2026年10月29日、三菱自動車が新型パジェロの国内正式発表を行った。税込価格は619万3000円から795万800円、発売(納車開始)は12月17日を予定する。プラットフォームは高剛性のラダーフレームを守りつつ、前輪にダブルウィッシュボーン式独立懸架、後輪には新開発の5リンク式リジッドサスペンションを組み合わせ、「悪路快適性」を開発指標に掲げた。これに合わせて三菱の公式ニュースルームでは、歴代パジェロの足回りや骨格を手がけてきた技術者の証言をまとめた読み物「パジェロ物語-開発編」全3編が、2026年9月末から10月にかけて公開されている。新型のスペックだけを追う前に、まずはこの3編が伝える「パジェロらしさ」の中身を覗いてみたい。
文:ベストカー編集局長T、画像:三菱自動車
【画像ギャラリー】新型パジェロ登場で…今こそ読みたい!! 三菱公式!! 歴代開発者が守り抜いた「帰ってこられるクルマ」の哲学(3枚)画像ギャラリー前編|「壊れても帰れる壊れ方」という教え
参考記事① 性能だけではない――『パジェロ』が届けた新たなライフスタイル
三菱は長くライセンス生産の『ジープ』を手がけていたが、自由な改良ができないという制約があった。そこで自社オリジナルの本格四輪駆動車として生まれたのが初代『パジェロ』である。
公式連載の前編(2026年9月29日公開)によると、2代目の改良型から4代目まで開発にかかわってきた西岡芳樹氏は、先輩技術者からこう教わったという。「走れなくなる壊れ方ではなく、壊れても帰ってこられる壊れ方にしろ、ということです」。トランスファーが壊れるとしても、四輪駆動側に固着させて走行能力を残す、という具体的な設計判断の背景にこの教えがあったと紹介されている。
初代が前輪に独立懸架を採用しながらトーションバースプリングで悪路走破性を確保したこと、初代後期で後輪を3リンク式コイルサスペンションに改めロアアームを鍛造にしたこと、さらに電動格納ミラーを便利さのためではなく「オフロードで枝に引っ掛からないため」に採用したという逸話も、同じ発想の延長線上にあるものとして語られている。
2代目で実用化された世界初とされるスーパーセレクト4WDも、街中は後輪駆動に近い乗り味、高速道路や滑りやすい路面は四輪駆動の安定性、悪路では本格四駆として機能するという、使われ方に合わせて性格を変える技術だった。
中編|なぜラダーフレームを手放したのか
参考② 「どんな道でも、必ず帰ってこられる」——『パジェロ』を育てた技術者たちの開発思想
1999年登場の3代目は、ラダーフレームからモノコックにフレームを組み込んだ「ビルトインフレームモノコック」へ、足回りも四輪独立懸架へと大きく構造を変えた。公式連載の中編(10月6日公開)は、その引き金をダカールラリー参戦用の『パジェロエボリューション』での経験に求めている。
フレームを残したまま四輪独立懸架を機能させようとすると、フレームのねじれが邪魔をする。かといって補強すれば重量が増え、燃費や商品価値を損なう。剛性と軽量化、米国で問題となっていたSUVの横転事故を踏まえた低重心化、衝突時の変形を制御しやすい衝突安全性という一見バラバラの課題が、結果として同じひとつの構造にたどり着いたという。
西岡氏はこの判断をこう振り返っている。「大事なのは、何を採用するかじゃないんです。何を達成するかなんです」。
ダカールラリーは砂漠だけでなく川渡りや岩場、大きな砂丘まで含む過酷な舞台であり、そこで見つかった弱点を市販車に反映し、市販車の実車耐久試験で得た知見をラリーに返すという循環も、歴代を通じて続けられてきたと紹介されている。
後編|電子制御と「私たちのパジェロ」
参考記事③ 機械を磨き続けた、その先へ 4代目がたどり着いた『パジェロ』の完成形
3代目の骨格を土台に足回りをさらに磨いた4代目では、電子制御の活用が進む。公式連載の後編(10月13日公開)で、商品力評価を担当してきた布野洋氏は、アクティブスタビリティ&トラクションコントロール(ASTC)とリヤデフロックの両立について「面白いのは、デフロックよりも電子制御のトラクションコントロールの方が脱出性が高い場面もあることです」と語る。
「相性がよくない」とされてきた機械式の機構と電子制御は、対立するものではなく場面に応じて補い合う関係にあるというわけだ。
同じ後編では、海外の販売会社を訪れた際のエピソードも紹介されている。西岡氏によれば、現地の人々は他車にはない熱量で「私たちの『パジェロ』がこのカップホルダーで本当にいいのか」と、細部にまで真剣な意見を寄せてきたという。車名への愛着の強さと、新型がその名を受け継ぐ責任の重さが伝わるエピソードだ。
編集部が見る、新型を測るものさし
新型パジェロはラダーフレーム、前輪独立懸架、新開発の後輪5リンク式リジッドという、歴代とは異なる骨格を採用した。構造が変わったこと自体は、3代目のときにも起きている。公式連載が繰り返し語るのは、構造や装備の名称そのものではなく、「どんな道でも必ず帰ってこられるクルマであること」という目標に向けて、その時々で手段を選んできたという開発姿勢である。であれば新型を見るときも、ラダーフレームかモノコックか、機械式か電子制御かという構造の違いだけで優劣を決めるのではなく、実際にどう使われ、どんな場面で性能を発揮するのかという視点を持ちたい。
そういえばチーム三菱ラリーアートの増岡浩総監督は、新型パジェロのワールドプレミア会場で記者陣のインタビューに答えて、「ラダーフレームだから、だとかリジッドだから、というよりも、まずパジェロの名にふさわしい走行性能を実現するために必要なのは何か、で考えて採用していった」と語っていた。「パジェロらしさ」を考え抜いた三菱自動車開発陣が出した結論は、「必ず帰ってこられるクルマであること」なわけだ。
「悪路快適性」という今回の開発指標が、歴代が守ってきた目標とどうつながっているのかは、公式発表の説明だけでは測りきれない部分もあり、今後の公道試乗取材を含めて見ていきたいテーマである。早く乗ってみたい。できれば悪路で。
パジェロ物語-開発編は前編・中編・後編の順に読むと、技術が受け継がれてきた流れがつかみやすい。三菱自動車公式ニュースルームの原文リンクは本記事末尾に掲載している。あわせて、新型パジェロの価格やグレード構成を詳しくまとめたベストカーWebの新型解説記事もご覧いただきたい。
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