軽自動車といえば、いまや両側スライドドアのスーパーハイトワゴンが主役だ。しかし、すべての人に大空間や電動ドアが必要なわけではない。あえて昔ながらのヒンジドアを守るワゴンRには、軽く、安く、気軽に使えるという軽自動車本来の魅力が凝縮されているのだ。
文:ベストカーWeb編集部/画像:スズキ
【画像ギャラリー】ヒンジだからこそできる!! ワゴンR後席ドアの収納力がスゴイ!(5枚)画像ギャラリースライドドアは便利だが誰にでも必要とは限らない
いまの軽自動車市場では、スペーシアやN-BOX、タントといったスーパーハイトワゴンが圧倒的な存在感を放っている。その人気を支えている装備が、後席のスライドドアだ。
狭い駐車場でもドアを大きく張り出さずに開閉でき、子どもが隣のクルマにドアをぶつける心配も少ない。電動式なら、スイッチひとつで開閉できる便利さもある。子育て世代を中心に支持されるのは当然だろう。
しかし、スライドドアにも弱点はある。レールやローラー、電動モーターなど多数の部品が必要となるため、一般的なヒンジドアより構造が複雑だ。車両価格や重量を押し上げる要因にもなる。
電動式は開閉に少し時間がかかり、後席からサッと降りたい場面では、普通のドアのほうが手っ取り早いこともある。日常的に後席へ人を乗せないなら、せっかくのスライドドアをほとんど使わないというケースも珍しくない。
その点、ワゴンRのヒンジドアは実にシンプルだ。ドアハンドルを引けばすぐに開き、閉めるときも手で一気に操作できる。機構が簡潔なので、長く乗った際の故障リスクや修理費という点でも安心感がある。
もちろん、狭い場所で後席ドアを開けにくいことや、小さな子どもの乗り降りではスライドドアにかなわない。それでも、主に1~2人で乗り、買い物や通勤、通院などに使うなら、ヒンジドアで困る場面は意外に少ないはずだ。
軽くて安くて十分広い「普通」の強さ
現行ワゴンRの全高は1650mm。スーパーハイトワゴンほど背は高くないが、低すぎず高すぎない着座位置を持ち、乗り降りしやすい。室内長は2455mm、室内高は1265mmを確保しており、大人4人が乗れる空間もきちんと備えている。
後席は左右独立してスライドとリクライニングが可能。背もたれは荷室側からワンタッチで倒せるため、大きな荷物を積みたいときにも対応できる。助手席下の収納ボックスや、濡れた傘の水を車外へ排出できるリアドアのアンブレラホルダーなど、ワゴンRらしい細かな工夫も健在だ。
そしてヒンジドアを採用するワゴンRの大きな武器が軽さである。ZLの2WD車は5MTが750kg、CVTでも770kg。背の高い軽乗用車でありながら、800kgを下回る仕様を残している。
車体が軽ければ、加速や減速、旋回のすべてでエンジンやタイヤにかかる負担を抑えられる。最高出力49psの自然吸気エンジンでも日常域では不足を感じにくく、ZLの2WD・5MT車はWLTCモード25.1km/Lという低燃費を実現する。
価格もZLの2WD車なら145万7500円から。スライドドアやターボエンジン、豪華な電動装備を欲張らないことで、いまの軽乗用車としては手を伸ばしやすい価格を維持している。
一方で、安いだけのクルマではない。衝突被害軽減ブレーキのデュアルセンサーブレーキサポートIIや車線逸脱抑制機能、カラー表示の4.2インチマルチインフォメーションディスプレイを標準装備。プラットフォームには減衰接着剤を採用し、静粛性や操縦安定性にも手が入れられた。
ワゴンRの「普通」は、装備が古い、あるいは魅力が乏しいという意味ではない。必要な広さと安全性を備えつつ、余計な重さや複雑さを持ち込まないという、明確な設計思想なのである。
家族全員を乗せるならスライドドア車は確かに便利だ。しかし、毎日の移動に大げさな装備はいらないという人には、軽く、扱いやすく、価格も抑えたワゴンRのほうが合理的だ。スライドドア全盛のいまだからこそ、この「普通の軽」の価値が際立って見えるのである。
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