2026年3月期決算で、1957年の株式上場以来初の赤字決算となってしまったホンダ。「0シリーズ」の一部開発中止やアフィーラの撤退など明るい話題は皆無に見えるが、三部敏宏社長は強気の姿勢を崩さない。その理由はどこにあるのか?
※本稿は2026年5月のものです
文:井元康一郎、ベストカー編集部/写真:ホンダ、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2026年6月26日号
上場後初の赤字決算でも強気の三部社長
ホンダは2026年5月14日の決算発表で株式上場後初の赤字決算を明らかにした。
これは同年3月12日に発表したゼロシリーズの開発中止の時点で予測されていたことで、大きな驚きではないのだが、三部敏宏社長は発表会見の場で、「財務状況は健全」、「キャッシュ創出のアビリティは高い」と強調した。
実際、今期の赤字はEV事業中止に関連した1兆4536億円の特別損失によるもので、これを除外すれば約1兆円の黒字となる。
ゼロシリーズの中止を決断しなければ、今期の赤字は回避できただろうが、来期以降の経営を圧迫することは明らかだった。やや遅きに失した感はあるものの、EV関連事業中止の決断は、ホンダの未来を明るいものにする英断だったのだろう。
2024年時点でゼロシリーズの開発は最終段階まで至っていて、金型を発注する段だったと三部社長は明らかにした。2025年時点ではもはや引くに引けないところまで進行していた。
この後、主力市場とするアメリカではEV販売が急減速。15%と見込まれた新車販売におけるEV比率は、現在5.6〜5.8%にとどまっている。ゼロシリーズをこのまま市販したとしても、収益が見込めないどころか、赤字を生み出すことが明白となった。
ゼロシリーズは、ホンダが社運をかけた一大プロジェクトだ。関わるサプライヤーや、新規に建設する工場など、中止することで影響を受ける規模はそれこそ数兆円レベル。中止を決断し、発表するまでには相応の時間を要することはやむを得なかった。当然、それに変わる今後の成長戦略の策定がなければならない。
ICE&HEVに4.4兆円投資
それこそが、決算発表に引き続き開催された、ビジネスアップデート2026で明らかとなった四輪事業の体質改善だ。
2050年の完全カーボンニュートラルの実現という目標に変わりはないものの、そのアプローチを見直す。
具体的にはHEVのラインナップ増強に注力し、2029年までにグローバルで15車の新世代HEVを投入する。
国内向けには2027年中に複数車種のSUVモデルを投入し、2028年にはヴェゼルをフルモデルチェンジ。この新型ヴェゼルにはさらに進化した新世代ADASも搭載される。
北米向けの大型SUVではV6エンジンを組み合わせたHEVを新開発する。これを実現するため、今後3年間でICE/HEV開発に4.4兆円を投資する。従来EV開発に充てる計画だった資金を再配分した形だ。
さらにこの下支えとなるのが「トリプル・ハーフ」と名付けられた四輪事業再構築だ。
開発費、開発期間、開発工数をそれぞれ現状に対し50%低減することで大幅なコスト削減と、開発速度を引き上げる。マイナーチェンジモデルに関しては2026年度より取り組みを開始し、フルモデルチェンジについては2028年開発開始車から適用する。
これを実現するために、研究開発は本田技術研究所が主体となる従来のスタイルに戻したという。スピード感をもった開発により、ユーザーニーズに即した新型車を効率的に投入することで販売力を引き上げる狙いだ。
これとともに外部リソースを積極的に活用することでコスト削減と開発速度の加速を目指す。
これらにより、3年後の2029年3月期決算では過去最高水準の営業利益1兆4000億円を目指す計画だ。
ホンダは日本、北米、インドを今後の注力地域と捉え、各エリアに向けた最適な商品投入を目指していく。特にアメリカは2028年の大統領選挙の行方による政策の大転換も視野に入れて柔軟な対応が求められる。ホンダの未来像に期待したい。
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