エクストレイルのe-POWERは、1.5L VCターボエンジンを発電専用に使う。タイヤを直接回さないのに、世界初の量産可変圧縮比技術まで投入する必要があるのか? そこには、力強さ、燃費、静粛性を同時に狙う第2世代e-POWERならではの理由があった!
文:ベストカーWeb編集部/写真:日産
【画像ギャラリー】エクストレイルのVCターボはなぜ発電専用? 可変圧縮比エンジンを積むe-POWERの秘密(15枚)画像ギャラリー圧縮比を8.0から14.0まで連続的に変える!
一般的なエンジンは、ピストンが最も下がった状態と上がった状態の容積比、つまり圧縮比が固定されている。圧縮比を高くすれば熱効率が向上して燃費に有利だが、高負荷時には異常燃焼のノッキングが起きやすい。逆に圧縮比を下げれば過給によって大きな力を出しやすいものの、低負荷時の効率では不利になる。
エクストレイルが搭載する1.5L VCターボは、ピストンとコンロッドの間に独自のマルチリンク機構を挟んでピストンの上死点を動かし、圧縮比を8.0から14.0まで連続的に変化させる。
この機構によって、穏やかに発電するときは高圧縮比を使い、少ない燃料から効率よくエネルギーを取り出す。高速道路や登り坂などで多くの電力が必要になれば、圧縮比を下げてターボによる過給を活用。ノッキングを抑えながら、1.5Lとは思えない発電能力を引き出す仕組みだ。
エンジンの最高出力は144PS、最大トルクは25.5kgm。これ自体が直接タイヤへ伝わるわけではないが、バッテリー残量が減ったときや高負荷走行が続いたとき、モーターへ十分な電力を供給するために重要となる。
発電専用だからエンジンを効率よく働かせられる
エクストレイルのe-POWERでは、エンジンとタイヤの間に機械的なつながりがない。タイヤを駆動するのはモーターだけで、エンジンは発電機を回すことに徹する。
この方式なら、車速とエンジン回転数を切り離せる。通常のガソリン車では、低速からの加速や変速のたびにエンジンが効率の悪い領域まで使われる。発電専用なら、必要な電力量に応じて、効率のいい回転数と負荷を選びやすい。
では、一定回転で使う発電専用エンジンに、可変圧縮比は過剰ではないのか。実際には、クルマが求める電力は常に一定ではない。市街地を穏やかに走る場面と、高速道路の上り坂をe-4ORCEで走る場面では、必要な発電量が大きく異なる。
そこでVCターボが効く。小さな電力で足りるときは高圧縮比で燃費を稼ぎ、大量の電力が必要なときは低圧縮比とターボで対応する。大排気量エンジンを積まずに、効率と高出力を両立できるのだ。
さらにバッテリーが、発電と駆動の間で緩衝材の役割を果たす。アクセルを強く踏んでも、エンジン回転を瞬時に大きく上げる必要がなく、まずバッテリーの電力でモーターを駆動できる。エンジンを効率のいい領域で動かしつつ、モーターならではの素早い加速を得られる。
もちろん、マルチリンク機構を持つVCターボは単純な発電用エンジンより複雑だ。それでも、電力消費の少ない街中から高負荷の高速走行まで、1台で対応させるために採用する価値がある。
VCターボは、タイヤを直接回さないから脇役なのではない。必要な電気を、必要な瞬間に効率よく生み出すe-POWERの心臓部。エクストレイルの滑らかな走りと長距離性能は、この“見えない主役”によって支えられているのだ。
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