排ガス規制に適合し、国内市場に再投入された新型GSX-R1000R。
レーシングマシン
のように先鋭化したリッタースーパースポーツが増えた昨今でも
「トータルパフォーマンス」という、
歴代の基本ポリシーを頑なに守り続ける
稀有な1台だ。そんな新型GSX-R1000Rの実力を、約250kmのワンデーツーリングで検証した。
●写真:関野 温 ●取材協力:スズキ二輪
スペックには現れない性能で従来型を凌駕する
まず
、
ユーロ5+(令和2年排出ガス規制)への適合を果たし、国内モデルとして見事復活を果たしたGSX-R1000Rに“おかえり!”と言ってあげたい。市販車ベースのレース車両として国内外各社が鎬を削る1000ccスーパースポーツだが、2023年に従来型GSX-R1000Rの国内モデルが生産終了となり、リッタースーパースポーツにスズキの姿がないことで、我々がどれだけ寂しい思いをさせられたか。それだけに今回の復活劇には最大限の賞賛を送りたい。
さらに
今回のGSX-R復活劇にあたっては、鈴鹿8耐に参戦した「チーム スズキCNチャレンジ」のレース経験が活かされており、速さはもちろん、耐久レースのベース車としての信頼性や耐久性も底上げされているとのこと
。
開発陣によれば、
今回の新型で特に力が注がれた部品や組み立て精度の向上は、それらレースからのフィードバックがあってこそ。一見なんの関係もなさそうに思える“レース活動”と“市販車”だが、
街乗り性能やツーリング適性の向上に
はレース活動が大きく役立っているのだ。

昨年に続き、今年もGSX-R1000Rで鈴鹿8耐に参戦したチームスズキCNチャレンジ。今回のモデルチェンジはこうしたレースからのフィードバックを受け、レーシングポテンシャルを高めることも目的とされている。(写真:スズキ)
カタログ数値だけを見ると197ps→190psと、7psのピークパワーダウンに目が行きがちだが、新型は規制適合によるパワーダウンを圧縮比アップやスロットル径拡大などで最小限に
とどめ
、軽量なリチウムイオンバッテリー採用などで203kgの車両重量は維持、さらに電子制御の緻密化などで、トータル性能では従来型よりむしろ向上しているという。
チーフエンジニアの言葉を借りれば「通勤や街乗り、ハードなスポーツツーリングやサーキット走行まで1台でこなす“トータルパフォーマンス”において、GSX-R1000Rに匹敵するバイクはそうはない」。ならば、実際にツーリングに連れ出してお手並み拝見と行こうじゃないか!
乗りやすいのに速い! 引き継がれるGSX-Rの哲学
新型GSX-R1000Rで走り出して、まず驚かされたのが常用域の扱いやすさだ。混雑した市街地から流れのいい郊外、高速道路での巡航などなど、こうした常用域ならエンジン回転数4000rpm以下ですべてこなせてしまう。それも無理矢理この回転域に収めようと意識するのではなく、普通にギヤチェンジしているだけで、自ずと4000rpm以下に収まってしまうのだ。
発進や微速前進でナーバスになる必要がなく、上り坂で少々パワー不足を感じてもギヤを落とすことなく、少しばかりスロットルを開けてやれば走り切ってしまえる粘り強さがある。常用域の潤沢なトルクのなせる技だが、基本的に高回転高出力をねらうスーパースポーツとしては異例に常用域が扱いやすい。
このあたりは先述の改良点に加え、排気デバイスをサイレンサー近くに移し、より緻密な排気圧コントロールができるようになったのも大きいだろう。
スロットルバルブ径を46㎜から48㎜に拡大したことで、多少なりとも低回転域での扱いにくさが出そうなものなのだが、逆にむしろ扱いやすさが増していることに驚くばかりだ。
今回は撮影もあり、Uターンや交差点での右左折など、極低速領域もみっちり試すことになったのだが、リッターSSが不得意なそんな場面もGSX-R1000Rなら楽々。これはエンジンの出力特性だけでなく、車体やサスペンションにおいても言えること。
今回の改変ではメインフレームやスイングアームといった車体まわりに手を入れているわけではないが、そもそも
ツーリングマシンとしての基礎能力が高いのだ。
スーパースポーツを公道で走らせるうえで、これ以上に重要なことがあるだろうか?
まぁ、ライディングポジションはスーパースポーツだけに前傾姿勢が強いので“ツーリングに行けなくはない”という表現になってしまうが、それでもこの車体とエンジンの扱いやすさは特筆
すべき。GSX-R1000Rならではのゴリゴリという常用域のエンジンフィーリングも心地よく、流して走っているぶんには、こいつがリッタークラスのスーパースポーツであることを忘れてしまいそうだ。

シート高は825mmで、両足支持で3〜4cm踵が浮くくらいの良足着き性。着座部はスリムに絞られており、さらにピボット&ステップの面合わせのおかげで足が出しやすい。(ライダーは身長175cm・体重75kg)
走行モードに関わらず開けやすいエンジン
GSX-R1000Rの公道適性が存分に感じられたところで、ステージをワインディングに移してみよう。
1つ、2つ低いギヤを使い
、エンジン回転域を4000rpm
以上に引き上げてやると本来の速さを垣間見ることができる。…といっても公道で使えるのはせいぜいその少し上。ピークパワーの発生回転域である1万3200rpmなど使えるはずもないのだが、それでもスーパースポーツたるGSX-R1000Rの性能の片鱗はしっかり体感できる。
この回転域になると、先ほどまで感じられたゴリゴリというトルクフルなエンジンフィーリングから一転。今度はレスポンスのいい加速が始まる。特に
6000rpm以上の領域では二次曲線的に一気に加速。このピークパワーに向けて鋭く吹け上がっていく感覚はGSX-R1000Rならではと言っていい。
このエンジンには吸排気バルブのオーバーラップタイミングを回転数によってシームレスに切り替える「スズキレーシングバリアブルバルブタイミング(SR-VVT)」が搭載されている。まぁ、乗っていてその切り替わりのタイミングが分かるワケではないのだが、低回転域のトルクの厚みと高回転側の伸びの良さ、レスポンスの良さは、このSR-VVTの恩恵だと思って間違いないだろう。
ただそんな高回転側の領域を使って走らせていて感じるのは、
記憶にある先代
の乗り味に比べて、さらに神経質なところが
なくなったというか、スロットルが開けやすく
なったように
感じる。開発陣の話では高回転のパワーを追求するだけでなく、インジェクションやエアクリーナー、エンジンマップといった部分にも手を入れ、より素直で力強いトルク特性を実現したというから、
この
開けやすさは気のせいではないだろう。
特にコーナーの出口に向けて加速するような状況で、スロットルを“いい感じ”で開けていける。これがエンジンマップを切り替えるSDMS(スズキドライブモードセレクター)が、穏やかな出力特性の「Cモード」や「Bモード」の時だけでなく、最もシャープなスロットルレスポンスの「Aモード」でも体感できるのだから相当なことだ。
車体に関しては“常用域で扱いやすい”と定評のある従来モデルからまるっと引き継ぐことになった新型GSX-R1000R。その印象を改めて書けば、交差点での右左折やワインディングといった速度域で変な扱いにくさが出ないのがいいところ。
スーパースポーツ、それも1000ccクラスともなると、サーキットでのパフォーマンスを優先するあまりなんだか公道走行がしにくいモデルもあったりするのだが、ことGSX-R1000Rに関してはそんなことは皆無。冒頭で紹介したチーフエンジニアの言葉どおりの印象を受ける。
その一方で、高速道路では80km/hを超えたあたりからスタビリティが増し、しっかりとした直進安定性が出てくるのも面白い。新型GSX-R1000Rのトピックスの一つに、オプションのドライカーボン製のウイングレットなんてモノがあるのだが(今回の試乗車には非装着)、実際装着したらどれだけ安定するのか? 本当にコーナリングに影響はないのか? 気になるところだ。
電制の進化も公道で体感可能!
また新型のGSX-R1000Rでは、スズキトラクションコントロールシステム(T)、リフトリミッター(L)、ロールトルクコントロール(R)の3つの機能を統合制御するスマートT.L.R.コントロールシステムも磨きをかけたとのこと。
システム介入度を10段階とOFFから選択できるのは従来どおりだが、8年分の技術を凝縮してより緻密な制御を行うようになっている。
早速、最大介入の10で試してみる。…と、さすがに最大介入の10ではコーナー脱出に向けてスロットルをガバ開けするとわかりやすくスマートT.L.R.コントロールシステムが制御介入してくる。ただここで、“なんだ使えないシステムだな”と笑ってはいけない。あくまでこの段階では、“クリッピングポイントでスロットルを全開にできる感覚”を掴むのが重要なのだ。あとは同じようにスロットルを全開しながらスマートT.L.R.コントロールシステムの介入度を少しずつ下げていく。
この作業を反復することで“トラコンに当てながら最大加速させる技術”が身につけられるのだが、この作業がこれまで乗ったスズキ車の中で過去イチやりやすいと感じる。システムの介入度を5まで落とせたところで“これ以上は公道でやる領域ではない”と判断。この続きはしっかりとした装具を身につけてクローズドコースで試してみたいところだ。
サーキットだけでなく、市販車としての公道走行でもしっかり楽しい
GSX-R1000R。ピークパワーが200ps近いモンスターマシンをこれだけ公道でスロットルを開けて楽しめてしまうのだから恐ろしい話である。GSX-R1000Rの新型では
スズキの言う“トータルパフォーマンス”という
GSX-R
の哲学をこれでもかと感じることができた次第だ。

2023年排出ガス規制との兼ね合いで国内仕様は一時生産終了となっていたGSX-R1000R。このたび見事ユーロ5+(令和2年排出ガス規制)に適合し、国内モデルとして復活を遂げた。新作となったマフラーと、それに合わせて形状が変わったアンダーカウルなどが従来型からの識別点。

タンクにも「ELIIY Power」のステッカーが。外装やキーにはGSX-R生誕40周年の記念ロゴが刻まれる。(1985年登場のGSX-R750からカウント。新型GSX-R1000Rがお披露目されたのは2025年だったため40周年となる)。

車体色は3色。左から「パールビガーブルー/パールテックホワイト」「キャンディダーリングレッド/パールテックホワイト」「パールイグナイトイエロー/マットステラブルーメタリック」。オールドファンには“ラッキーストライク”や“ハーベー”を想起させる?!(写真はオプション装着車)
スズキGSX-R1000R(2027モデル)主要諸元
・全長✕全幅✕全高:2075mm✕705mm✕1145mm
・軸間距離:1420mm
・キャスター/トレール:23°20′ / 95mm
・シート高:825mm
・装備重量:203kg
・エンジン:水冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ 999cc
・ボア✕ストローク:76.0mm × 55.1mm
・圧縮比:13.8:1
・最高出力:140kW(190PS)/13200rpm
・最大トルク:108N・m(11.0kg-m)/11000rpm
・燃料タンク容量:16L
・変速機形式:常時噛合式6段リターン
・ブレーキ(F/R):ダブルディスク/シングルディスク
・タイヤサイズ(F/R):120/70ZR17/190/55ZR17
・価格:237万6000円
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/579673/
【スズキ新型GSX-R1000R インプレッション】ある時は通勤、ある時はツーリング、そして、ある時はサーキットに!【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/579673/582942/























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