モーターで走るEVには、基本的にエンジン車のような多段変速機は必要ない。ところがスーパーワンは「仮想7段」とパドルシフトを採用した。わざわざ変速感を作り出す理由は何か。ホンダがEVに取り戻そうとした「操る喜び」の正体に迫る。
文/写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】まさにEV時代に復活したボーイズレーサー! スーパーワンのパドルシフトがコレ!(9枚)画像ギャラリーギアはないのに変速ショックまで再現
最初に断っておくと、スーパーワンに機械式の7速トランスミッションが搭載されているわけではない。モーターの出力特性を電子制御し、7つの仮想ギアを作り出す仕組みだ。
各ギアには異なるトルク特性が設定され、加速中はエンジン車のように段階を追って速度が伸びる。変速の瞬間にはモータートルクをわずかに増減させ、鋭いGの変化も演出。滑らかすぎるEVの加速に、デュアルクラッチ式トランスミッションのような小気味よい区切りを加えている。
さらに減速時には、トルク変化と仮想エンジンサウンドを連動させてブリッピングを再現。仮想回転数が上限へ近づくと、レブリミッターを思わせるトルクカットと断続音まで入る。クルマを守るための本物のレブリミッターではなく、ドライバーへ操作のタイミングを伝える演出だ。
開発では、ホンダのテストコースを走った際に2速、3速、4速を自然に使えるようギア比を設定したという。サーキット専用ではなく、一般道でもシフト操作を楽しめる味付けなのだ。
パドルの役割まで走行モードで変わる
仮想有段シフト制御が使えるのはSPORTモードとBOOSTモード。ステアリングのパドルを操作すれば、MT車のように任意で仮想ギアを選択できる。特にBOOSTモードでは、最高出力が通常の47kWから70kWへ高まり、パドル操作に対する加速の反応もより刺激的になる。
ドライバーの操作に加え、前後G、横G、勾配などから走行状況を判断するスポーツアダプティブ制御も採用。コーナー手前では早めにダウンシフトし、旋回中にはギアを保持するなど、立ち上がりで気持ちよく加速できるよう制御する。
一方、ECON、CITY、NORMALモードではパドルが減速セレクターとして働き、回生ブレーキの強さを調整する。走りたい時はシフト操作、普段は減速調整。1組のパドルに2つの役割を持たせたわけだ。
この仮想7段は、ギア比によって速さや電費を稼ぐ装置ではない。滑らかで静かなEVに、加減速の手応えと音による情報を加える装置だ。効率を追求すれば不要。それでも搭載したところに、スーパーワンが単なる移動用EVではない理由がある。
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