トヨタ自動車が2026年8月、現時点での自動運転戦略のロードマップと開発状況を明らかにした。目玉は「レベル2++(L2++)」と呼ばれる、トヨタ製AIを組み込んだ次世代運転支援機能。なんと2年後の2028年より市場投入が始まるという。驚くのは、このAI搭載車が高級車の超上級オプションでなくカローラやヤリス級の、普通の人が買える普及価格帯のクルマへの搭載を想定していることだ。トヨタはAI搭載の自動運転技術について他社と比べて一歩遅れているのでは……という評価もあったが、やっぱりやってたのか。いつものパターンか。さらに商用シャトルやロボタクシー領域、Waymoとの協業まで、トヨタは「交通事故ゼロ」と「移動の自由の確保」という2つの目標に向けて、一気に手駒を開示した格好だ。いつ、どんなクルマに、どこまで、どうやって自動運転やAIを搭載してくるのか。自動車情報専門メディアの視点で整理してお届けします。
文:ベストカー編集局長T、画像:AdobeStock
【画像ギャラリー】カローラ/ヤリス級にも“自動運転時代”到来!? トヨタが2028年からAI運転支援を普及車へ宣言(3枚)画像ギャラリー2028年、レベル2(L2++)を個人向け普及車に投入開始
トヨタが今回メディア向けに明らかにした自動運転(運転支援)技術ロードマップで、もっとも読者の関心を引くのは、2028年より個人ドライバー向けに、トヨタ製AIを搭載した「レベル2++(L2++)」の運転支援機能搭載車を市場投入するという点だろう。単なる将来構想の披露ではなく、はっきりと「2028年から」という時期を示した点に、トヨタの本気度がうかがえる。
なお「L2++」は、SAEが定める正式な「自動運転レベル」ではなく、「高度化したレベル2」を示す業界上の呼称である。あくまで運転主体はドライバーであり、周囲を監視し、必要に応じて直ちに操作する責任もドライバー側に残る。その枠内で、AIが担う支援領域を従来より大幅に広げる技術と理解すべきだ。

高速道路だけでなく一般道も含め、目的地までの走行を幅広く支援することが想定されている。合流や車線変更、交差点での右左折など、これまでドライバーが神経を使ってきた場面で、どこまで自然でスムーズな支援を実現するかが注目点となる。
そのうえでトヨタはこの技術投入を「入口」と位置づけており、2030年以降はこの機能を搭載する車種をさらに拡大し、本格的な普及を目指す方針を示した。つまり2028年から数年かけて、じわじわとすそ野を広げていくロードマップだと理解しておくのが正しい見方だろう。
気になる搭載車種、グレード構成、価格帯、そしてシステムの心臓部にあたるAIモデルの規模やセンサー構成といった技術的な詳細については、現時点ではいずれも未公表だ。続報が入り次第、ベストカーWebでも速報していく。
なぜ「普及車」からやるのか? 事故ゼロに直結する理由
そのうえで今回の技術説明で、トヨタ側より「まずは普及車に投入」という点がメディア向けQ&Aで明かされた。これはトヨタがこの技術を、より多くのユーザーの手が届く価格帯・車格にまで広げたい考えの表れと読み取れる。このスタンスは、トヨタが掲げる「事故ゼロ」「移動の自由の確保」という目標と深く結びついている。
個人向けのL2++を(高性能・高価格技術ではなく)普及車から広げることは、より多くのドライバーの事故リスクや運転負担を減らすことにつながる。一方、免許返納後の高齢者の移動手段や、路線バスの減便が進む地方交通の維持、物流・人流の効率化といった課題には、商用シャトルなどのレベル4技術が効いてくる。どちらも、一部のハイエンドモデルだけでは解決できない、裾野の広い社会課題だ。
さらに「事故死者ゼロ」ではなく「事故ゼロ」だからこそ、日本中の道路を走り回っている普及価格帯の量産車に運転支援技術を届ける意義がある、というのがトヨタの考え方なのだろう。自動運転の達成そのものが目的なのではなく、事故を減らすために自動運転・運転支援技術を使うという順序である。
カローラやヤリス級の、クルマ好きにとっても、そうでない人にとっても身近な「国民車」へ展開する方針からは、この技術の普及にかける思いが見てとれる。思えばハイブリッド技術も、「プリウス」という手の届く価格帯の車両へ搭載したことが端緒だった。
商用シャトルとロボタクシー領域、Waymoとの協業も進行中
個人向けの運転支援だけでなく、トヨタは商用領域における自動運転の開発も並行して進めている。商用シャトルについては、2030年までに、限定された運行設計領域(ODD)内でシステムが運転を担うレベル4技術の開発を目指す。
レベル4は、ODD内でシステムが運転タスクと、作動継続が困難になった場合の対応を担い、「運転者」を必要としない。個人向けのレベル2とは責任設計も利用場面も異なる自動運転技術である。トヨタは2030年以降の社会実装と普及拡大を見据えており、この技術がバスやシャトルといった公共性の高い移動サービスで実用化されれば、運転手不足に悩む地方の交通インフラにとって大きな意味を持つことになるだろう。
さらに注目したいのが、ロボタクシーを含む自動運転サービス領域でのWaymoとの協業検討だ。トヨタは、グーグルの親会社アルファベット傘下の自動運転企業Waymoと協業を模索しており、両社は2025年4月30日、戦略的パートナーシップの枠組みに基本合意した。自動運転技術で先行するWaymoと、量産車づくりのノウハウ・生産体制を持つトヨタが手を組むことで、ロボタクシーをはじめとする新しい移動サービスの実現に弾みがつく可能性がある。

ただし、あくまで協業の枠組みに基本合意した段階であり、トヨタ自身によるロボタクシー事業への参入や、日本での具体的なサービス開始時期が決まったわけではない。それでも、世界的にロボタクシー市場の競争が激化するなかで、トヨタが海外の有力プレイヤーと組む可能性を模索していること自体が大きなニュースといえる。
こうしてみると、個人向けの運転支援(L2++)、商用シャトル、そしてロボタクシー領域という3つの層で、トヨタが自動運転の実装を同時並行で進める戦略が見えてくる。それぞれ求められる技術水準も責任設計も、実用化のスピードも異なるが、目指す方向はひとつ。すべての人が、それぞれの状況に合わせて安全に移動できる社会をつくることだ。
交通事故ゼロへ、自律型技術とヒト・クルマ・インフラの三位一体
ここまで紹介してきたロードマップの土台にあるのが、「交通事故ゼロ」という大きな目標だ。トヨタにとって運転支援・自動運転技術は、目的でも結果でもなく、「事故ゼロを達成するための手段」として位置づけられている。
さらに注目すべきポイントがある。トヨタは、2028年に投入する「L2++」の中核となるAIを、基本的にトヨタで内製する方針だ。一方、商用シャトル向けのレベル4やWaymoとの協業は、それぞれ別の開発・事業レイヤーとして進められる。すべてを自前で抱え込むのではなく、クルマの知能の中核は自社で握りながら、演算基盤やOS、外部の自動運転技術とは目的に応じて連携する構図だ。自動運転を単なる装備のひとつではなく、これからのクルマづくりの根幹技術と捉える姿勢がうかがえる。
また、トヨタは、クルマ単独の技術だけではすべての事故を防げないことも率直に認めている。交通事故ゼロを目指すうえで、とりわけ難しいのが、駐車車両や交差点の死角から現れる歩行者・自転車など、車載センサーだけでは早期に捉えにくい危険への対応だ。
こうした事故への対応には、クルマ側のセンサーや判断だけでは限界がある。どれだけ高性能なカメラやレーダーを積んでも、遮蔽物の向こう側など、センサーから直接は見えない危険を早期に捉えることには物理的な制約があるからだ。
そこでトヨタが掲げるのが「ヒト・クルマ・インフラ」の三位一体での対策。ドライバーや歩行者といった「ヒト」、自動運転・運転支援技術を積んだ「クルマ」、そして信号や標識、道路そのものといった「インフラ」。この3つが情報をやり取りしながら連携することで、クルマ単体では防ぎきれない事故を減らしていく発想だ。すでにインフラ協調の実証実験も進行中だという。
車載コンピューティングの分野では、NVIDIAが2025年1月、トヨタの次世代車が「DRIVE AGX Orin」と「DriveOS」を採用すると発表。さらに2026年7月には、DRIVE AGXとDriveOSを使った次世代車がL2++機能を提供すると明らかにしている。ただし、2028年に投入される具体的な車種やハードウェア構成までは公表されていない。「トヨタ内製のAI」といっても、演算基盤やOSまで含めたすべてを自前で作るという意味ではない。AIモデルや車両への統合はトヨタが主導しつつ、土台には最適なパートナーの技術を使うアプローチだ。




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