100万円台で手に入る充実装備のクルマたち(15枚)画像ギャラリー修理できる事故でも全損になるケース
まずは、実際に経済的全損となったAさんのケースをご紹介します。
Aさんは交差点を走行中、左方向から進行してきた相手車と衝突しました。事故後、保険会社から提示された過失割合は、一時停止の標識がなかった相手側が2割、一時停止の標識があったAさん側が8割です。
自分の過失が大きい事故だったこともあり、当初は相手への対応に気持ちが向き、自分のクルマの修理費までは考える余裕がありませんでした。ところが、修理工場で自車の見積もりを作成すると、ボディだけでなく足回りにも大きな損傷が見つかり、修理費は約105万円に。Aさん自身も、修理費が100万円を超えるとは思っていなかったそうです。
一方、事故時の車両価格は95万円。修理自体は可能でしたが、修理費が車両価額を上回ったため、保険会社は経済的全損と判断しました。
近年は、原材料価格や物流費の上昇に加え、先進安全装備の普及によって部品そのものが高額になっています。さらに、交換後にはエーミングなどの作業が必要な車種も増え、修理費全体を押し上げています。
その結果、以前なら修理できた事故でも、経済的全損となるケースが増えているのです。
車両保険と新価特約がAさんを支えた
経済的全損と判断された場合、車両保険では事故時の車両価額をもとに保険金が支払われるのが一般的です。
Aさんも当初は、95万円をもとに中古車を探すことになると考えていました。しかし、中古車価格も物価高騰の影響を受けており、95万円で事故前と同程度のクルマを見つけることは決して簡単ではありません。
ところが、Aさんが加入していた自動車保険では、今回の被害が新価特約の適用条件を満たしていたため、同タイプの新車へ買い替えられることが分かったのです。事故後、「中古車を探すしかない」と思っていたAさんにとって、この結果は大きな安心につながりました。
車両保険が事故後の負担を大きく左右する
自動車保険というと、相手への補償をイメージする方も多いかもしれません。しかし、自分の車を補償できるのも自動車保険であり、その役割を果たすのは車両保険です。過失割合が大きい事故では、相手から十分な補償を受けられないこともあり、車両保険の有無が事故後の負担を大きく左右します。
「クルマも古くなってきたから」「事故を起こしたことがないから」と車両保険を外す人もいますが、現在は修理費も中古車価格も以前より高くなっています。万が一、経済的全損となった場合には、想像以上の自己負担が発生することもあるでしょう。
車両保険は、修理費を補償するためだけのものではありません。事故後もこれまでに近いカーライフを維持するための備えという役割も担っているといえるでしょう。


















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