年に1回のホンダの技術の展示会「ホンダミーティング」。今年も国内外のメディアを対象に栃木県の本田技術研究所4輪R&Dセンターで開催された。
そこには「走りのホンダ」を意識させるようなクルマが2台。ホンダの走りに心配は不要!! そう思わせてくれた2台を紹介しよう。
文:WEB編集部
写真:池之平昌信、ホンダ
シビックタイプRはオトナの階段を上りきった!!
日本で初試乗となった新型シビックタイプR。
かつてはEK9やDC5の脳天直撃な超高回転VTECにやられつつも、いまは現行型(FK2)タイプRのオーナーであるタイプRマニアの編集部Sが試乗した。
さて新型シビックタイプR。正式発表は7月下旬と発表があったが、価格は500万円弱(BC編集部予想:460万円)になりそうだ。
スペックは320ps/400Nmということが発表された。つまるところリッターあたり160ps。もはやランエボXやWRX STIと同じ領域にVTEC、そしてFFのシビックが来たってこと。
公道ではもう必要ないほどの有り余るパワーとトルク。310psのFK2ですら雨の日にはフロントホイールが空転するほど。実用性だけならそれ以上のパワーなど不要のはず。
でもこの10ps増には現場の並々ならぬこだわりもあったようだ。現場の妥協を一切抜きで作り上げたクルマこそ「タイプR」。生い立ちについてはこの辺にして、納得しておこう。
さて今回のタイプRはFK2に設定された「プラスR」モードに加えて、「コンフォート」モードが追加された。グローバルモデルになったシビックとしては、もう脳みそが揺さぶられるようなクルマは世界では受け入れられないのだろう。
タイプRにコンフォートなんて、センチュリーに車高調をつけるくらい相反する条件だが、もうこうなったらこれまでのシビックタイプRの概念は消したほうが精神安定上いいのかも。
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さっそく試乗を。シート本体はFK2と同等だが明らかにアイポイントが低い。センタータンクの上にフロントシートがあったFK2とは異なり、新プラットフォームではドライビングポジションは自然になった。
試乗はコンフォートモードから。ちなみにテストコースの路面はサーキットのような細粒アスファルトではなく、一般的なアスファルト舗装に近い。
最初の数百メートルで自分の感覚を疑った。これはメルセデスのAMGモデルか?
大げさでもなんでもなく、そんな感覚があった。固くないだけではなくとにかく奥まで「粘る」。「ググゥゥー」といったコーナリング時の粘り気、これは不思議な感覚に陥る。なんだこれは!!
ここで脳内電流マッチのゴングが鳴る。「これはシビックタイプRでいいのか」、「むしろこれこそシビックの標準車に入れるべき足回りでは!?」。
245/30R/20の「コンチネンタル スポーツコンタクト6」を履くが、30扁平のタイヤなのになんでこんなに突き上げがなくシックリくるのか。感心というより、もはや理解できるまでに時間がかかるほどの衝撃。
先日試乗したシビックにもこの足回りを入れれば、個人的な感想ではドイツ御三家も青ざめるレベルだと思う。
もちろんコスト的な面もあるとは思うが、こんなにいい足回りがあるならオプションでも設定してほしい。FK2と同じザックス製と推測されるが、あんなにシットリした乗り味はタイプRでは初めての経験だ。
どんだけ新型にケチつけてやろうか、と思っていた現行型オーナーだが、その目論みは偉大なる新型の前に打ち砕かれた。
大げさでもなんでもなく、高級スポーツセダンと遜色ない乗り味。シビックタイプRを選ぶ際に、財務大臣からの乗り心地の指摘の心配は不要だ。
コンフォートモードではそれくらいマッタリ、ゆったりした足が特徴的。シビックタイプRはハイテクを味方につけて、オトナの階段を上っていた。むしろ上りきって今後が心配になるほどに。
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