バスのお仕事とは、なにも運転士だけではない。貸切バスのバスガイドも重要な職業だ。現役バスガイドが楽しく真剣に仕事の魅力や大失敗談を赤裸々に語る「へっぽこバスガイドの珍道中」2025年10月から彗星の如く突然スタートし、おかげさまで連載30回を迎えることができた。今回は本連載のタイトルについて語ってみたい。
文/写真:町田奈子
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
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■いつも読んでくださる皆さま本当にありがとうございます!
今回は30回を記念して、これまであまり触れてこなかった「へっぽこガイドの珍道中」というタイトルに込めた想いと、この連載を通して伝えたいことについてお話ししたい。この連載が始まったきっかけは、編集を担当してくださっている古川氏との出会いだった。
昔から文章を書くことが好きだった私は、「いつか自分の言葉で何かを発信できたら」と漠然と思っていた。そんな時、「記事を書いてみないか?」と声を掛けていただき、自分のこれまでの経験や想いを文章にしたことが、この連載の始まりである。
正直なところ、ここまで続くとは思ってもいなかった。それどころか、読者の皆さまに支えていただき、本誌紙面でも連載を持たせていただけるようになったことは、本当にありがたく、感謝の気持ちでいっぱいである。
■「へっぽこガイドの珍道中」とは?
ところで、「へっぽこガイドの珍道中」というタイトルには、どんな意味があるのだろうか。「珍道中」とは、旅の途中で思いがけない出来事や珍しい出来事に出会うことを意味する。振り返れば、私自身も数え切れないほど失敗をしてきた。
しかし、それ以上に多くの出会いがあった。個性豊かな先輩や仲間、業界関係者、そして何よりお客様との出会い。その一つひとつが、今の私を育ててくれた。失敗も、出会いも、学びも、すべてが私にとっての「珍道中」なのである。換言すればすべてが御縁と言っても過言ではない。
もちろん、「へっぽこ」という言葉に甘えているわけではない。プロとして仕事をする以上、お客様の大切な旅行を預かる責任がある。だからこそ、人より時間が掛かったとしても、一つでも失敗を減らし、より良いガイドになれるよう努力を続けるのは当然のことだ。
■旅が教えてくれたこと
学生時代に恩師からこんな話を教えていただいた。「トラベル(Travel)の語源はトラブル(Trouble)なんだよ」旅には予想外の出来事がつきものだからこそ、事前の準備が何よりも大切なのだと。当時はそこまで深く考えていなかったが、今になってその言葉の意味を実感している。
トラブルを完全になくすことはできない。しかし、防げることは準備によって防ぐことができる。その積み重ねが、お客様に安心して旅を楽しんでいただくことにつながるのだと思う。普段は日本語の表現力が素晴らしいと思っているが、これについては英語の方がわかりやすいので紹介すると、アクシデント>トラブル>ハプニングであろう。
アクシデント(事故)に至らぬようトラブル(不具合)までに抑え、ハプニング(意外)には対処するのだ。これは社会でのありとあらゆるお仕事に共通することだろう。
■バスガイドという仕事
本連載を通して私が伝えたいのは、バスガイドという仕事の厳しさだけではなく、その楽しさや魅力、人との出会いの素晴らしさである。要するに御縁がとにかく多いことが言いたいといっても良い。
バスガイドという仕事をしていると、毎日のようにさまざまな出会いがある。嬉しかったこと、悔しかったこと、失敗したこと、そしてそこから学んだこと。その一つひとつが積み重なって、今の私がいる。私がこの業界にいるのは、誰かの「非日常」を最高の思い出にしたいからだ。読者のみなさんが観光旅行をするときは、それすなわち非日常であることは疑いの余地はないだろう。
私たちにとっては日常の仕事でも、お客様にとっては貴重な休日を使った旅行であり、一生の思い出になるかもしれない大切な時間である。だからこそ、目の前のお客様に心から楽しんでいただくためのアテンドをしたい想いで一つひとつの仕事に向き合ってきた。
そして「ありがとう」「楽しかったよ」。その何気ない一言に、私は何度も励まれ、支えられてきた。結局はお客様あってのガイドであり、本連載において読者様あっての筆者なのはガイド業と大きな違いはない。多くの物騒で出来れば目を背けたい事件や事故のニュースや目を引くタイトルが多い中で、読んでくださる読者の方の清涼剤になればと思っている。



