日産2026年度1Q決算で黒字転換!! キックス1.1万台、エルグランド8000台受注で見えた復活の灯り

日産2026年度1Q決算で黒字転換!! キックス1.1万台、エルグランド8000台受注で見えた復活の灯り

 2026年8月3日、日産自動車が2026年度第1四半期(4〜6月)決算を発表した。前年同期に大変な赤字を出した営業利益・経常利益・当期純利益がそろって黒字に転換した。ただし世界販売台数そのものは中東情勢の不安定化などを受けて前年割れで、黒字化の主因はコスト削減や為替効果といえる。そんななか、決算発表資料に見逃せない数字が公開された。2026年6月発売の新型キックスは受注1万1000台超、7月発売の新型エルグランドは受注8000台超。しかもエルグランドは750万円超の最上級グレードに注文の9割が集中しているという。この数字は「日産復活の兆し」と言えるのか。決算資料と受注の中身を紹介し、解説します。

文:ベストカー編集局長T、画像:日産自動車

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世界販売減でも黒字化できた理由

 日産の2026年度1Q(2026年4月1日〜6月30日)決算を数字で見ると、売上高2兆9642億円(前年同期比9.5%増)、営業利益779億円(前年同期は791億円の赤字)、経常利益491億円(同1092億円の赤字)、当期純利益38億円(同1158億円の赤字)と、主要指標がそろって黒字化した。営業利益率は2.6%まで回復している。

項目2026年度1Q前年同期増減
売上高2兆9642億円2兆7069億円9.5%増
営業利益779億円791億円の赤字約1570億円改善
営業利益率2.6%黒字化
経常利益491億円1092億円の赤字約1583億円改善
当期純利益38億円1158億円の赤字約1195億円改善
グローバル販売70万1000台70万7000台6000台減

 ただし世界販売台数は70万1000台で、前年同期より6000台少ない。中東情勢の不安定化真っただ中の数字となったわりには健闘しているとも言えるが、それでも「クルマが多く売れたから」黒字になったわけではない、という点は確認しておきたい。

 日産が示した営業利益の改善要因の内訳を見ると、モノづくりコスト改善がプラス816億円、為替影響がプラス350億円、販売パフォーマンスがプラス237億円、関税影響がプラス183億円と続く一方、原材料価格はマイナス235億円、インフレーションはマイナス140億円というマイナス要因もあった。

コスト削減を積み上げ黒字転換。さああとはヒット商品だ
コスト削減を積み上げ黒字転換。さああとはヒット商品だ

 つまり今回の黒字化は、販売台数の増加ではなく、コスト構造改革と一部の一時的な為替・関税要因によるところが大きい。再建計画「Re:Nissan」では、2025年度までに約2550億円のコスト改善を積み上げ、2026年度1Qだけでさらに約600億円を上乗せ。累計は約3150億円となり、2026年度末目標の5000億円に対する進捗率は単純計算で約63%に達した。開発部門の労務費単価を20%改善する目標も、予定より3四半期前倒しで達成したという。

「削って利益を出す」段階は着実に進んでいる。だが、コスト削減だけで企業が成長軌道に戻れるわけではない。再建の本当の勝負は、ここから「売れる新型車」で利益を出せるかどうかだ。

新型キックス、わずか7週間で1.1万台受注

 その意味で決算発表の場でイヴァン・エスピノーサCEOが強調したのが、2026年6月に発売した新型キックスと、7月に発売した新型エルグランドの受注状況である。

 新型キックスは6月11日に先行受注を開始し、6月18日に正式発売。7月5日時点で受注は7000台を突破し、8月3日の決算説明会では累計1万1000台超に達したことが明らかになった。受注開始からおよそ7週間半で1万1000台という計算になり、月換算ではおよそ6000台規模のペースだ。

 もちろん発売直後の先行需要を含むため、このままのペースが続くとは限らない。それでも日産の販売担当者によれば、従来型キックスの月間販売は300〜500台程度だったといい、発売直後とはいえ初動の勢いは一桁違う。

日本市場が好調。この成績は2Qに反映される
日本市場が好調。この成績は2Qに反映される

 受注の中身を見ると、最上級グレード「G」の人気が高く、駆動方式は2WDが65%、4WDが35%。2トーンカラーの人気も高く、イメージカラーの「レゾナンスブルー」は想定以上の選択率だったという。女性だけでなく男性ユーザーからの支持も集まっている。

 新型キックスは全車が第3世代e-POWERを搭載し、2WD・4WDを設定。グレードは「Xシンプルパッケージ」「X」「X+」「G」の4種で、価格は299万9700円〜424万8200円。300万円を切る入口価格を用意しつつ、400万円超の上級仕様までカバーする幅の広さが特徴だ。

 エスピノーサ社長は新型キックスについて「サイズもパワートレーンも日本にピッタリ」と評価している。大型化が進むSUV市場のなかで、日本の道路・駐車環境に合うコンパクトSUVという立ち位置は明確。加えて、BEVほど充電環境に左右されず、モーター駆動特有の静粛性やレスポンスを訴求できる第3世代e-POWERの投入タイミングも、ハイブリッド需要の根強い日本市場にはまっている。

エルグランド8000台、9割が757万円のG

 もう一台の主役が、16年ぶりにフルモデルチェンジした新型エルグランド(通算4代目)だ。

 先行受注は5月末に開始され、発売時点の7月16日で6000台超を受注。8月3日の決算説明会では、累計8000台超に達したことが明らかになった。5月末から8月3日までの約2か月強を単純に月換算すると、およそ3500〜4000台規模になる。高級ミニバンとしては非常に強い初動だが、こちらも16年待った既存ユーザーの買い替え需要を多分に含むため、通常月の実力とは分けて見る必要がある。

 注目すべきは受注の中身だ。7月16日時点の内訳は、最上級の「G e-4ORCE」が90%、「X e-4ORCE」が10%。価格はX e-4ORCEが689万7000円、G e-4ORCEが757万9000円で、実に約9割のユーザーが750万円を超える上級グレードを選んでいる計算になる。仮にこの比率が8000台全体でも続いていたとすれば、Gグレードだけでおよそ7200台。車両本体価格ベースの総額は編集部試算でおよそ600億円前後に達する規模だ。

 受注を後押ししたとみられるのが、5年後の残価率を51%に設定した高残価ローンだ。車両価格全額ではなく残価を差し引いた部分を中心に支払う仕組みのため、700万円台の車両でも月々の負担感を抑えやすい。日産自身も、この残価設定の高さを受注好調の一因として説明している。

 残価型ローンの強みは「有料顧客を販売店ががっちりつかみ続けられること」。新型エルグランドのような高額車を、デビュー直後にすぱっと注文できるような優良顧客は、日産販売店にとっての「宝」。こういうお客さんをしっかり捕まえていることが、5年後、10年後の日産の底力になる。

 商品面では、第3世代e-POWERに加えて電動4輪制御「e-4ORCE」、インテリジェント・ダイナミックサスペンションを全車4WDで搭載。7人乗り3列シートに14.3インチの統合型インターフェースディスプレイ、助手席と2列目にオットマン付きのゼログラビティシートを備える。全長4995mm、全幅1895mm、全高1975mm、ホイールベース3000mmという堂々たるボディに、日本の伝統工芸「組子」をモチーフにした意匠をフロントグリルやリアランプにあしらった。

復活を期すエスピノーサCEO
復活を期すエスピノーサCEO

 長年、国内の高級ミニバン市場はトヨタ・アルファード/ヴェルファイアの独壇場だった。新型エルグランドの8000台という数字には、待望していた歴代ユーザーの買い替えに加え、「アルファード/ヴェルファイア以外」を求めていた層の期待も重なっていそうだ。ショーファードリブン(運転される快適性)を強めるアルファード系に対し、e-4ORCEによる「運転したい車」という走りの魅力を前面に出す点は、日産ならではの差別化ポイントになる。

国内販売回復の本番はこれから

 ここで注意したいのは、この好調な受注が、実はまだ決算の数字にほとんど反映されていないという点だ。

 2026年度1Qの日産の国内販売台数は8万8000台で、前年同期比1.3%増。決算対象期間は6月30日までであり、新型キックスの発売は6月18日、新型エルグランドの発売は7月16日である。つまりエルグランドの販売効果は1Q決算にはほぼ含まれておらず、キックスも本格寄与はわずか2週間程度に過ぎない。

 言い換えれば、1万1000台・8000台という数字はあくまで「受注」であり、生産・登録・納車を終えた台数ではない。この受注が実際の売上・登録として計上されていくのは、2Q(7〜9月期)以降になる。日本事業の回復力が本当に試されるのは、まさにこれからだ。

それでも日産再建はまだ道半ばだ

 とはいえ、日産の再建が完了したわけではない。

 日産は中国市場の需要減少や中東情勢の混乱を踏まえ、2026年度の世界販売計画・生産計画を、それぞれ期初計画から15万台引き下げた。一方で年間の業績予想(売上高13兆円、営業利益1000億円、当期純利益200億円、世界販売315万台)は据え置いている。台数を減らしながら利益予想を据え置くということは、コスト削減や高収益車の販売強化を、さらに進める必要があるということだ。

地域1Q販売前年同期比主な状況
日本8万8000台1.3%増新型キックスなどが寄与
中国13万台7.2%増Nシリーズなど新エネ車が牽引
北米32万8000台4.2%増米国が好調
(うち米国)24万3000台9.6%増ローグ・パスファインダー・フロンティア好調
欧州6万4000台14.6%減競争激化、商品構成の適正化
その他9万1000台16.8%減中東情勢の影響

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